昨今、急激に変わりつつある「働き方」。大手企業では「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」の実現を目指し、積極的な取り組みを行っているが、一方で中小や特定の職業においては、まだまだ十分とは言えないのが現状だ。ブラックな職場で心身ともに追い詰められた女性たちの実体験とは。
【漫画】“美人でデキる”先輩社員が豹変…ブラック部署で起きた事件の一部始終■ベンチャー企業のブラック部署、密室での叱責に新人いじめ、悪口の無限ループも 「社会はこういうものかな、つらいと思うのは甘えなのかも」――。新卒でブラック部署に配属され不安障害になってしまったゆうこさん(@yuyuyuko0202)は、追い詰められていた当時の心境をそう明かす。

ゆうこさんが就職したのは、業績が急成長しているベンチャー企業で、就活中にはおしゃれなオフィスで働く社員たちがまぶしく見えたという。最終面接で「希望のクリエイティブ職ではなく総合職でもよいか」と問われ、一瞬迷ったが、長引く就活にも疲れ入社を決めた。 その後、約30人の同期とともに研修を終え、配属されたのは社内で“大奥”と呼ばれる女性だらけのコールセンター部門だった。仕事は忙しく、数人集まれば“いない誰か”の悪口大会が開かれ、新人いじめも横行。退職者が後を絶たなかったという。 さらにゆうこさんを苦しめたのが、直属の先輩だった。社内では「美人でデキる」と評判の“大門先輩”は、感情の起伏が激しく、ゆうこさんにとっては常に顔色をうかがわなければいけない、気が張る存在だった。ある出来事をきっかけに、そんな“大門先輩”のターゲットとなってしまったゆうこさんは、ついに密室で叱責と暴力を受ける。「夜10時を過ぎたころ、誰もいない会議室で大門さんから仕事の進め方で注意を受けていました。私の態度が気に入らなかったのか、そのうち、怒鳴ったり、怒りに任せてごみ箱を蹴ったり、ヒステリー状態に…。最後には、彼女の蹴った机が私の腹部を直撃しました」 突然ぶつけられた激しい怒りに対して、最初は驚きと恐怖心を感じたという。「でも、その後すぐに冷めていき、怒り狂っている相手に対して冷ややかな目で見ていました。実は過去、大門さんが他の社員の椅子を蹴ったり、感情的に怒鳴ったりしているところを見たこともあったので、ある意味見慣れていたと言ってもいいかもしれません」■追い詰められると視野が狭くなり、その環境に疑問を持たなくなることも 部署がブラック化したのは、業績の急成長にともない、一気に社員を増やし、社員育成や環境改善などが不十分だったこと、仕事の量が多かったことが要因だったのでは、と話す。「ただ、仕事の中には業務効率化で削減できる仕事もあったはずですが、皆、目の前のことに追われ疲れ果てていたので、未来の環境改善に労力を割くことが出来なかったのかなと思います。そして環境が悪いと社員たちにも余裕がなくなりギスギスしていき、退職者が増えるという悪循環でした」 今、過酷な職場に悩んでいる人へは、こうアドバイスをしたいとゆうこさん。「ブラック企業で働いていると、精神的にも肉体的にも追い詰められて視野が狭くなり、今の環境に疑問を持つことすらできなくなります。私のいた職場でも、私を含めたくさんの人が心身に不調を訴え辞めていきました。働いているときは『退職なんて甘え』とか『周りに迷惑がかかる』と考えていましたが、自身の健康以上に大事なものなんてない!と今は思います。会社がつらくて仕方ないならその会社は自分に合っていないだけ。自分を大切に!」■ブラック保育園、「残業ゼロ」「実働8時間」は全部ウソ? 見せかけの求人票 保育士としてこれまでに5園を経験、10年強のキャリアを持つはちみつこさん(@hachi_mitsu89)。Instagram漫画『ブラック保育園 辞めました』で描くのは、実際にあった保育現場での壮絶体験だ。 新卒から5年間働いた園を辞め、次に就職したのは保育人数や残業時間など、より希望にあう条件の園だった。ところが初日から求人票とあまりにも異なる事実が次々に判明する。「休憩あり8時間勤務」だったはずが、実際には休憩時間にトイレ掃除や他クラスのサポートを指示され、座る時間すらなかった。