最近、SNSで、街中で「乗れるスーツケース」に乗る人物の動画が話題になっている。一見すると普通のスーツケースだが、またがって座り、ハンドルについたボタンを操作すると自動で進むことができるという。ブームの兆しを見せるこの乗り物の危険性を専門家が指摘する。
【写真】世界で最も美しい顔1位、BLACKPINK・リサが「乗れるスーツケース」で空港に登場公道は走れないはずだが… 渋谷のセンター街で撮影されたと見られる先の映像では、「乗れるスーツケース」にまたがった女性たちが夜の街をゆっくりと移動する。他にもSNS上には、新宿の歌舞伎町で撮影されたとみられる映像もある。真偽は不明だが、投稿者は乗っているのは外国人観光客だとしている。

子どもと2人乗りする写真も掲載されている(prtimesより) さらに、今年4月には、KPOPアイドルBLACKPINKのメンバー・リサが乗れるスーツケースにまたがって空港に登場したことが話題になった。ファンに向かって手を振りながら、華麗に走行している。新たなブームになっていることは、間違いなさそうだ。 電動モーターが内蔵されており、自動で走行できるという「乗れるスーツケース」は、もちろん本来のスーツケースの用途の通り、荷物を入れて運ぶことも出来る。便利に見えるこの乗り物だが、日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長で株式会社ディ・クリエイト代表の上西一美氏は、危険性を指摘する。「道路交通法上、公道は走れないはずですから、映像に映っている方の乗り方は問題があります。そもそも転倒の危険性が高い乗り物のようなので、たとえ私有地であっても、興味本位で乗ってみて事故を起こす人が出るのではないかと心配です」 実際、「乗れるスーツケース」を販売するAirWheel社のクラウドファンディングサイトには、〈日本国内では本品の公道走行は禁止されております〉と記載がある。転倒の危険性 2022年に発売した乗れるスーツケース「GeeRidecase(ジーライドケース)」を販売する株式会社Glotureの商品紹介によると、価格はおよそ10万円。「スクーターのように乗れる、夢のようなスーツケース」という売り文句だ。 ハンドルの右ボタンで「進行」、左ボタンで「停止」と操作は非常にシンプルで、最大時速は10kmという。「人が歩く時は時速4.7kmくらいですから、このスーツケースの時速10kmというのは早歩きや子どもが走るのと同じくらいです。ものすごくスピードが出るというわけではありませんが、歩いている人を追い抜かすくらいですから、周りの人を避けるなど、注意を払う必要があります」 一見すると、普通のスーツケースに見えるが、それに比べるとタイヤは少し大きいようだ。前に1つ、後ろに2つの計3つの車輪がついている。「タイヤのサイズが非常に小さいので、段差や石などの小さな障害物でも乗り越えられず、転倒する危険性があります。また、重心が高いのでバランスを取るのが難しそうだと思いました。スーツケースにまたがる形になるので仕方がないですが、安全性の面で考えれば、スーツケースを横向きにして、座る部分を広くし、重心を低くした方がいいでしょう」 商品のHPには、大人が子どもを抱える形でスーツケースにまたがり、2人乗りをしている写真まであるが、上西さんは「転倒しやすく危険です。子ども1人が遊びで乗るにしても危ないです」と指摘する。〈一切補償しかねます〉 乗れるスーツケースに乗る人を見かけた際は、周りの人も注意が必要だ。「スピードを上げた状態では急に止まったり、曲がったりすることが難しそうです。歩行者に後ろからぶつかったり、避けきれずに正面衝突したりする可能性もあるでしょう」 さらに、販売サイトには、〈走行は十分に広く、周囲に人や障害物がない状況でご利用下さい。当ストアでは走行に伴い生じた事故・トラブルにつきましては一切補償しかねます〉といった注意書きもある。「気軽な気持ちで乗ってみて、転倒や衝突など大きな事故に繋がる可能性もあり、安全運転を啓蒙する立場からはお勧めできません。一方で、新しく売れる乗り物を作りたいというメーカー側の工夫も分からないではありません。電動キックボードが普及したのも、ヘルメットの着用が努力義務になり、安全性はもとよりスタイリッシュに気軽に乗れるようになったことが大きいと思います。気軽に乗れる電動スーツケースも、新しい乗り物なので一時的に話題になっているようです」デイリー新潮編集部
