今年5月11日、長野県の「イトーヨーカドー アリオ上田店」でサラダを購入した客から、カエルとみられる異物が混入していたと店側に訴えがあった。サラダを製造している会社が調査したところ、材料のサニーレタスにカエルが混入したことが発覚。続いて21日には、長崎県の「丸亀製麺 諫早店」で、テイクアウト用「ピリ辛担々サラダうどん」から生きたカエルが発見された。
【グラフで丸わかり】中食市場は急拡大している! いずれも健康被害はなかったようだが、大手スーパーや有名チェーン店の看板商品だけに、消費者に与える衝撃は大きかった。

総菜や弁当などを持ち帰って食べる「中食」はコロナ禍で一気に成長した。多くの外食産業がデリバリーやテイクアウトをスタートさせて、消費者の選択の幅が広がるなど、市場は飛躍的に拡大。日本惣菜協会の調査によれば、2012年から2021年の10年で総菜の市場規模は約1.5兆円も増額。デリバリー市場も右肩上がりで売上を伸ばしている。 いまやスーパー各社の人気度合いも、総菜や弁当で測られるといっても過言ではない。一昔前に比べて格段にレベルが上がっており、「手作り総菜が自慢」を売りにする店舗は少なくないのだ。詰めただけ、チンしただけで「手作り」 しかし、それらがすべて安全とは言い切れないと指摘するのは、食品ジャーナリストの郡司和夫さんだ。「そもそも“手作り”といっても、どこからどこまでが手作りなのか明確なルールがなく、言葉の意味が極めて曖昧です。最近よくあるのは、大手食品メーカーの工場で作った冷凍総菜を大量に仕入れて、店舗内で揚げたり温めたりしたものをパック詰めして提供しているケース。これも“手作り”とされます」(郡司さん・以下同) スーパーの店頭にはよく“手作り”を謳ったパンも並んでいる。一見すると、生地の生成や発酵まで店内で行っているのかと思いきや、そうではない。「店内にベーカリーなどパンを焼く設備もないのに、“手作りパン”と表示する店舗は珍しくありません。多くの場合、別の工場などで焼かれて冷凍されたロールパンなどを自然解凍しているだけです」 同様に“手作り弁当”も、外部から仕入れたものや簡便調理したものを、店内で詰めているだけのこともある。 食品表示アドバイザーの垣田達哉さんが言う。「まずひとつの問題は、『手作り』が何を指すかということ。揚げものなら、材料のカットや下ごしらえから調理する場合を指すのか、揚げるだけや冷凍食品を温めるだけなのか。現状は、一部の工程だけでもやっていれば、店舗で作っていることになります」 複数の総菜が入る弁当の場合、一部だけを店内で作っているケースもあるという。「例えば、メインのから揚げは自社の店舗内でいちから作っていて、ポテトサラダは外部の業者から仕入れている場合でも、『手作り』というラベルを貼ることは可能です」(垣田さん・以下同) こうした複雑な製造工程から、今回のカエル騒動のカラクリが見えてくる。「野菜や肉や魚などすべての原材料を自社で仕入れて、店舗で調理するというお店は極めて少ない。専門の食品業者から仕入れることもあれば、中規模以上のスーパーだと、自社工場で作って運ぶなど、さまざまなルートがあります。 イトーヨーカドーの場合はサラダを作った工場の製造過程で見逃され、丸亀製麺は仕入れ先の野菜加工工場で見逃されてしまった。販売店は仕入れたもののチェックをまず行わないので、そのまま消費者の手に渡ってしまう。あの事件はどこでも起こりうることです」 コロナ禍で中食が飛躍したことで、事態はより深刻になっている。「消費者の需要が高まる中で、加工工場や製造工場はフル稼働で、慢性的な人手不足です。もちろんどの工場でも異物が混入していないかチェックしていますが、カエルは葉野菜の緑に擬態してしまったのか、目視でも見逃されてしまったのでしょう」 郡司さんも、「消毒などは徹底しているはず」とした上で、こう指摘する。「生きものは金属探知機に検知されませんから、毛虫などの小さな虫や石や砂が入り込んだり、残ったりしてしまうケースは決してゼロとはいえない。 消毒といっても、液につけるだけのところもありますからうまく全体に回らず、まだオタマジャクシの状態だったのが、出荷中に大きくなってアマガエルになってしまった可能性もありますよ」※女性セブン2023年7月13日号
