こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。
ドラマの題材や芸能人のスクープとしてもよく目にする「熟年不倫」。
若い夫婦に比べ、長年積み上げてきたものを背負いながらの離婚は、言葉では言い尽くせないものがあります。
前回、前々回と熟年離婚について、自身も47歳で子連れ熟年離婚を経験しているカウンセラーの緒方リサコさんに話を聞きました。親子・家族関係を踏まえたパートナーとの関係修復や離婚相談を数多く受けている緒方さんに、今回は熟年不倫について話を聞きました。◆「不倫も続けたいし家庭も維持したい」当事者心理がもたらすもの
「熟年不倫の相談自体はとても多いですよ!」
熟年不倫について質問をしたところ、筆者もドキドキするような回答が最初に返ってきました。
その内情を紐解いていくと、ドラマなどの世界とは違い、ロマンチックとは言い切れない話が緒方さんの口から数多く飛び出しました。
「熟年不倫のご相談で多いのは『好きな人ができたけど、離婚はしたくないし関係も維持したい』という相談です。つまり全部手に入れ続けたいけど、このままじゃマズいぞという気持ちがある。だから、まずは何に対してマズいと思っているのか、その人の気持ちを紐解いていきます」
不倫はしないに越したことはありません。しかし、女性の社会進出も相まって、最近では男女関係なく、この問題が取り沙汰されることも増えつつあります。
◆母の不倫に子は“絶対”気づく
またよく、夫の不倫に妻は気づくが、妻の不倫に夫が気づくこと少ないと言われたりします。緒方さんもそれにはうなずくものの、「でも子どもには“絶対”と言っていいほどバレています」と断言。
「夫と妻は顔を合わせるのが朝と夜だけなので、不倫に気づかれないというケースが多いです。しかし子どもは、母親と顔を合わせる時間が多いので、私は“絶対”気づくとお伝えしたいです。
カウンセリング時は、『子どもが不倫を知った時、その影響をどう考えているのか、母としてどうしていきたいのか』といった想像はしてもらいます。実際、過去のご相談の中には、LINEを子どもに見られ、息子さんに『この人(不倫相手)は誰?』と聞かれたケースもあります。
私がこれまでにご相談を受けた中では、男の子は直接その場で聞き、女の子は見て見ぬふりをして、自分の中に溜め込むケースが多いです。そして母親への不満が溜まった時に爆発し『何、母親ヅラしてんの?』といった衝突を起こすという感じです」
◆気付かれたら誠実に対処するしかない
実際に、我が子と衝突してしまった親にはどのようなアドバイスをするのでしょうか。
「私としては、ここまで子どもに気づかれたら、もう母親は誠実に対処するしかないと思っています。きちんと問題と向き合い答えを出すということです。
離婚をしたとしても、誠心誠意謝罪をして、『あの時あなたが指摘してくれたから、ママはちゃんと問題に向き合えたよ』というふうに伝えられれば、子どもも時間はかかるかもしれませんが、いつか受け止めてくれるのではないでしょうか。一番良くないのは、コソコソ関係を続けたり、その場を取り繕ったりすることです。
子どもは誰しも、親にはオンナではなく親で居て欲しいと思っています。特に男の子はその傾向が強いので、場当たり的にごまかすと、今後の子どもとの関係に影響するだけでなく、子どものパートナーシップ観にも悪い影響が出てしまいます」
1人1台スマホがあり、人と繋がることや、写真や各種履歴の保存が簡単になっている今、男女ともに不倫を隠し通すことは不可能に近いです。
◆熟年不倫の始まり、一番多いのは同窓会
ところで、熟年不倫のキッカケとなる出会いの場はどこにあるのか。
下世話かもと思いつつ聞いてみると、一番は同窓会で、次に職場、そして異業種交流会だと言います。
「同窓会の良さは、共通の話題を新たに作らなくても思い出話で盛り上がれるし、最初から元同級生という信頼関係もできていることです。
