開幕まで500日をきった大阪万博。当初の計画から大幅にふくれ上がった会場建設費に。批判の声もあがっています。現場を取材すると、軟弱地盤の問題も見えてきました。さらに工事の作業員からは、延期を求める声が出ています。
【写真を見る】間に合う?大阪万博「もう日を延ばす一択」「お金増やすとかそんなんじゃない」建設現場から不安の声【報道特集】「大阪市民にとっては悲劇」建設費は当初計画の2倍近くに…村瀬健介キャスター「私たちの右手の方に木造リングの建設現場が見えてきました。今すでに一部分が立ち上がっていますけれども、この木造建築がいかに巨大なものか、現場に来るとよくわかります」

大阪・夢洲。関西万博のシンボルとなる、木製の「大屋根リング」が建設中だ。会場の中心部を囲う木造の巨大屋根は1周2キロに及び、完成すれば世界最大級の木造建築となる。建設費用はおよそ350億円だ。藤永延代さん。大阪万博の建設費高騰などを追及している市民団体の代表だ。村瀬健介キャスター「(費用は)国と経済界と地元で分けるとはいえ、大阪市民としては?」おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「大阪市民は大阪府民でしょ。国民でしょ。3つの負担をしていくわけですから、大阪市民にとっては悲劇ですよね。こんなお金あるんだったら、今すぐしてほしいことがいっぱいある」万博の誘致段階では、木製リングを建設する計画はなかった。その後、2020年になって会場デザインプロデューサーの建築家・藤本壮介氏が提案。この提案を万博協会が受け入れ、建設が決まった。万博協会は経済団体や大阪府、大阪市、民間企業などで構成されている公益社団法人だ。この木製リングを作ることや建設資材、人件費の高騰などで、2018年の当初の計画では1250億円だった会場建設費が、2020年、1850億円に引き上がった。吉村洋文 大阪府知事(2020年12月)「何度も増加するとなると府民市民も『どうなの?』となるので、これで増加の話は最後と」ところが、これで最後にはならなかった。今年の秋にはさらに500億円も増え、当初の計画の2倍近く、2350億円にまで膨れ上がったのだ。吉村洋文 大阪府知事(2023年9月)「これ税ですから。どんどん増やすつもりは無いですけれども、ここが(建設費増加の)最後になると思います」さらに、会場建設費以外にも金がかかることが11月になって明らかに…会場建設費2350億円とは別に、政府が出展するパビリオン「日本館」などで約837億円の国費がかかるというのだ。会場・夢洲は「一般的な埋め立て地と違う」「対策しなければ建物は傾く」かさむ“追加費用”そもそも開催地は、なぜ夢洲になったのか。当初、万博の候補地に夢洲は上がっておらず、別の6つの場所で検討が進められていた。そこに2016年5月、当時の松井大阪府知事が夢洲を万博の候補地とする考えを示した。この夢洲には、カジノを含む統合型リゾート施設=IRの計画がすでにあったが、万博はその隣で開催するという。松井一郎 大阪府知事(2016年5月)「やれる場所があるから、更地があるわけです。(万博候補地の)一つのプランとして夢洲」大阪府の提案を受け、国がさらに検討を行い、2017年、政府は夢洲を会場とした万博誘致を決定した。夢洲への道路や鉄道、上下水道など、インフラ整備にも多くの費用がかかることになる。藤永さんが大阪市に情報公開請求を行い、入手した資料によると…おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「(1129億円…)インフラ整備の費用として、2350億円とは別ですよ」インフラ整備のための費用として、1129億円。そのうち国が150億円、大阪府が10億円、大阪市が806億円負担するとされている。この費用について、大阪市の担当者は…大阪市の担当者「万博の開催に合わせて整備しているが、あくまでも鉄道や道路などは将来のまちづくりに必要な整備」Q.万博に関わる費用ではないんでしょうか?大阪市の担当者「万博の関連にかかる費用という側面もある」このインフラ整備の費用も、当初の見込みより膨れ上がっている。2021年の試算では974億円だったが、現時点で1129億円に。