(イラスト・天野JACK)
アイドルやメイド、魔女などの特定のキャラクターや世界観を再現した飲食店「コンセプトカフェ(コンカフェ)」が、繁華街を中心に爆発的に増えている。
「実態はキャバクラと同じようなもの。キャスト(従業員)の収入は、時給よりもお客からご馳走されたドリンクからのバック(歩合報酬)のほうが高額になる。だから、ドリンクをもらうために、それなりの “特別なサービス” を要求されるけどね」
あるコンカフェの関係者がこう語る。では、“特別なサービス” とはどのようなものなのか。東京・秋葉原の人気店「X」に在籍していたというR子さん(24)に聞いた。
「店のHPで見たコスチュームのかわいらしさに惹かれて、店長の面接を受けました。私は『メイドカフェ』と『コンカフェ』の区別がついておらず、説明を聞くだけのつもりだったのですが、『予備の制服があるから、このまま着替えて体験入店すれば』とすすめられたんです」
すでに21時をまわっていたものの、都内在住で終電まで時間があったことから、ふたつ返事で承諾したR子さんだが、着替えの制服を受け取った時点で激しく後悔した。
「HPの画像とは違って、布があるのは胸とミニスカートだけで、あとは透けるメッシュ生地。“見せパン” は穿かないよう言われました」
R子さんは、少し足を崩しただけで下着が見えてしまうコスチュームに戸惑いながら、店に入ることになった。
「カウンターに身を乗り出すように接客するので、胸元が大きくはだける状態。ブラジャーは、お客様からほぼ丸見え。さらに、前のめりの姿勢なので、別の席に座っているお客様からは、スカートの中が見える状態でした」
「オプション」と呼ばれるゲームがあって、キャストの胸の谷間にポッキーを挟んで客が口で取る、棒状のグミをキャストと客が両端から食べる、など接触をともなう過激なものばかりだったという。
「しかもその都度、お客様がゲーム代金をブラの中に差し込むルールなんです」(R子さん)
体験入店は、時給が通常より高く設定されており、当日払いで3万円を受け取ったR子さんは、想像とは違ったコンカフェの実態に拒否感を持ちながらも、高給の誘惑に負けて入店を決めたという。
さらに、副都心エリアのコンカフェ「Y」で働くK美さん(22)は、こんな体験をしたという。
「私がいた店にはジャグジーがあって、4万円以上のシャンパンを開けると利用できます。キャストはランジェリー風の衣装、お客様にはサーフパンツを貸しますが、下着をつけないので透けます。わざと見せつけてくるお客様もいて、こっちが嫌がっているのを楽しんでいました」
さらに、明らかに行きすぎた “特別サービス” が存在する。前出のR子さんが「X」で見た光景を明かした。
「高額なシャンパンを頼めば入れる『VIP』と呼ばれる特別室でのことです。バック込みで、VIPに1時間いればキャストは6万円くらいの手取りになるんです。
1時間制なので、運営からは時間ギリギリに追加のボトルをお客様にねだるように指導されたり、下着の中に手を入れさせるくらいのサービスをするよう、暗に指示がありました」
ここで、R子さんは “対面座位” で接客するキャストを見たことがあるという。
「抱っこちゃんスタイルで、キャストの背中しか見えなかったのですが、『絶対挿入しているよ!?』と噂になっていました。さすがに運営が指示したわけではないんですが……」
コンカフェには「バグる」という業界用語があるという。「Y」の運営スタッフだったT恵さん(26)が解説する。
「シャンパンなどの高額のお酒を注文した客が、キャストとキスしたり、コスチュームの中をさわってきたら、『(高額を遣って)バグっちゃった』みたいな言い方をするんです。店側はハプニングでそうなった、みたいな言い訳を用意しているんですよ」
新宿歌舞伎町の店舗「Z」に在籍していたH香さん(22)は、とんでもない “バグ” を目撃したという。
「イベントデーの午前2時過ぎに、オーナーが出資者らしき数人と来店したんです。閉店するよう指示があって、さらに錠剤を飲むように言われました。私は怖くなって、朝まで更衣室に隠れていました。別のキャストが有名なセックスドラッグだと教えてくれました。オーナーは薬物で逮捕歴があるんですよ……」
水商売では「風紀」と呼ばれて禁止されているキャストとスタッフとの恋愛も、野放しだ。H香さんが続ける。
「コンカフェではむしろ、キャストを “色恋” で管理するのが普通みたいな感じです。系列店に男性が接客する『メンズコンカフェ』があるのですが、そこで多額の売掛金を作らせて、キャストに連続勤務をさせたり、バック目当てに過剰な接客をさせることが、当たり前にあります」
さらに、ドツボにはまったキャストの転落は続く。
「『X』の系列にはリフレ店もあり、そっちにまわされたキャストもいますね。リフレとは女性が個室で添い寝やマッサージなどのサービスをおこなう店ですが、2022年に摘発された秋葉原の店のように、売春がおこなわれていたこともあるんです」(前出・R子さん)
運営スタッフだった前出のT恵さんが、自嘲気味にこう語った。
「『カフェ』として求人するので、メイドカフェと混同していたり、接客があってもライトな店だと勘違いして応募してきます。それでキャストになったコも、普通のカフェではあり得ない報酬がもらえると、やはり感覚がバグってくるんです。
ひと月ほどで、お客の膝の上に乗るのも、ブラをズラして乳首を見せるのも、バックのためならなんでもするようになるんです」
(イラスト・天野JACK)
本誌記者が冒頭に登場した「X」を訪れたのは、11月某日のこと。過激サービスの実態を取材するためだった。雑居ビルの上層階にある「X」は開店直後のためか、店内はまだ閑散としている。
「今日は~、ショット無料デーで~す。テキーラやコカレロ(コカの葉などのリキュール)も無料なんですよ」
接客してくれたのは、20代前半のMちゃん。それで、40分3000円ならリーズナブルだ。Mちゃんはロリ系ファッションで、胸元の谷間がはっきり見える。
「飲ませ合いっこしよ!」
Mちゃんの提案で、水鉄砲の中にコカレロを入れて、Mちゃんの口に発射! その後、Mちゃんは冷蔵庫からいちごミルクのようなお酒を持ってきて、断わりもせずに飲み始めた。
「ショット無料デーだもんねー(笑)」
と、Mちゃん。ならいいか。チップを胸の谷間に……。
「ゲームしようよー」
もう一人、Sちゃんが加わり、3人でボードゲームをすることに。サイコロを振って、「みんなで乾杯!」「セクシーな仕草で飲む」など、けっこうお酒が進む。
Mちゃんは酔いが回り、ミニボトルを「あ~、開けちゃった~」と勝手に開封し、飲み続ける。
「もう飲まなくてもいいよ」と声をかけるが、Mちゃんのピッチは変わらない。もう2時間か、少し延長してしまったな。お会計をお願いします!
「7万9400円になります」
男性店員が持参した伝票には、目を疑う金額が。お、おかしいじゃないですか! 聞くと、女のコのドリンクは1杯1000円~2500円。無料じゃなかったの?
Mちゃんは「説明が甘かったかもしれないです」と反省顔だったが、男性店員に「女性のショットには料金がかかる」と小さい文字で書かれたメニュー表を見せられ、納得できないままその金額を払った。
後日、「X」にR子さんらが証言した過激なサービスがあったのかについて問い合わせると、「そういう事実はありません。初耳ですね」と言い、本誌記者への請求金額が高額になったことに対しては、「『お客さんのショットが無料』だという意味。メニュー表のとおりです」と悪びれる様子はなかった。
嬢たちの “バグ” は今夜も続く。