また、学生当時の気持ちに戻れるので、当時のような気持ちで恋愛がスタートしていく感覚があり、自分たちが40代、50代になっていることを忘れられます。
仕事場では、業務を通じて同じ目的に向かうため、会話が弾んだり、その中で成長を感じたりできて、『高め合っている2人』みたいな感覚になりがちです。気が合い阿吽の呼吸でやり取りできるようになり、男女の関係へ……というのが定番ですね。
異業種交流会も、最近では女性でも個人事業主として頑張る方が増えたので、人脈を増やす中で関係が始まります。『お互い応援しあっていこう』みたいな名目で支えあうことで、恋愛に発展していきます。
出会いの場はさまざまですが、女性にとっての満足度は『一人の女性として愛されていること』に尽きます。熟年不倫では、長い方では10年など超長期化する傾向がありますが、同時に『いつかバレるんじゃないか』という怖さも抱えているのが、共通していますね」
熟年不倫は長期化しやすい。これは筆者も、過去にさまざまな当事者から話を聞いてきたので、同じ認識があります。
20代、30代女性の不倫は、結婚や妊娠といったライフイベントが重なるため、それを意識することで別れを選択する人が多いのに対し、熟年不倫は家族にさえバレなければ、焦って関係を清算する必要がないことが多いのです。
純粋に相手への気持ちが途切れたりしなければ、ダラダラと不倫を続けてしまう女性が多い現実があります。
◆子どもとの生活をどう考えるか
ダラダラと続くことが多い熟年の不倫ですが、その後の展開はどうなっていくことが多いのでしょう。
緒方さんいわく、「子どものことを考え、夫婦関係の再構築か離婚か、どっちに行くか決めることになる」。では、子どものことを考えながらも、自分を押し殺さず人生を歩むには、改めてどういう考え方や取り組みが必要なのでしょう。
「先ほど、『子どもは親の不倫を疑うと、親に直接聞くケースがある』とお話しました。これは当然、子どもがある程度の年齢になっている場合に限ります。
もし、こうした疑惑の目を向けられた場合は、とことん夫婦で今後のあり方を話し合っていただきたいです。その上で、結果を子どもにも話していけば、一生残るような心のキズになる可能性を少しでも下げることができるのではないでしょうか。
注意点として、不倫に明らかに気づいていない子どもには、絶対に不倫のことを言ってはいけません。あえて傷つける必要はないし、自分の不倫でも相手の不倫だとしても、それは子どもが媒介すべきテーマではないので、2人で考えて答えを出していくことが大事です」
しかし、相手の不倫を子どもに暴露してしまう親もいるのだとか……。
「子どもに自分の味方になってほしくて、相手の不倫を暴露する親が一定数います。これは子どもが傷つきますから、絶対にやらないでいただきたいです。
◆子どもは勘付き、静かに心を痛めている
熟年不倫の甘いようなドロドロした話を聞こうと思ったら、思いもよらない方向の内容に、筆者はなんだか救われたような気持ちになりました。
今まで、熟年不倫がテーマの話は度々見かけましたが、『子どもへの配慮』について、ここまで語られた内容はあまり知らなかったからです。「熟年不倫は家庭さえ壊さなければ良い」というスタンスの人が多い一方で、当事者の知らぬ間に、子どもは勘づき、静かに心を痛めているケースが一定数あることは、知っておくべきことではないでしょうか。
緒方さんは、「家族とは、三角形の底辺に親がいて、その上に子どもが乗るカタチを目指して欲しい」と教えてくれました。
つまり、家族とは親と子が手を取り合ってカタチを維持するのではなく、夫婦が土台を作り、その上で子どもが伸び伸びと生きていくのが、最適なカタチだということです。
だからこそ、不倫問題が起きているなら、夫婦のみで真正面から向き合い直し、お互い納得できる答えを見つけていくこと。それこそが、本当に満足する生き方を見るけるための、大切な一歩かもしれません。
<取材・文/おおしまりえ>