いずれも健康被害はなかったようだが、大手スーパーや有名チェーン店の看板商品だけに、消費者に与える衝撃は大きかった。
総菜や弁当などを持ち帰って食べる「中食」はコロナ禍で一気に成長した。多くの外食産業がデリバリーやテイクアウトをスタートさせて、消費者の選択の幅が広がるなど、市場は飛躍的に拡大。日本惣菜協会の調査によれば、2012年から2021年の10年で総菜の市場規模は約1.5兆円も増額。デリバリー市場も右肩上がりで売上を伸ばしている。
いまやスーパー各社の人気度合いも、総菜や弁当で測られるといっても過言ではない。一昔前に比べて格段にレベルが上がっており、「手作り総菜が自慢」を売りにする店舗は少なくないのだ。
しかし、それらがすべて安全とは言い切れないと指摘するのは、食品ジャーナリストの郡司和夫さんだ。
「そもそも“手作り”といっても、どこからどこまでが手作りなのか明確なルールがなく、言葉の意味が極めて曖昧です。最近よくあるのは、大手食品メーカーの工場で作った冷凍総菜を大量に仕入れて、店舗内で揚げたり温めたりしたものをパック詰めして提供しているケース。これも“手作り”とされます」(郡司さん・以下同)
スーパーの店頭にはよく“手作り”を謳ったパンも並んでいる。一見すると、生地の生成や発酵まで店内で行っているのかと思いきや、そうではない。
「店内にベーカリーなどパンを焼く設備もないのに、“手作りパン”と表示する店舗は珍しくありません。多くの場合、別の工場などで焼かれて冷凍されたロールパンなどを自然解凍しているだけです」
同様に“手作り弁当”も、外部から仕入れたものや簡便調理したものを、店内で詰めているだけのこともある。
食品表示アドバイザーの垣田達哉さんが言う。
「まずひとつの問題は、『手作り』が何を指すかということ。揚げものなら、材料のカットや下ごしらえから調理する場合を指すのか、揚げるだけや冷凍食品を温めるだけなのか。現状は、一部の工程だけでもやっていれば、店舗で作っていることになります」
複数の総菜が入る弁当の場合、一部だけを店内で作っているケースもあるという。
「例えば、メインのから揚げは自社の店舗内でいちから作っていて、ポテトサラダは外部の業者から仕入れている場合でも、『手作り』というラベルを貼ることは可能です」(垣田さん・以下同)
こうした複雑な製造工程から、今回のカエル騒動のカラクリが見えてくる。
「野菜や肉や魚などすべての原材料を自社で仕入れて、店舗で調理するというお店は極めて少ない。専門の食品業者から仕入れることもあれば、中規模以上のスーパーだと、自社工場で作って運ぶなど、さまざまなルートがあります。
イトーヨーカドーの場合はサラダを作った工場の製造過程で見逃され、丸亀製麺は仕入れ先の野菜加工工場で見逃されてしまった。販売店は仕入れたもののチェックをまず行わないので、そのまま消費者の手に渡ってしまう。あの事件はどこでも起こりうることです」
コロナ禍で中食が飛躍したことで、事態はより深刻になっている。
「消費者の需要が高まる中で、加工工場や製造工場はフル稼働で、慢性的な人手不足です。もちろんどの工場でも異物が混入していないかチェックしていますが、カエルは葉野菜の緑に擬態してしまったのか、目視でも見逃されてしまったのでしょう」
郡司さんも、「消毒などは徹底しているはず」とした上で、こう指摘する。
「生きものは金属探知機に検知されませんから、毛虫などの小さな虫や石や砂が入り込んだり、残ったりしてしまうケースは決してゼロとはいえない。
消毒といっても、液につけるだけのところもありますからうまく全体に回らず、まだオタマジャクシの状態だったのが、出荷中に大きくなってアマガエルになってしまった可能性もありますよ」
※女性セブン2023年7月13日号