2025年大阪・関西万博で海外パビリオンの建設準備遅れの一因となっている資材価格の高騰や人手不足の影響は、自治体や企業が出展する国内パビリオンや会場整備事業にも波及している。
これまでに入札のやり直しや建設費の上振れが相次ぎ、建設に必要な大阪市への許可申請は28日時点で、国内パビリオン計25施設のうち9件にとどまる。今から申請しても着工は9月下旬以降の見通しで、会場整備費の増額や完成遅れへの懸念は強まっている。
日本国際博覧会協会(万博協会)の石毛博行事務総長は今月28日、大阪の経済団体トップと面談し、国と大阪府市、経済界で3分の1ずつ負担する会場整備費計1850億円について「人件費と資材費の高騰などでいっぱいいっぱいだ」と説明した。石毛氏は、企業による拠出金を確実に集めるよう改めて依頼したという。
苦しい状況の中、入札不成立が相次いでいるのが、各界の著名人がプロデュースし、万博協会が発注する「テーマ館」だ。
8施設のうち、万博協会発注の6施設は資材高騰に施工の難しさが重なり、最初の入札では参加者がなかったり、予定価格内での応札がなかったりした。うち5施設は再入札で契約が成立し、落札価格は当初の予定価格より計13億4千万円上昇。上振れ分はプロデューサーが独自に募る協賛金で賄われる。
契約が成立していない1施設は3回目の入札が行われ、29日時点で結果は公表されていない。残る2施設は「現物協賛」として協賛企業が建設して提供する。
民間パビリオンはパナソニックホールディングス(HD)やNTT、吉本興業HDなど計13の企業・団体が出展する。
大阪府市と経済界が出展する地元館「大阪ヘルスケアパビリオン」も建設費が当初予定から25億円増の99億円に。外観デザインの簡素化や安価な素材への変更などを余儀なくされた。
パビリオン以外の大催事場や迎賓館などでも、入札の不成立や建設費の上振れが発生。会場内のインフラ整備工事では契約額を見直す「スライド条項」の適用が相次いでいる。(山本考志、井上浩平)