元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。◆ビデオの撮影現場で出会ったヤバイ人たち
以前「昼職で出会ったヤバイ人たち」という記事が好評だったため、皆さんの声にお応えして今回は撮影現場ver.をお届けしよう。昼も夜も常識外れのヤバイ奴は必ず現れるものの、悲しいかな特殊な業界には想像の斜め上をいく変わった人間が多くなりがち。撮影現場なんてまさにそのオンパレードで、私はたった2年半の間でも“その手の人間”に遭遇している。
記憶を掘り返すとなかなか色濃いキャラクターが勢ぞろいなので、つくづく変わった世界だなぁと改めて感じる。今回は紹介できる範囲での3名をピックアップした。
◆まさかの勧誘行為をする女優
かつて顔見知りだった女優も被害に遭った宗教勧誘。プライベートではなく撮影現場の待ち時間に勧誘してくる人がいるという噂は小耳に挟んでいたが、まさか自分が出会うとは……。
基本的に私は現場で人と絡むタイプではなく、楽屋が相部屋になっても女優同士でお喋りする機会はほとんどなかった。黙っていると“話しかけるなオーラ”が出ているらしいので、近づいてくる人もほぼゼロだったが、勧誘をすると評判(?)の女の子は“いけいけどんどん”な姿勢で私に声を掛けた。
前情報があるおかげでワクワクしながら話を聞くと、色んな情報がまぁ出るわ出るわ。彼女は家族ぐるみで某宗教へ入っており、彼氏も、自分のスポンサー数名も入会させることに成功したそうだ。そして「今度パーティーに来てみない?」と彼女は目を輝かせてじっとこちらを見つめてくる。
私がこの時少し驚いたのは、その子のやり方が想像していた手口と異なっていたこと。集まりに誘うのは宗教勧誘のよくある流れだけど、「パーティーに来させる→勧誘する→実は宗教でした!」というパターンが圧倒的に多い。
先に某宗教の名前を出し、身内を全部巻き込んでいると手の内をばらし、その上で誘う。自分の中の印象とかけ離れた手法を使うので、話を聞きながらうっかり感心する自分がいた。
でも入会するかと言われたら話は別。「集まりとかそういうの苦手だからごめんね」と返すと、思いのほか彼女はあっさりと引き下がった。たぶん数打ちゃ当たる戦法を取っているのだろうけど、どこでも同じことを繰り返しているのかと想像するだけで恐ろしさを感じてしまう。同時に、今まで誰からもクレームが入っていなさそうな部分が不思議である。その日の現場が終わるまで、ヒヤヒヤしたのは言うまでもない……。
◆自己顕示欲が強すぎる女優
自己顕示欲はどんな人間にも備わっており、あるとダメ、ないと良いというものではない。あまりに欲が強すぎると他人に迷惑を掛けたり、周囲から人が離れていったり、人間性を疑われるので程よくコントロールするのが大事だと言われている。
しかし、人前に出る商売をしていると常にチヤホヤされるせいか自己顕示欲の操作が難しくなりがちに。その結果自慢話が多くなり、加えて承認欲求まで強まって扱いづらい困ったちゃんが爆誕するのだ。

◆その男の正体は…
ただこの男性、どこからどう見てもホストである。最初はホスト風の男性かと思ったけど、彼女とメイクさんの会話を聞く限り、毎月300万円稼がないとならないだとか、しょっちゅう女絡みでモメるだとか、相手の酒癖が悪くてケガをしたとか、売掛がどうのこうのだとか、とにかくダークな話題が続く。もうこれは完全に“クロ”なのだ。
真実にツッコミを入れてはならないが、ちょっぴり複雑な事情を抱えていそうな彼女。心の片隅にある黒い感情が自己顕示欲やら何やらに繋がってしまうのかしら……と余計なお世話だが、色々考えてしまった。
周りも同じことを思ったのか、女優さんが席を外したとき、裏方のスタッフ陣も「あの子、なんか心配だね」と口にしていたほど。たぶん生まれながらの奇人変人ではないにしろ、“心配”という意味を含んだ“ヤバイ”ケースである。
◆大遅刻をかますマネージャーと女優
現場で遅刻はご法度なのだが、交通機関の乱れや渋滞で時間通りに到着できない時がある。
某企画ものの撮影で当日は女優が5名揃うはずだったのに、1人が電車遅延で遅刻。幸いにも共演ではないため、香盤(当日のスケジュール)をずらして撮ることに。しかし一向に来ず、ようやく到着したのは3人目の撮影が終盤に差し掛かる頃だった。
どうやら撮影現場の一駅前で足止めを喰らっていたそうで、担当マネージャーは彼女と共に電車が動き出すのをずっと待っていたらしい。その話を聞いた途端、現場には何とも言えない空気が流れ始める。
◆女優の遅刻で及ぼす影響は…
序盤でも言った通り「現場で遅刻はご法度」なのだ。しかも一駅分ならタクシーを呼べば解決する話。いくらタクシーが拾いづらい場所でも1時間待てば一台くらいは通るだろうし、SOSを出してプロダクションや現場の人間の車で迎えに来てもらうなど、策は色々と考えられたはずだ(ちなみに撮影現場は路線が一つしか通っていないけど、都心に超近いのである)。
見た感じ、新人マネージャーっぽい人だったのでどうしていいか分からなかったのかもしれないが、人を管理する側の行動としてはかなりマズイ。こういった事案のせいで事務所の印象も下がるため、“ヤバイマネージャー”が及ぼす悪影響は想像以上に大きいということで……。
これを全て読んで「なーんだ、そのレベルか」と思うかもしれないが、どの人も現場にいたらぶっちゃけ迷惑なのである。特に一番最後に関しては全体のスケジュールが狂う可能性が高く、時間に限りのある女優に迷惑が掛かり、それぞれの帰宅時間が遅れる+スタジオ代の延長費がかかるかもしれない……。つまり、こちら側の概念だけで言うなら“だいぶヤバイ”のだ。
あくまで書ける範囲で執筆をしているため「ヤバイ人たちレベル100」に関しては紹介できないのが悔しいところ。いつかどこかで、怒られない範囲で激ヤバトークを展開したいと心の片隅でひっそり考えていたり、いなかったりする。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―