中でも、夢洲に地下鉄を伸ばすための整備費は96億円の追加費用が必要となった。費用がかさんでいる理由の一つが、地盤の問題だ。これは、夢洲を所有する大阪市が万博協会に土地を貸し出すという契約書。「将来、地盤沈下の発生が予想されることを承知のうえ本契約を締結」と明記されている。この軟弱な地盤を問題視する藤永さんは、以前から夢洲を何度も訪れ、様子を見てきた。おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「こんなんでしたね。明らかにごみが入ってたって」村瀬健介キャスター「これは確かにごみですね」おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「ごみでしょ」夢洲は1977年から埋立事業が始まった人工島だ。大阪市内で発生した廃棄物や、海底を掘り起こした土砂などで埋め立てられている。藤永さんが大阪市から入手した資料によると、万博会場となる夢洲2区の地盤は測定開始後34年間で4.8メートル沈んでいることがわかる。おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「軟弱だということ。上にごみ置いたぐらいで沈む」元々、大阪湾の海底地盤は柔らかく地盤沈下を起こしやすいが、夢洲には特有の問題があると地盤工学の専門家は話す。芝浦工業大学(地盤工学) 稲積真哉教授「夢洲の場合は、そもそも人工島を作るっていう概念ではなくて、あそこに廃棄物の処分場をつくるという概念ですので、一般的な埋立地と夢洲の埋立地は、そもそも大きな違いがある。地盤が柔らかいのと同時に不均質ですので、柔らかさがまた違う。何も対策をしなければ建物は傾く」大阪市は地盤対策を進めているという。さらに万博協会は取材に対し、地盤沈下しないような基礎工法を採用していて「地盤沈下が加速することはない」と答えた。また、木製リングが水上に張り出した部分には、長さ50メートルの鋼管などを地中に埋め込み、リングを支えるという。芝浦工業大学(地盤工学) 稲積真哉教授「地盤として万博に耐えうる、そういった整備は必要不可欠、最低限」工事間に合う?「もうデッドラインは過ぎている」工事の遅れについても懸念されている。建設業界からは厳しい見方が示された。日本建設業連合会 宮本洋一会長「一般論で言えば、もうデッドラインは過ぎていると思ってもいいくらい」予定地には木製リングの一部が建ち始めているものの、すでに着工しているパビリオンは一部のみで、まだ手付かずの更地が多いことがうかがえる。特に独自のデザインで建てる海外パビリオンはまだ全く着工していない。資材の高騰などで建設業者との契約が難航しているという。工期が限られている中で、来年度からは建設業界の時間外労働が法律で制限され、月に45時間を超える残業が原則できなくなる。そんな中、自民党の部会では「非常事態であるから、残業時間規制についても必要であれば柔軟に対応できないか考えるべき」と規制の対象外にすることも考慮すべきとの声が出たという。関西の建設業界の労働組合は懸念を示す声明文を公表した。全京都建築労働組合 酒井仁巳 副執行委員長「労働安全の問題はすごく心配、どうしても余裕がなくなりますから。東京五輪で過労自死など重大災害で計4人の方が亡くなっている。そういう悲劇を繰り返してはいけない」建設業界は悲劇を繰り返さないという思いで働き方改革を進めてきた。現場の努力とは逆行するような政治家の意見にこう憤る。全国建設労働組合総連合 平山幸雄 副中央執行委員長「『怪我と弁当は手前持ち』という言葉に代表されるように、全て自己責任でやってきたからこそ、本当に若い人がいない事態になってきた。やはり危機感がある」全京都建築労働組合 酒井仁巳 副執行委員長「建設労働者の命と健康を第一にしてもらわないと困る。それが危うくなる形で進められるのであれば、もう中止すべき、もしくは延期」実際、万博の工事に携わる人たちは何を思うのか。工事を請け負う事業主と今現場で働く作業員に話を聞くことができた。現役作業員「一番大きい現場だと思っている。それに入れるのはかなり嬉しい」その一方で…現役作業員「(完成の)イメージ図を見せてもらって、こんな感じですって言って。あと500日、1年半で本当に建つのか?