早番は6時半、遅番は10時出勤だったが、園を出られるのはそろって19時。園長が来る日は20時前後まで園を出ることはできなかった。 早番勤務を割り当てられることが多かったはちみつこさんは、休憩&外出なしで12時間前後拘束されることも多かったという。「求人票には月の残業0時間と書かれていたのに、実際は毎日残業で手当も一切つきませんでした。さらに、毎月の給食費(9800円)や茶話会費(4500円)などの項目で給与から天引きが多く、手取り額を見て、毎月貯金を切り崩さないとやっていけないことを確信し絶望しました」■「保育士の人員不足が1番ヒューマンエラーに繋がりやすくブラック化しやすい」 他クラスの創作物の手伝いに、先輩保育士の買い出し代行など独自の園ルールにも驚いたそうだが、最も辛かったのは待遇面と話す。全額支給だったはずの交通費も入園後に月の上限1万円までと知らされた。早朝6時半の早番は自腹タクシーだった。先輩保育士からは「早く園の近くに引っ越してくださいね」と注意を受けた。「当時はテレビの笑い声や楽しい音楽を聴くのがつらく、大好きだったテレビと音楽を拒絶するくらい精神的に参っていました。たった3ヵ月間でしたが、人生の中でとてつもなく長く辛い3ヵ月でした」 辛い記憶を「浄化する意味もこめて漫画にした」というはちみつこさん。当時を振り返り、保育園がブラック化する要因をこう推察する。「当時開園10年目の園でしたが、ベテランの先生が開園からずっと勤務されている方々だったので、『これが当たり前』になっていたのだろうと思います。保育園はとても閉鎖的な面があり “ブラック改善”は簡単ではありません。ただ、良い保育園は、常に職員間でどんなに小さな事でも声をかけ合っています。私がこれまで色々な園を経験してきて思ったのは、保育士の人員不足が1番ヒューマンエラーに繋がりやすく、ブラック化してしまう要因かなと思いました」 漫画を通じて最も伝えたいのは「辞める勇気」だ。「私は3ヵ月でブラック保育園を辞めました。今、『仕事を辞めたい』『私の職場は変なんだろうか?』と悩んでいる人がいれば、辞めていいんだよ!と伝えたいと思って描いています」 これまでの投稿には、現職の保育士からも多くのコメントが寄せらせ、「全く同じ」「休憩がある園で働いたことがない」など、改めて保育士の過重労働が恒常化している現状がうかがえる。そんな読者たちに向け「切なすぎるコメントたくさんいただきますが、自分を犠牲にせず、大事にしてください。辞めたっていいんです」とエールを送るはちみつこさん。ブラック保育園経験者として、保身の必要性を説くと同時に保育現場の環境改善を願っている。
■ベンチャー企業のブラック部署、密室での叱責に新人いじめ、悪口の無限ループも
「社会はこういうものかな、つらいと思うのは甘えなのかも」――。新卒でブラック部署に配属され不安障害になってしまったゆうこさん(@yuyuyuko0202)は、追い詰められていた当時の心境をそう明かす。
ゆうこさんが就職したのは、業績が急成長しているベンチャー企業で、就活中にはおしゃれなオフィスで働く社員たちがまぶしく見えたという。最終面接で「希望のクリエイティブ職ではなく総合職でもよいか」と問われ、一瞬迷ったが、長引く就活にも疲れ入社を決めた。
その後、約30人の同期とともに研修を終え、配属されたのは社内で“大奥”と呼ばれる女性だらけのコールセンター部門だった。仕事は忙しく、数人集まれば“いない誰か”の悪口大会が開かれ、新人いじめも横行。退職者が後を絶たなかったという。
さらにゆうこさんを苦しめたのが、直属の先輩だった。社内では「美人でデキる」と評判の“大門先輩”は、感情の起伏が激しく、ゆうこさんにとっては常に顔色をうかがわなければいけない、気が張る存在だった。ある出来事をきっかけに、そんな“大門先輩”のターゲットとなってしまったゆうこさんは、ついに密室で叱責と暴力を受ける。
「夜10時を過ぎたころ、誰もいない会議室で大門さんから仕事の進め方で注意を受けていました。私の態度が気に入らなかったのか、そのうち、怒鳴ったり、怒りに任せてごみ箱を蹴ったり、ヒステリー状態に…。最後には、彼女の蹴った机が私の腹部を直撃しました」
突然ぶつけられた激しい怒りに対して、最初は驚きと恐怖心を感じたという。
