臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、政治資金パーティー収入を裏金化していた疑惑について、安倍派所属議員たちの取材への反応からみる本音について。
【写真】辞任表明後の松野官房長官。頭を下げる * * * 政治資金パーティー券問題をめぐるキックバック(環流)による裏金化の疑いで、次々と名前があがる安部派の議員たち。中でも批判が集中したのは谷川弥一衆院議員と松野博一官房長官(14日に辞任)の2人だ。

長崎三区選出の谷川議員に持ち上がったのは、4000万円を超える裏金疑惑だ。12月10日、長崎市内で報道陣の取材に応じたのだが、その態度は横柄で不遜。用意していた原稿を読み上げると、記者たちがいくら質問しても「いま言った通りです」の一点張りという傲慢さ。眉をひそめ、顔をしかめて声を荒らげ、それでも突っ込んでいく記者に対し放った言葉は「なにを言ってもその通りってことです。頭悪いね。言ってるじゃないの」。渦中にありながら、この態度が取れてしまうとは。あなたの方がよほど頭が悪いだろうという声もネット上ではあがった。 谷川氏が取材に応じた理由は、”人に、長崎に迷惑を掛けたくない”というもの。すでに十分すぎるほど迷惑をかけていると思うのだが、裏金疑惑という問題を起こしたことへの罪悪感などは一切感じられず。単純に記者たちに「空港に来てほしくない」ということのようだ。地元に帰る谷川氏を目掛けて記者たちが空港に集まり、観光客に迷惑をかけたら「死んでも死にきれない」というが、これだけの騒ぎになっているのに地元の有権者に対する謝罪の言葉はない。 それでも食い下がる記者に、「どんな気持ちでここに来ているのかわからないでしょう」と顔を紅潮させ、「立場があるんだ」とまるで自分が被害者のような言い分へと変わっていく。建設会社を立ち上げ地元に貢献してきたのだろうが、まともな返答すらしない者が議員でいる方が長崎にとって迷惑ではないかと思わせた。傲慢な態度は、自分は偉いと思い込んでいるようでもあり、力によって人間関係や社会的ヒエラルキーをコントロールしようとし、分不相応に過剰なプライドを感じさせる。根底にあるのは「パワー動機」だろう。 パワー動機は地位や能力で他の人より優れていたいという欲求で、権力や影響力を行使して他者をコントロールしたいという動機だ。議員という職業であれば、経歴が長くなればなるほどこの動機が強いと想像できる。7回当選という長い議員活動の中、尊敬される人柄と実績で人の上に立つというより、乱暴な物言いや威圧によって影響力を誇示するという対応を見せた谷川氏。有権者や記者たちを自分より下に見ているのだろう。 その感覚は松野博一官房長官も同じだったのではないだろうか。12月7日の記者会見では、午前と午後合わせて19回もこの件について問われたが、「政府の立場としてお答えは差し控える」と答えたのみ。繰り返し追及されているうちにイライラしたのか、同じ答弁を繰り返しながらどんどん口先が尖っていった。 あまりの対応にさすがの岸田文雄首相も松野氏を更迭する方向と報じられたが、翌日の記者会見でも松野氏の態度は変わらなかった。用意された書面を棒読みし、質問する記者の顔すら見ない。都合のよい質問なのか、聞かれたくない質問なのか、記者たちの方を見る時間で計ることができるのが松野氏だが、今回はほぼ視線を書面に落としたまま。何を問われても”政府として差し控える”を繰り返すのみだった。それでいて出処進退を問われると、「与えられた職責を全うしていきたい」と平然と答えていたのは何だったのか、14日には「国政に遅滞を生じさせないよう」と辞表を提出した。 安部派の中枢を担う前出の松野官房長官、世耕弘成参院幹事長、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、高木毅国会対策委員長の5人衆は「捜査中」「精査中」と言い訳し、名前があがった議員たちは「しかるべき時に」「いつかは説明責任を果たす」という聞くに堪えないコメントを連発した。5人衆は全員、役職への辞表を14日に提出したが、すでに20名以上の名前があがる裏金疑惑。国会が閉会し、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した後、問題となった議員たちがこの疑惑にどう決着をつけるのか見守りたい。