今までホテルなどの建築にも入ったが、それでも2年半かかった」Q.規模はホテルの方が大きい?現役作業員「万博、圧倒的に。土日祝やらないと無理だろうなと」時間外労働が容認される可能性について聞いてみると。現役作業員「嫌だと思う、やっぱり残業は。特に家庭のある人、僕も嫌。もっと人を入れるべきだと思う、お金を出して」一方で工事を請け負う事業主は、仮に工事の予算が上乗せされても作業員の確保につながる見込みは低いと考えている。事業主(2次請け)「元請け・1次・2次・3次・4次といっぱいある中で、そこまでお金が絶対回らない。予算を上げたところで結局、労働者にお金が還元されないという別問題も出て、人はまず集まらないと思う」万博の工事で入る賃金「労務単価」は“他の現場の平均より低いくらい”だという。事業主(2次請け)「もう、日を延ばす。一択。お金を増やすとか単価を上げるとか、そんなんじゃなくて。そんなことしてもメリットない作業員が多いと思う」延期を求める声について万博協会は取材に対し、「日本としてしっかりと約束を果たし、大阪・関西万博を誘致して良かった、やってよかったといえるようにしたい」と回答している。万博成功のためには何が必要か。140億黒字「愛知万博」は予算超過を見越して・・・2005年に開催された愛知万博。想定を超える2200万人以上が来場し、およそ140億円の黒字をもたらした。愛知万博の元事務総長・中村利雄氏。愛知万博も予算の不足や会場の変更など、さまざまな問題を抱えていたという。愛知万博 元事務総長 中村利雄氏「(誘致決定から)5年6年のスパンがあるので、そういうリスクはある。それは自分たちの努力と、皆さんのご理解という中でしのぐしかない」会場建設費が予算を超えることを見越して、企業から協賛を集め、まかなった。海外パビリオンは外装や内装の工事費用のみ各国が負担。今回の大阪とは異なり、基本となる建物は日本が全てを用意したが、組み立てが簡単な物を使いコストを抑えた。 何よりも優先したのが「環境重視」だ。批判の声に耳を傾け、自然をなるべく破壊しないよう心掛けた。17種類に及ぶごみの分別をするなど、環境に優しい会場が評価された。愛知万博 元事務総長 中村利雄氏「大阪万博も自分たちのテーマや意義、それが基本なのでしっかり説明しないといけない。全体を俯瞰して、何がタイムスケジュール上一番重要か、進め方の構造をきちんと把握した上で、優先順位をつけてやることが重要」
村瀬健介キャスター「私たちの右手の方に木造リングの建設現場が見えてきました。今すでに一部分が立ち上がっていますけれども、この木造建築がいかに巨大なものか、現場に来るとよくわかります」
大阪・夢洲。関西万博のシンボルとなる、木製の「大屋根リング」が建設中だ。
会場の中心部を囲う木造の巨大屋根は1周2キロに及び、完成すれば世界最大級の木造建築となる。建設費用はおよそ350億円だ。
藤永延代さん。大阪万博の建設費高騰などを追及している市民団体の代表だ。
村瀬健介キャスター「(費用は)国と経済界と地元で分けるとはいえ、大阪市民としては?」
おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「大阪市民は大阪府民でしょ。国民でしょ。3つの負担をしていくわけですから、大阪市民にとっては悲劇ですよね。こんなお金あるんだったら、今すぐしてほしいことがいっぱいある」
万博の誘致段階では、木製リングを建設する計画はなかった。その後、2020年になって会場デザインプロデューサーの建築家・藤本壮介氏が提案。
この提案を万博協会が受け入れ、建設が決まった。万博協会は経済団体や大阪府、大阪市、民間企業などで構成されている公益社団法人だ。
この木製リングを作ることや建設資材、人件費の高騰などで、2018年の当初の計画では1250億円だった会場建設費が、2020年、1850億円に引き上がった。
吉村洋文 大阪府知事(2020年12月)「何度も増加するとなると府民市民も『どうなの?』となるので、これで増加の話は最後と」
ところが、これで最後にはならなかった。今年の秋にはさらに500億円も増え、当初の計画の2倍近く、2350億円にまで膨れ上がったのだ。