「でも、その後すぐに冷めていき、怒り狂っている相手に対して冷ややかな目で見ていました。実は過去、大門さんが他の社員の椅子を蹴ったり、感情的に怒鳴ったりしているところを見たこともあったので、ある意味見慣れていたと言ってもいいかもしれません」
■追い詰められると視野が狭くなり、その環境に疑問を持たなくなることも
部署がブラック化したのは、業績の急成長にともない、一気に社員を増やし、社員育成や環境改善などが不十分だったこと、仕事の量が多かったことが要因だったのでは、と話す。
「ただ、仕事の中には業務効率化で削減できる仕事もあったはずですが、皆、目の前のことに追われ疲れ果てていたので、未来の環境改善に労力を割くことが出来なかったのかなと思います。そして環境が悪いと社員たちにも余裕がなくなりギスギスしていき、退職者が増えるという悪循環でした」
今、過酷な職場に悩んでいる人へは、こうアドバイスをしたいとゆうこさん。
「ブラック企業で働いていると、精神的にも肉体的にも追い詰められて視野が狭くなり、今の環境に疑問を持つことすらできなくなります。私のいた職場でも、私を含めたくさんの人が心身に不調を訴え辞めていきました。働いているときは『退職なんて甘え』とか『周りに迷惑がかかる』と考えていましたが、自身の健康以上に大事なものなんてない!と今は思います。会社がつらくて仕方ないならその会社は自分に合っていないだけ。自分を大切に!」
■ブラック保育園、「残業ゼロ」「実働8時間」は全部ウソ? 見せかけの求人票
保育士としてこれまでに5園を経験、10年強のキャリアを持つはちみつこさん(@hachi_mitsu89)。Instagram漫画『ブラック保育園 辞めました』で描くのは、実際にあった保育現場での壮絶体験だ。
新卒から5年間働いた園を辞め、次に就職したのは保育人数や残業時間など、より希望にあう条件の園だった。ところが初日から求人票とあまりにも異なる事実が次々に判明する。
「休憩あり8時間勤務」だったはずが、実際には休憩時間にトイレ掃除や他クラスのサポートを指示され、座る時間すらなかった。早番は6時半、遅番は10時出勤だったが、園を出られるのはそろって19時。園長が来る日は20時前後まで園を出ることはできなかった。
早番勤務を割り当てられることが多かったはちみつこさんは、休憩&外出なしで12時間前後拘束されることも多かったという。
「求人票には月の残業0時間と書かれていたのに、実際は毎日残業で手当も一切つきませんでした。さらに、毎月の給食費(9800円)や茶話会費(4500円)などの項目で給与から天引きが多く、手取り額を見て、毎月貯金を切り崩さないとやっていけないことを確信し絶望しました」
■「保育士の人員不足が1番ヒューマンエラーに繋がりやすくブラック化しやすい」
他クラスの創作物の手伝いに、先輩保育士の買い出し代行など独自の園ルールにも驚いたそうだが、最も辛かったのは待遇面と話す。全額支給だったはずの交通費も入園後に月の上限1万円までと知らされた。早朝6時半の早番は自腹タクシーだった。先輩保育士からは「早く園の近くに引っ越してくださいね」と注意を受けた。
「当時はテレビの笑い声や楽しい音楽を聴くのがつらく、大好きだったテレビと音楽を拒絶するくらい精神的に参っていました。たった3ヵ月間でしたが、人生の中でとてつもなく長く辛い3ヵ月でした」
辛い記憶を「浄化する意味もこめて漫画にした」というはちみつこさん。当時を振り返り、保育園がブラック化する要因をこう推察する。
「当時開園10年目の園でしたが、ベテランの先生が開園からずっと勤務されている方々だったので、『これが当たり前』になっていたのだろうと思います。保育園はとても閉鎖的な面があり “ブラック改善”は簡単ではありません。ただ、良い保育園は、常に職員間でどんなに小さな事でも声をかけ合っています。私がこれまで色々な園を経験してきて思ったのは、保育士の人員不足が1番ヒューマンエラーに繋がりやすく、ブラック化してしまう要因かなと思いました」
漫画を通じて最も伝えたいのは「辞める勇気」だ。
「私は3ヵ月でブラック保育園を辞めました。今、『仕事を辞めたい』『私の職場は変なんだろうか?』と悩んでいる人がいれば、辞めていいんだよ!と伝えたいと思って描いています」