新しい働き方が定着し、リモートワークの便利さを感じている人も多いと思います。その一方で、コミュニケーションが希薄化したことのシワ寄せが出てきている職場もあり、やりにくさを感じる人もいます。
不安定な社会情勢も相まって、孤立や不安を感じるという人もいるのではないでしょうか。そんな中、コミュニケーションの活性化をねらって、オンラインでの雑談を取り入れるなどの対策をしている企業も増えましたが、なかなか効果は見えにくいようです。
コミュニケーションを見直してみたい人は、この機会に職場での「褒め」を取り入れてみるといいかもしれません。なんでも褒めればいいという訳ではないのですが、上手に取り入れると、「褒め」は職場にいい影響を与えてくれます。
どのようなメリットがあるのか、褒めるときにはどのような点に気をつければいいのか、この機会に確認してみませんか。
人を褒める効果とは褒められると「気分がよくなる」「前向きになれる」「認められたような気持ちになる」など、皆さんも自分の経験から「褒めの効果」はなんとなく感じていると思います。
褒めには、自分を価値ある存在として前向きにとらえる自尊感情をアップしてくれる効果があります。自信がないと、本来なら上手くいくことまで難しくなってしまうということがありますが、子どもの頃、先生や親に褒められたことで自信がつき、上手くできた経験があるという人も多いのではないでしょうか。
褒められるという経験は、自尊感情だけでなく、物事を最後までやり抜く力にも、いい影響があることが示唆されています。やり抜く力は大事な要素なので、褒めで改善が期待できるのであれば、ぜひ試してみたいものです。
褒めたくらいでは変わらないと考える人もいると思いますが、上手に使えば職場全体にも良い影響が期待できます。
「褒め」が職場に与える4つの効果職場で褒めを取り入れた場合、どんなメリットが期待できるのか具体的に見てみましょう。
▼1. 社員としての自覚を高めモチベーションが上がる褒められる経験が多い職場では、褒めが少ない職場と比べてモチベーションが上がり、所属意識が高まることが明らかになっています。
自分の仕事ぶりを認めてもらえる、良い部分を伝えてもらえる。そのような職場であれば、自分が働いている会社に肯定的な気持ちになり、その一員であることを感じやすくなるというのは皆さんも納得できることだと思います。
言葉にするのは恥ずかしいかもしれませんが、いいところを見つけたら、ぜひ伝えるようにしてください。 ▼2. 職場の仲間意識を高める職場で大事なのはチームワークです。リモートワークが多く取り入れられるようになって孤立感を抱く人が増えている今、仲間意識を高める対策が求められています。褒めはそんなときにもおすすめです。
褒めには、褒める側と褒められる側の仲間意識を高めてくれる効果があることが分かっています。仲良くなりたい人がいるのであれば、いいところを見つけて褒めるようにしてみましょう。 ▼3. 良好な対人関係を維持できる職場での悩みで必ずあがってくるのが「人間関係」です。会社を辞める理由の調査などでも、「人間関係」は上位のキーワード。気持ちよく働くためには、よい人間関係が欠かせません。褒めには良好な対人関係を維持する効果もあります。
リモートワークで顔を合わせる機会や会話をする機会が減ったという職場も多いと思います。人間関係は手入れをしないと、疎遠になりやすいものです。最近、ご無沙汰しているなと感じる人の、褒めポイントを探してみてはいかがでしょうか。 ▼4. 攻撃性を抑えることができるもしも職場に意地悪な人がいて、攻撃をされたくないと思っているのなら、その人を褒めてみるといいかもしれません。
エッセイを書いてもらい、それを褒めた人とそうでない人を比べた実験では、エッセイをポジティブに評価した相手に対しては攻撃性が抑制されています。
気をつけないと逆効果? 褒めるときのNGポイント「褒め」がよさそうということは感じているものの、褒めたけれどうまくいかなかったという経験がある人も多いと思います。なんでも褒めればいいかというと、そうではありません。褒め方によっては、効果がないどころか逆効果になってしまうケースもあります。
職場でありがちな3つのNG例を見てみましょう。 ▼1. 疑いを持たせてしまう「低いレベルでの褒め」「褒め」を取り入れようと、なんでもないようなことでも「すごい」「さすが」と褒めるようなケースはNGです。
褒めが過剰になってお世辞のように聞こえると「何か意図があるのではないか」「調子を合わせているだけなのではないか」など疑いを抱くことに繋がりますし、長所もあまり褒めると戸惑わせてしまいます。
心から素晴らしいと思う言動があったときが、褒めるチャンス。見逃さないように注意を向け、機会が訪れたら恥ずかしがらずに言葉にして伝えましょう。 ▼2. 慣れて効果を低減させてしまう「頻繁な褒め」褒めを活用しようとする人が、ついやりがちなのが、褒めの回数を安易に増やしてしまうことです。最初は嬉しかった「褒め」も、頻繁に回数を重ねられると「慣れ」につながってしまいます。こうなってしまうと、せっかくの褒めの効果は低減してしまいます。
「ここぞ」というタイミングで、気持ちをしっかり伝えながら褒めるようにしましょう。 ▼3. 失礼にあたる褒めこちらは褒めているつもりでも、褒めが失礼にあたってしまうことがあります。よくありがちな例と、言い換え例を見てみましょう。 失礼な例と言い換え例(1)プロに対して:NG「うまいですね」→OK「さすがですね」
失礼な例と言い換え例(2)能力や立場が上の人に:NG「偉いですね」→OK「見習いたいです」 「褒め」には、相手を評価するようなニュアンスが加わることがある、と指摘している研究もあります。
人から評価されるのは、時として不快に感じるものです。「偉いですね」などの評価の意味合いが感じられてしまう言い回しは、「見習いたいです」といった感想の意味合いが強い表現に変えるなど、褒めるときはできるだけ評価のニュアンスが入らないよう工夫するとよいでしょう。
覚えておこう! 自分が褒められたときのベストな対応は褒められたとき、皆さんはどんな対応をしているでしょうか。日本では謙遜するという文化がありますが、「そんなことはありません」と相手が褒めたことを否定し過ぎるのは要注意です。せっかく褒めていることを何度も否定してしまうと、謙遜と分かっていても、いい気分がしないときもあります。
褒めてくれたことに対して嬉しいと感じていることを伝えつつ、相手を褒めるようなフレーズを使うとよいでしょう。 ▼褒められたときのおすすめフレーズ例「尊敬する〇〇さんに褒めていただけるなんてうれしいです」 どうしても謙遜したい人も、褒めてもらったことを否定した後にこのフレーズを使えば、印象が悪くなりません。 ▼謙遜するときのフレーズ例「いえ、私なんてまだまだです。でも、尊敬する〇〇さんに褒めていただけてうれしいです」 せっかく褒めるなら、お互いが気持ちよく、いい結果につながるようにしたいものです。どれも簡単にできることばかりですので、できそうなものから取り入れてみてください。
※参考資料:大人だって褒められたい! 不安な時代の今こそ実施すべき「褒め」コミュニケーション戦略