吉村洋文 大阪府知事(2023年9月)「これ税ですから。どんどん増やすつもりは無いですけれども、ここが(建設費増加の)最後になると思います」
さらに、会場建設費以外にも金がかかることが11月になって明らかに…
会場建設費2350億円とは別に、政府が出展するパビリオン「日本館」などで約837億円の国費がかかるというのだ。
そもそも開催地は、なぜ夢洲になったのか。
当初、万博の候補地に夢洲は上がっておらず、別の6つの場所で検討が進められていた。
そこに2016年5月、当時の松井大阪府知事が夢洲を万博の候補地とする考えを示した。
この夢洲には、カジノを含む統合型リゾート施設=IRの計画がすでにあったが、万博はその隣で開催するという。
松井一郎 大阪府知事(2016年5月)「やれる場所があるから、更地があるわけです。(万博候補地の)一つのプランとして夢洲」
大阪府の提案を受け、国がさらに検討を行い、2017年、政府は夢洲を会場とした万博誘致を決定した。
夢洲への道路や鉄道、上下水道など、インフラ整備にも多くの費用がかかることになる。
藤永さんが大阪市に情報公開請求を行い、入手した資料によると…
おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「(1129億円…)インフラ整備の費用として、2350億円とは別ですよ」
インフラ整備のための費用として、1129億円。そのうち国が150億円、大阪府が10億円、大阪市が806億円負担するとされている。
この費用について、大阪市の担当者は…
大阪市の担当者「万博の開催に合わせて整備しているが、あくまでも鉄道や道路などは将来のまちづくりに必要な整備」
Q.万博に関わる費用ではないんでしょうか?
大阪市の担当者「万博の関連にかかる費用という側面もある」
このインフラ整備の費用も、当初の見込みより膨れ上がっている。
2021年の試算では974億円だったが、現時点で1129億円に。中でも、夢洲に地下鉄を伸ばすための整備費は96億円の追加費用が必要となった。
費用がかさんでいる理由の一つが、地盤の問題だ。
これは、夢洲を所有する大阪市が万博協会に土地を貸し出すという契約書。「将来、地盤沈下の発生が予想されることを承知のうえ本契約を締結」と明記されている。
この軟弱な地盤を問題視する藤永さんは、以前から夢洲を何度も訪れ、様子を見てきた。
おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「こんなんでしたね。明らかにごみが入ってたって」
村瀬健介キャスター「これは確かにごみですね」
おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「ごみでしょ」
夢洲は1977年から埋立事業が始まった人工島だ。大阪市内で発生した廃棄物や、海底を掘り起こした土砂などで埋め立てられている。
藤永さんが大阪市から入手した資料によると、万博会場となる夢洲2区の地盤は測定開始後34年間で4.8メートル沈んでいることがわかる。
おおさか市民ネットワーク 藤永延代代表「軟弱だということ。上にごみ置いたぐらいで沈む」
元々、大阪湾の海底地盤は柔らかく地盤沈下を起こしやすいが、夢洲には特有の問題があると地盤工学の専門家は話す。
芝浦工業大学(地盤工学) 稲積真哉教授「夢洲の場合は、そもそも人工島を作るっていう概念ではなくて、あそこに廃棄物の処分場をつくるという概念ですので、一般的な埋立地と夢洲の埋立地は、そもそも大きな違いがある。地盤が柔らかいのと同時に不均質ですので、柔らかさがまた違う。何も対策をしなければ建物は傾く」
大阪市は地盤対策を進めているという。
さらに万博協会は取材に対し、地盤沈下しないような基礎工法を採用していて「地盤沈下が加速することはない」と答えた。
また、木製リングが水上に張り出した部分には、長さ50メートルの鋼管などを地中に埋め込み、リングを支えるという。
芝浦工業大学(地盤工学) 稲積真哉教授「地盤として万博に耐えうる、そういった整備は必要不可欠、最低限」
工事の遅れについても懸念されている。建設業界からは厳しい見方が示された。
日本建設業連合会 宮本洋一会長「一般論で言えば、もうデッドラインは過ぎていると思ってもいいくらい」