* * * 政治資金パーティー券問題をめぐるキックバック(環流)による裏金化の疑いで、次々と名前があがる安部派の議員たち。中でも批判が集中したのは谷川弥一衆院議員と松野博一官房長官(14日に辞任)の2人だ。
長崎三区選出の谷川議員に持ち上がったのは、4000万円を超える裏金疑惑だ。12月10日、長崎市内で報道陣の取材に応じたのだが、その態度は横柄で不遜。用意していた原稿を読み上げると、記者たちがいくら質問しても「いま言った通りです」の一点張りという傲慢さ。眉をひそめ、顔をしかめて声を荒らげ、それでも突っ込んでいく記者に対し放った言葉は「なにを言ってもその通りってことです。頭悪いね。言ってるじゃないの」。渦中にありながら、この態度が取れてしまうとは。あなたの方がよほど頭が悪いだろうという声もネット上ではあがった。
谷川氏が取材に応じた理由は、”人に、長崎に迷惑を掛けたくない”というもの。すでに十分すぎるほど迷惑をかけていると思うのだが、裏金疑惑という問題を起こしたことへの罪悪感などは一切感じられず。単純に記者たちに「空港に来てほしくない」ということのようだ。地元に帰る谷川氏を目掛けて記者たちが空港に集まり、観光客に迷惑をかけたら「死んでも死にきれない」というが、これだけの騒ぎになっているのに地元の有権者に対する謝罪の言葉はない。
それでも食い下がる記者に、「どんな気持ちでここに来ているのかわからないでしょう」と顔を紅潮させ、「立場があるんだ」とまるで自分が被害者のような言い分へと変わっていく。建設会社を立ち上げ地元に貢献してきたのだろうが、まともな返答すらしない者が議員でいる方が長崎にとって迷惑ではないかと思わせた。傲慢な態度は、自分は偉いと思い込んでいるようでもあり、力によって人間関係や社会的ヒエラルキーをコントロールしようとし、分不相応に過剰なプライドを感じさせる。根底にあるのは「パワー動機」だろう。
パワー動機は地位や能力で他の人より優れていたいという欲求で、権力や影響力を行使して他者をコントロールしたいという動機だ。議員という職業であれば、経歴が長くなればなるほどこの動機が強いと想像できる。7回当選という長い議員活動の中、尊敬される人柄と実績で人の上に立つというより、乱暴な物言いや威圧によって影響力を誇示するという対応を見せた谷川氏。有権者や記者たちを自分より下に見ているのだろう。
その感覚は松野博一官房長官も同じだったのではないだろうか。12月7日の記者会見では、午前と午後合わせて19回もこの件について問われたが、「政府の立場としてお答えは差し控える」と答えたのみ。繰り返し追及されているうちにイライラしたのか、同じ答弁を繰り返しながらどんどん口先が尖っていった。
あまりの対応にさすがの岸田文雄首相も松野氏を更迭する方向と報じられたが、翌日の記者会見でも松野氏の態度は変わらなかった。用意された書面を棒読みし、質問する記者の顔すら見ない。都合のよい質問なのか、聞かれたくない質問なのか、記者たちの方を見る時間で計ることができるのが松野氏だが、今回はほぼ視線を書面に落としたまま。何を問われても”政府として差し控える”を繰り返すのみだった。それでいて出処進退を問われると、「与えられた職責を全うしていきたい」と平然と答えていたのは何だったのか、14日には「国政に遅滞を生じさせないよう」と辞表を提出した。
安部派の中枢を担う前出の松野官房長官、世耕弘成参院幹事長、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、高木毅国会対策委員長の5人衆は「捜査中」「精査中」と言い訳し、名前があがった議員たちは「しかるべき時に」「いつかは説明責任を果たす」という聞くに堪えないコメントを連発した。5人衆は全員、役職への辞表を14日に提出したが、すでに20名以上の名前があがる裏金疑惑。国会が閉会し、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した後、問題となった議員たちがこの疑惑にどう決着をつけるのか見守りたい。