長野県中野市で5月、住民女性と警察官の計4人が殺害された事件で、青木政憲容疑者(32)=鑑定留置中=が警察官2人を銃撃するまでの詳しい経緯が25日、捜査関係者への取材で分かった。
青木容疑者はパトカー到着直後から2人を狙い、工場外壁にぶつかって停車したところを至近距離から発砲していた。この間、2分に満たなかった。
事件は25日で発生から3カ月が経過。青木容疑者は5月25日夕、散歩中の竹内靖子さん(70)と村上幸枝さん(66)を刺殺し、パトカーで駆け付けた池内卓夫警部(61)と玉井良樹警視(46)=いずれも2階級特進=に発砲するなどして殺害した疑いが持たれている。
捜査関係者によると、池内警部と玉井警視は村上さんの殺害現場に到着した際、ハーフライフル銃などを所持した青木容疑者のそばを通り過ぎて停車した。約10秒後、後方から接近され、運転席側に銃口を向けられた。運転手の池内警部の足がブレーキペダルから離れたとみられ、パトカーは青木容疑者に並走されながら低速で発進し、工場の外壁に衝突して止まった。
青木容疑者は数十秒後、サイレンが鳴動する中、1発目を池内警部の右胸に発砲した。その衝撃で車体は大きく揺れ、クラクションが鳴り響いた。助手席にいた玉井警視にも弾を装填(そうてん)して2発目を発射した。玉井警視は左腕に被弾して車外に逃れたが、パトカー後方から回り込まれてナイフで刺され、これが致命傷となった。
現場に到着してから最初の発砲まで1分余り、玉井警視が刺されるまでは2分足らずだった。1発目の発砲直後に「撃たれた」と短い無線連絡が入っており、玉井警視が事態を県警に伝えようとしたとみられている。
一連の動きはドライブレコーダーなどに記録され、青木容疑者がためらうことなく発砲していたことから、県警は確定的な殺意があったとみて捜査。長野地検は鑑定留置を行い、刑事責任能力の有無を調べている。