予定地には木製リングの一部が建ち始めているものの、すでに着工しているパビリオンは一部のみで、まだ手付かずの更地が多いことがうかがえる。特に独自のデザインで建てる海外パビリオンはまだ全く着工していない。資材の高騰などで建設業者との契約が難航しているという。
工期が限られている中で、来年度からは建設業界の時間外労働が法律で制限され、月に45時間を超える残業が原則できなくなる。
そんな中、自民党の部会では「非常事態であるから、残業時間規制についても必要であれば柔軟に対応できないか考えるべき」と規制の対象外にすることも考慮すべきとの声が出たという。
関西の建設業界の労働組合は懸念を示す声明文を公表した。
全京都建築労働組合 酒井仁巳 副執行委員長「労働安全の問題はすごく心配、どうしても余裕がなくなりますから。東京五輪で過労自死など重大災害で計4人の方が亡くなっている。そういう悲劇を繰り返してはいけない」
建設業界は悲劇を繰り返さないという思いで働き方改革を進めてきた。現場の努力とは逆行するような政治家の意見にこう憤る。
全国建設労働組合総連合 平山幸雄 副中央執行委員長「『怪我と弁当は手前持ち』という言葉に代表されるように、全て自己責任でやってきたからこそ、本当に若い人がいない事態になってきた。やはり危機感がある」
全京都建築労働組合 酒井仁巳 副執行委員長「建設労働者の命と健康を第一にしてもらわないと困る。それが危うくなる形で進められるのであれば、もう中止すべき、もしくは延期」
実際、万博の工事に携わる人たちは何を思うのか。工事を請け負う事業主と今現場で働く作業員に話を聞くことができた。
現役作業員「一番大きい現場だと思っている。それに入れるのはかなり嬉しい」
その一方で…
現役作業員「(完成の)イメージ図を見せてもらって、こんな感じですって言って。あと500日、1年半で本当に建つのか?今までホテルなどの建築にも入ったが、それでも2年半かかった」
Q.規模はホテルの方が大きい?
現役作業員「万博、圧倒的に。土日祝やらないと無理だろうなと」
時間外労働が容認される可能性について聞いてみると。
現役作業員「嫌だと思う、やっぱり残業は。特に家庭のある人、僕も嫌。もっと人を入れるべきだと思う、お金を出して」
一方で工事を請け負う事業主は、仮に工事の予算が上乗せされても作業員の確保につながる見込みは低いと考えている。
事業主(2次請け)「元請け・1次・2次・3次・4次といっぱいある中で、そこまでお金が絶対回らない。予算を上げたところで結局、労働者にお金が還元されないという別問題も出て、人はまず集まらないと思う」
万博の工事で入る賃金「労務単価」は“他の現場の平均より低いくらい”だという。
事業主(2次請け)「もう、日を延ばす。一択。お金を増やすとか単価を上げるとか、そんなんじゃなくて。そんなことしてもメリットない作業員が多いと思う」
延期を求める声について万博協会は取材に対し、「日本としてしっかりと約束を果たし、大阪・関西万博を誘致して良かった、やってよかったといえるようにしたい」と回答している。
万博成功のためには何が必要か。
2005年に開催された愛知万博。想定を超える2200万人以上が来場し、およそ140億円の黒字をもたらした。
愛知万博の元事務総長・中村利雄氏。愛知万博も予算の不足や会場の変更など、さまざまな問題を抱えていたという。
愛知万博 元事務総長 中村利雄氏「(誘致決定から)5年6年のスパンがあるので、そういうリスクはある。それは自分たちの努力と、皆さんのご理解という中でしのぐしかない」
会場建設費が予算を超えることを見越して、企業から協賛を集め、まかなった。
海外パビリオンは外装や内装の工事費用のみ各国が負担。今回の大阪とは異なり、基本となる建物は日本が全てを用意したが、組み立てが簡単な物を使いコストを抑えた。 何よりも優先したのが「環境重視」だ。批判の声に耳を傾け、自然をなるべく破壊しないよう心掛けた。17種類に及ぶごみの分別をするなど、環境に優しい会場が評価された。
愛知万博 元事務総長 中村利雄氏「大阪万博も自分たちのテーマや意義、それが基本なのでしっかり説明しないといけない。全体を俯瞰して、何がタイムスケジュール上一番重要か、進め方の構造をきちんと把握した上で、優先順位をつけてやることが重要」