8月20日時点で都心では今年21日目の猛暑日を記録するなど、近年稀にみる暑さを実感している人は多いのではないだろうか。厳しい残暑に電気代の値上げも重なり、体も家計もしんどい状況は当面続きそうだ。そこで、消費生活アドバイザーの和田由貴さん(@wadayuki)に、エアコンを節電しながら涼をとるためのワザを教えてもらった。◆「設定温度」28℃は誤り!?
蒸し暑い日は冷房の設定温度を下げたくなるが、環境省が推奨している室温は夏季で28℃となっている。
「室温28℃以下、かつ極端に高湿度になってない状態であれば、熱中症の危険が少ないと言われています。よく勘違いされがちですが、設定温度を28℃にしてしまうと、効きの悪いエアコンの場合は室温がなかなか下がらないことも。『設定温度』28℃ではなく、目安はあくまで『室温』28℃と覚えてください」(和田さん、以下同)
◆実際の「室温」を測るようにしよう
エアコンの効きは、本体の性能だけでなく、住居環境にも左右される。
「北側の比較的涼しい部屋だったら28℃に設定しても効くかもしれないけれど、西日がガンガン当たるような部屋では28℃設定だと暑く感じるはず。このように、設定温度で考えると結構ブレが出てきてしまうので、温湿度計を部屋に設置して、実際の室温・湿度を確認しながら、冷やしすぎてないか、熱くなりすぎていないか確認しながらエアコンを稼働させましょう」
人が快適に過ごせる湿度は、40~60%だという。温湿度計は100均ショップでも手に入るため、エアコンに室温・湿度の表示がない場合は、購入するのも手だ。
◆夜間の外出時はエアコンをどうする?
短時間家を空ける際、エアコンをつけっぱなしにするか、電源を切るか迷ってしまうが、どのような対応が正解なのか。
「これは諸説ありますが、パナソニックやダイキンの実験では、日中の暑い時間帯の30分程度の外出であれば、エアコンをつけっぱなしにしたほうが節電になると言われています。外出が30分を超える場合は電源を消すべきですし、日が沈んで比較的涼しい時間帯になったら、家を空ける時間の長さにかかわらず、エアコンはマメに消したほうがいいです」
就寝時、一定時間でエアコンが切れるようにタイマーを設定すると、夜中暑さにうなされて目覚めてしまうことも……。
◆エアコンの電源をオフにするときは…
「エアコンをつける際は扉や窓を閉め切っているため、エアコンの電源が消えた後にものすごく部屋の温度が上がるんですよね。暑くてエアコンをつける、冷えてきたからエアコンを消す、というのを繰り返していると、電気代が余計にかかってしまいます。それだけでなく、眠りが浅くなって体にも悪影響を及ぼしますし、熱中症の恐れもあります。なので、寝苦しくない程度の高めの温度に設定して、朝までつけっぱなしにするほうがいいと思います」
エアコンの切タイマー機能を活用するなら、狙い目の時間帯は「明け方」だ。
「就寝の2~3時間後、たとえば夜中の2時頃に切れるように設定すると、再び暑さを感じてしまう可能性が高いです。切タイマーを使うのであれば、もっと暑さが落ち着いてくる明け方ぐらいに切れるように設定しましょう」
◆扇風機とサーキュレーターの違いって?
エアコンの効きを良くする方法として、扇風機やサーキュレーターとの併用が挙げられるが、和田さん曰く「扇風機とサーキュレーターは似ているようで、主な用途が異なる」。扇風機は広範囲に向けて柔らかい風を送り、サーキュレーターは、直進的な強い風を遠くまで届ける構造になっている。

◆扇風機の設置場所には要注意
一方の扇風機は、人に直接風を当てて涼をとるのに向いているが、こちらも設置場所には注意が必要だ。
「エアコンの冷気が溜まりがちな場所に扇風機を置いて、人のいる方向に向けて風を送りましょう。そうすることで体感温度が下がるし、冷気ムラも解消できます」
エアコンの風向も、涼しさを感じたい一心で下に向けてしまいがちだが、風向を床に対して水平に設定することで冷たい風がより遠くまで行き渡り、部屋全体が冷えやすくなるという。
◆家電の「保温機能」が室温上昇の原因に?
