2023年12月6日に、大麻取締法改正案が国会(参議院本会議)で可決され、成立する運びとなりました。
大麻取締法は、「昭和二十三年法律第百二十四号」という別名があるように、昭和23年(1948年)に生まれた法律ですので、実に75年ぶりに内容が変更されることになります。
大麻に関しては、違法な栽培、譲り受け、譲り渡し、所持などの犯罪が増加の一途をたどっているうえ、最近では「大麻グミ」を食べた一般の人が救急搬送される事件が続発し、不安を感じている方も多いと思います。今回の法改正で何が変わるのか、要点を分かりやすく解説します。
2023年の大麻取締法改正で大きく変わる2つのこと改正の大きな柱は2つあります。 1. 大麻を医療目的で扱うことが可能になる。2. 大麻をみだりに使用することを禁じ、罰則を設けた。
これを見て、「1」では大麻を許し、「2」では大麻を禁じ、逆のことを言っているようでよく理解できないと感じる方も多いかもしれません。しかし、内容は非常にシンプルです。
海外の一部の国や地域では、大麻の使用が合法化されているところがあり、たとえばアメリカの特定の州では、まず最初に医療目的の大麻使用が認められ、その後、嗜好用大麻の使用も一定ルールの上で追認されました。
そのため、今回の大麻取締法改正で医療目的の利用が認められたことで、今後は日本でも「合法化」が進むだろうと解釈する向きもあるようですが、これは大きな間違いです。
この法改正の大きなポイントは、「必要な範囲で大麻を有効利用することを認めるために、不正な使用を厳に禁じるようにした」という点です。
日本としては、「医療用の大麻使用は認めたとしても、嗜好用の大麻は絶対に認めない」という立場を明確にしたということになります。筆者は医薬の専門家ですので、これまであいまいだった部分がすっきりした、良い法改正だと評価しています。
連動して改正が決まった「麻薬及び向精神薬取締法」ちなみに、今回改正されたのは「大麻取締法」だけではありません。同時に別の法律「麻薬及び向精神薬取締法」も連動して改正されることになりました。大麻から抽出された成分を「麻薬」と位置づけるためです。
「麻薬」と聞くと「違法薬物」とイメージされる方が多いと思いますが、それは大きな誤解です。本来の麻薬は、きちんと許可された範囲で医療目的での使用が認められるものです。
現行の大麻取締法では大麻の「施用」を認めていませんでしたが、今回の改正で大麻成分を「麻薬」と位置付けることによって、きちんとした手続きを経て利用が認められれば、医療に使える道を開いたのです。
「法改正で大麻解禁」は誤解! 今後は現物が見つからなくても処罰対象にその一方で、法改正により「大麻が解禁された」などと誤解され、大麻事犯が増えてしまってはいけません。そうした不正な使用は、せっかく大麻を有効活用しようという動きを妨げますから、厳しく禁じる必要があります。
いままでの法律では、使用のみ(所持や譲り受けなどの確認がとれないケース)では罪に問うことができませんでしたが、今回の改正によって、たとえば現物が見つからなくても血液検査などで大麻成分が認められれば「使用した」として処罰(7年以下の懲役)の対象となります。
多くの方が今回の法改正の意味を正しく理解し、医薬の発展を妨げることがないように祈ります。