陸上自衛隊が鉄くずにする前提で売り払った高機動車4両が、上下に解体しただけの状態で海外向けウェブサイトを通じて9月まで売り出されていた。
取引に関わった業者への取材からは、高機動車など自衛隊車両が長期間にわたって転売、輸出されていた実態が見えてきた。
甲信越地方の中古車輸出会社が高機動車4両を売り出したウェブサイトには、「BXD10」で始まる高機動車固有の車台番号が記されていた。記者は車台番号を基に、陸自の売り払いとその後に転売された流れをたどった。
廃車を鉄くずにする際、解体業者らは自動車リサイクル法に従って、車台番号と処理状況を管理システムに報告する義務がある。システム上の記録や業者らへの取材から、4両は10年以上前に関東地方の金属くず卸会社が陸自から落札したものだとわかった。
社長の男性によると、この卸会社では数年前まで、高機動車など落札した自衛隊車両を転売していたという。社長は取材に「古い記録がなく、4両をどの駐屯地から落札し、誰に転売したかは不明。甲信越地方の輸出会社のことも知らない」と答えた。
自衛隊車両の落札を始めたのは先代社長の頃で、当初は鉄くずにして売っていた。だが、約20年前に破壊処理の外部委託を始めると、委託先の業者が車両を買い取り、鉄くずにせずに転売、輸出するようになったという。
卸会社は、輸出されることを承知で業者に売っていた。社長は「鉄くずでは二束三文。車を丸ごとのまま売った方が高値がついた。自衛隊から(処理状況の)報告を求められることもなかった」と話した。しかし、転売する前提の高値で応札するライバル業者が増えたため、数年前に手を引いたという。
問題の4両は、金属くず卸会社が落札した後、複数の業者間で売買された。その一つが千葉県の解体業者だった。2020年6月、この業者が廃車処理の管理システムに、4両を解体したと報告していた。
経営する男性は取材に「知人の業者から買って解体し、コンテナに入れた」と答えた。甲信越地方の輸出会社のことは知らないといい、別の業者を介して4両が渡った可能性がある。
男性は、4両とは別に「自衛隊の車を10両ほど輸出した」「業者向けオークションなどで仕入れ、関東地方の港から出した」と話した。落札者に再使用を禁じる陸自のルールは知らないとし、困惑した様子で「どこの業者も輸出していた」と答えた。
最後に4両が渡った輸出会社の経営者も、今年3月の取材に「過去に数台を扱った。高機動車は一番人気があった」と語った。4両の高機動車を含めて、自衛隊車両を別の業者から仕入れたと話す一方、「扱う品は一般車が大半で、自衛隊車両の割合はわずかだった」「今は自衛隊車両の仕入れが途絶えている。理由はわからない」と話した。