家電が放出する熱の影響も、あながち侮れない。近年普及が進むLED照明は、節電になるだけでなく、発熱温度が低いというメリットがあるそうだ。
「白熱球と比べるとLEDはそこまで熱くならないので、室温への影響が少ないです。また、電気ポットや炊飯器など保温機能を備えた家電を長時間稼働させていると室温上昇につながってしまうため、夏場は極力使わないほうがいいです。お湯は使う都度沸かし、炊いたご飯は冷凍して、食べる時に都度電子レンジで解凍したほうが、長い目で見れば消費電力を抑えられます。トイレの温水洗浄便座も、不要であれば電源を切ったり、水温設定を見直すなどするといいでしょう」
外出先から自宅に戻った時、モワッとした熱気が室内にこもり、エアコンをつけてもなかなか室温が下がってくれないこともある。
「そういう時はすぐにエアコンをつけるのではなくて、まずは部屋を換気して暑い空気を外に逃がしましょう。2か所以上窓を開けて空気の通り道をつくるのが理想ですが、窓が2か所ない、風が通りづらいといった場合は、窓を1か所開けて、換気扇を回すといいですよ」
◆「換気」や「日よけ」も効果的
エアコンをつける前にできる住居の対策としては、「日よけ」も有効だ。
「日中室温が上がってしまう大きな要因の1つは、窓から入ってくる日射です。窓辺に垂らす『すだれ』や、立てかけて使う『よしず』のほか、最近は各家庭のベランダや窓辺で使いやすい日よけも多数出ています。それらを使って日射を防ぐことで、部屋への熱ごもりを軽減できます」
帰宅時や風呂上がりなど特に暑く感じるタイミングでは、エアコンの設定温度を下げたくなるが、エアコンの冷房の設定温度を1度下げるだけで、10%ほど消費電力が上がってしまうのだとか。
「エアコンの設定温度を下げると電気代が余計にかかってしまいますが、風量を変えても電気代はそこまで大きく変わりません。暑いと感じたら、設定温度を下げる前に風量を大きくしてみてください」
◆ボディシート×冷房のクールハックを紹介
より涼しさを実感できるテクニックとして、マンダムが提唱する「クールハック」を活用したものも。
「湯船にハッカ油を数滴垂らすと、スースー感があって風呂上がりの涼しさが格段に変わります。ただし、入れすぎるとヒリヒリと痛みを感じることもあるので、適量を守りましょう」
暑さを軽減するには、首元やワキなど、動脈が体表近くを通っている部位を冷やすのが効果的だという。
◆ボディペーパーとハンディファンを併用
「ドライヤー中なんかにクールリングや保冷剤を首にあてておくと、火照りが抑えられ、汗が引きやすいです。また、ミントやメンソールなどの清涼成分入りのボディシートで汗をかきやすい首の後ろ・胸元・背中を拭くことで冷感を得られ(※体感温度を下げるものであって、体温を下げるわけではありません)、より涼しく感じられます。そこに扇風機の風を浴びたり、うちわであおいだりすると、気化熱の作用によってひんやり効果は高まります。また、ボディシートやボディローションそのものを冷蔵庫で冷やしておくと、クール感がさらにアップするので夏場は特にお勧めです」
エアコンの節電に精を出すのも結構だが、「無理は禁物」と和田さんは釘をさす。
「節電も大切ですが、今年は熱中症で倒れる方もものすごく多いから、健康にはくれぐれも気をつけていただきたいです。エアコンやクールハックを上手に使いながら、我慢するのではなく、快適に過ごしながら、無理のない範囲で取り組んでみてはいかがでしょうか」
すぐに始められる節電クールハックで、厳しい残暑を賢く乗り切ろう!
<取材・文/清談社 松嶋千春>
【和田 由貴(わだゆうき)】消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。環境カウンセラーや省エネ・脱炭素エキスパートでもあり、2007年には環境大臣より「容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R推進マイスター)」に委嘱されるなど、環境問題にも精通する