「定型な友人達に私のADHD的実行機能の弱さの話をしていて…」
【話題になった投稿】「実行機能」にまつわる投稿を見る発達障害の一種であるADHDを抱えるなちゅ。さん(@itacchiku)。X(旧Twitter)を通じ、ご自身の体験も踏まえながら発達障害にまつわる情報を発信されています。ある投稿では、「実行機能」をテーマに、当事者の方々が抱える日々の困りごとや、その悩みが定型発達の方(発達障害をもたない方)に理解されにくいという現実について紹介されました。

共感の声、厳しい評価など、さまざまな意見が「トイレに行きたいと思っても立ち上がれないので常に尿意と闘っている」「TVのチャンネル変えたいと思っても、リモコンが自分の真横にあるのにボタンを押すまでに4時間かかる」というなちゅ。さん。しかし、そのような困りごとについて友人に話しても、「感覚が全くわからない」と言われ、理解してもらえないのだといいます。そのようななちゅ。さんの訴えに対し、X上でもさまざまな反応がありました。そのなかには、同じくADHDの特性のある方からの共感の声も多数寄せられています。「めちゃくちゃわかる…」「本当にスイッチみたいに動く時と動かない時が切り替わる」「毎日尿意と戦いを繰り広げています…..」「(浴室で)お湯抜いたのに、お湯が入ってない寒い浴槽にじっとしてるとかよくある」しかし、一方では、「発達障害に関係なく起こり得ることではないか」、という見方をする人や、「それでは就職が難しい」と厳しい評価をする人もいました。――「トイレに行けない」「テレビのリモコンが押せない」といったことはよくあるのでしょうか?なちゅ。さん:毎日がそんな感じです。動き出すまでに時間がかかり、一度走り始めると今度は止まることが難しい。自分で自分をコントロールすることの難しさを感じます。――このような状況になった際、ご自身ではどんな感覚になっているのでしょうか?なちゅ。さん:体は動きませんが、脳が同じところでずっと足踏みしている感覚です。浮かんでは消える過去の記憶とひたすら闘っていたり、これからやらなくてはいけない事の手順をひたすら脳内でまとめようとしていたり、動けない自分をひたすら奮い立たせようと声をかけている時もあります。――他に、このような状況になる原因として考えられるものはありますか?なちゅ。さん:私の場合は、ホルモン周期や気圧変化、また、季節性のうつも絡みやすいです。――リプ欄には、一般の方にもありがちなことでは?といったコメントもありましたね。当事者の方とそうでない方では、そういったことの起こり方などは異なるのでしょうか?なちゅ。さん:発生のメカニズムは同じなのかもしれませんが、一般の方は当事者に比べて、その起こる頻度やハードルは低い気がします。私には、何気ない単語や、視界に入った物が引き金になって過去の出来事が一気に蘇る…そんなことがとても高い頻度で起こります。そのたびに意識を切り替えるのに大きなエネルギーを使っています。ADHDの方が抱えやすい「実行機能」の問題なちゅ。さんが訴えるADHD当事者としての「実行機能」の問題。そもそも、実行機能とは、どのようなものなのでしょうか。人間は行動を起こし、それを達成するまでに、実はさまざまな過程が必要となります。見聞きしたことを記憶し考える、行動の結果となる目標を立てる、感情や自身の行動を場に応じて切り替える、過去の経験を参考にする、目標に関係のない行動を我慢する、といった段階です。ここでいう目標とは、いわゆる“将来の夢”のような壮大なものだけではなく、日常・社会生活の行動全般を指します。着替えや料理、入浴、職場に行って仕事をこなすなど、あらゆるものに実行機能は影響しています。しかしながら、発達障害の方のなかには、この実行機能の面で困難を覚える人も多いといいます。特に、ADHDの特性を持つ方は、計画性や優先順位を立てることが苦手、想定外のことが起こるとパニックになる、衝動的に行動しがちといった特性から、効率よく物事を進めて、達成することが難しいといわれています。このような面から日常生活や社会生活に支障が出てしまう方は、自分でできる範囲の対策を考えたり、周囲にサポートを求めたりして、環境を整えることが大切です。自分でできる対策としては、マニュアルを活用して作業手順を明確にする、作業に関係のないものを身の回りに置かない、ふせんやToDoリスト・リマインダー機能などを活用する、などの方法が考えられます。周囲からは、指示はなるべくひとつずつ明確にしてもらう、各作業の優先順位を提示してもらう、チェックリスト・作業マニュアルを用意してもらう、といったサポートを求めるのも有効でしょう。 ◇ ◇実行機能の観点から、発達障害のある方の困りごとについて紹介しました。ただし、発達障害の特性は人によってさまざまであり、生きづらさも複数の要因から起こることが多いともいわれています。今回のなちゅ。さんの件についても、実行機能に加え、別の特性も絡みあって起こっている可能性もあります。不安を抱えている方は、医師や発達障害支援の専門家に相談してみるのも良いかもしれません。また、困っている理由が周りになかなか理解されないというのも、大きな問題といえるでしょう。当事者の方が周囲と関わりながら、生きやすい生活を送るためには、一体どのようなことが大切なのか――なちゅ。さんには、そのあたりについても考えをおうかがいしています。それは次回にご紹介します。(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))