渋谷のセンター街で撮影されたと見られる先の映像では、「乗れるスーツケース」にまたがった女性たちが夜の街をゆっくりと移動する。他にもSNS上には、新宿の歌舞伎町で撮影されたとみられる映像もある。真偽は不明だが、投稿者は乗っているのは外国人観光客だとしている。
さらに、今年4月には、KPOPアイドルBLACKPINKのメンバー・リサが乗れるスーツケースにまたがって空港に登場したことが話題になった。ファンに向かって手を振りながら、華麗に走行している。新たなブームになっていることは、間違いなさそうだ。
電動モーターが内蔵されており、自動で走行できるという「乗れるスーツケース」は、もちろん本来のスーツケースの用途の通り、荷物を入れて運ぶことも出来る。便利に見えるこの乗り物だが、日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長で株式会社ディ・クリエイト代表の上西一美氏は、危険性を指摘する。
「道路交通法上、公道は走れないはずですから、映像に映っている方の乗り方は問題があります。そもそも転倒の危険性が高い乗り物のようなので、たとえ私有地であっても、興味本位で乗ってみて事故を起こす人が出るのではないかと心配です」
実際、「乗れるスーツケース」を販売するAirWheel社のクラウドファンディングサイトには、〈日本国内では本品の公道走行は禁止されております〉と記載がある。
2022年に発売した乗れるスーツケース「GeeRidecase(ジーライドケース)」を販売する株式会社Glotureの商品紹介によると、価格はおよそ10万円。「スクーターのように乗れる、夢のようなスーツケース」という売り文句だ。
ハンドルの右ボタンで「進行」、左ボタンで「停止」と操作は非常にシンプルで、最大時速は10kmという。
「人が歩く時は時速4.7kmくらいですから、このスーツケースの時速10kmというのは早歩きや子どもが走るのと同じくらいです。ものすごくスピードが出るというわけではありませんが、歩いている人を追い抜かすくらいですから、周りの人を避けるなど、注意を払う必要があります」
一見すると、普通のスーツケースに見えるが、それに比べるとタイヤは少し大きいようだ。前に1つ、後ろに2つの計3つの車輪がついている。
「タイヤのサイズが非常に小さいので、段差や石などの小さな障害物でも乗り越えられず、転倒する危険性があります。また、重心が高いのでバランスを取るのが難しそうだと思いました。スーツケースにまたがる形になるので仕方がないですが、安全性の面で考えれば、スーツケースを横向きにして、座る部分を広くし、重心を低くした方がいいでしょう」
商品のHPには、大人が子どもを抱える形でスーツケースにまたがり、2人乗りをしている写真まであるが、上西さんは「転倒しやすく危険です。子ども1人が遊びで乗るにしても危ないです」と指摘する。
乗れるスーツケースに乗る人を見かけた際は、周りの人も注意が必要だ。
「スピードを上げた状態では急に止まったり、曲がったりすることが難しそうです。歩行者に後ろからぶつかったり、避けきれずに正面衝突したりする可能性もあるでしょう」
さらに、販売サイトには、〈走行は十分に広く、周囲に人や障害物がない状況でご利用下さい。当ストアでは走行に伴い生じた事故・トラブルにつきましては一切補償しかねます〉といった注意書きもある。
「気軽な気持ちで乗ってみて、転倒や衝突など大きな事故に繋がる可能性もあり、安全運転を啓蒙する立場からはお勧めできません。一方で、新しく売れる乗り物を作りたいというメーカー側の工夫も分からないではありません。電動キックボードが普及したのも、ヘルメットの着用が努力義務になり、安全性はもとよりスタイリッシュに気軽に乗れるようになったことが大きいと思います。気軽に乗れる電動スーツケースも、新しい乗り物なので一時的に話題になっているようです」
デイリー新潮編集部