発達障害の一種であるADHDを抱えるなちゅ。さん(@itacchiku)。X(旧Twitter)を通じ、ご自身の体験も踏まえながら発達障害にまつわる情報を発信されています。
ある投稿では、「実行機能」をテーマに、当事者の方々が抱える日々の困りごとや、その悩みが定型発達の方(発達障害をもたない方)に理解されにくいという現実について紹介されました。
「トイレに行きたいと思っても立ち上がれないので常に尿意と闘っている」
「TVのチャンネル変えたいと思っても、リモコンが自分の真横にあるのにボタンを押すまでに4時間かかる」
というなちゅ。さん。しかし、そのような困りごとについて友人に話しても、「感覚が全くわからない」と言われ、理解してもらえないのだといいます。
そのようななちゅ。さんの訴えに対し、X上でもさまざまな反応がありました。そのなかには、同じくADHDの特性のある方からの共感の声も多数寄せられています。
「めちゃくちゃわかる…」「本当にスイッチみたいに動く時と動かない時が切り替わる」「毎日尿意と戦いを繰り広げています…..」「(浴室で)お湯抜いたのに、お湯が入ってない寒い浴槽にじっとしてるとかよくある」
しかし、一方では、「発達障害に関係なく起こり得ることではないか」、という見方をする人や、「それでは就職が難しい」と厳しい評価をする人もいました。
――「トイレに行けない」「テレビのリモコンが押せない」といったことはよくあるのでしょうか?
なちゅ。さん:毎日がそんな感じです。動き出すまでに時間がかかり、一度走り始めると今度は止まることが難しい。自分で自分をコントロールすることの難しさを感じます。
――このような状況になった際、ご自身ではどんな感覚になっているのでしょうか?
なちゅ。さん:体は動きませんが、脳が同じところでずっと足踏みしている感覚です。浮かんでは消える過去の記憶とひたすら闘っていたり、これからやらなくてはいけない事の手順をひたすら脳内でまとめようとしていたり、動けない自分をひたすら奮い立たせようと声をかけている時もあります。
――他に、このような状況になる原因として考えられるものはありますか?
なちゅ。さん:私の場合は、ホルモン周期や気圧変化、また、季節性のうつも絡みやすいです。
――リプ欄には、一般の方にもありがちなことでは?といったコメントもありましたね。当事者の方とそうでない方では、そういったことの起こり方などは異なるのでしょうか?
なちゅ。さん:発生のメカニズムは同じなのかもしれませんが、一般の方は当事者に比べて、その起こる頻度やハードルは低い気がします。私には、何気ない単語や、視界に入った物が引き金になって過去の出来事が一気に蘇る…そんなことがとても高い頻度で起こります。そのたびに意識を切り替えるのに大きなエネルギーを使っています。
なちゅ。さんが訴えるADHD当事者としての「実行機能」の問題。そもそも、実行機能とは、どのようなものなのでしょうか。
人間は行動を起こし、それを達成するまでに、実はさまざまな過程が必要となります。
見聞きしたことを記憶し考える、行動の結果となる目標を立てる、感情や自身の行動を場に応じて切り替える、過去の経験を参考にする、目標に関係のない行動を我慢する、といった段階です。
ここでいう目標とは、いわゆる“将来の夢”のような壮大なものだけではなく、日常・社会生活の行動全般を指します。着替えや料理、入浴、職場に行って仕事をこなすなど、あらゆるものに実行機能は影響しています。
しかしながら、発達障害の方のなかには、この実行機能の面で困難を覚える人も多いといいます。
特に、ADHDの特性を持つ方は、計画性や優先順位を立てることが苦手、想定外のことが起こるとパニックになる、衝動的に行動しがちといった特性から、効率よく物事を進めて、達成することが難しいといわれています。
このような面から日常生活や社会生活に支障が出てしまう方は、自分でできる範囲の対策を考えたり、周囲にサポートを求めたりして、環境を整えることが大切です。
自分でできる対策としては、マニュアルを活用して作業手順を明確にする、作業に関係のないものを身の回りに置かない、ふせんやToDoリスト・リマインダー機能などを活用する、などの方法が考えられます。
周囲からは、指示はなるべくひとつずつ明確にしてもらう、各作業の優先順位を提示してもらう、チェックリスト・作業マニュアルを用意してもらう、といったサポートを求めるのも有効でしょう。
◇ ◇
実行機能の観点から、発達障害のある方の困りごとについて紹介しました。
ただし、発達障害の特性は人によってさまざまであり、生きづらさも複数の要因から起こることが多いともいわれています。今回のなちゅ。さんの件についても、実行機能に加え、別の特性も絡みあって起こっている可能性もあります。不安を抱えている方は、医師や発達障害支援の専門家に相談してみるのも良いかもしれません。
また、困っている理由が周りになかなか理解されないというのも、大きな問題といえるでしょう。
当事者の方が周囲と関わりながら、生きやすい生活を送るためには、一体どのようなことが大切なのか――なちゅ。さんには、そのあたりについても考えをおうかがいしています。それは次回にご紹介します。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))