北海道八雲町の国道5号で乗客15人を乗せた高速バスとトラックが衝突した事故から25日で1週間を迎えた。双方の運転手と乗客の計5人が亡くなる痛ましい事故は、なぜ起きたのか。真相究明には至っていないが、その要因としてさまざまな可能性が浮かび上がってきた。【金将来、後藤佳怜】
【写真】運転席が大破した高速バス 事故は18日正午ごろに発生。八雲町の食肉処理場に豚を運んでいたトラックと、札幌市から函館市に向かっていた都市間高速バス「高速はこだて号」が衝突し、バスの乗客12人も重軽傷を負った。

バスの運行会社の「北都交通」(札幌市)によると、運行記録計から事故当時のバスは制限速度の50キロ程度で走行していたとみられる。道警は付近を走行していた車のドライブレコーダーの映像から、トラック側に過失があり、対向車線にはみ出してバスに衝突したとみて、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで調べている。 トラックを運転していた梶谷誠運転手(65)=森町=が勤務していた養豚会社「日本クリーンファーム」の吉原洋明社長は事故後、「(梶谷運転手に)長時間労働や過重労働にあたるような労働時間はなかった。持病があったとも聞いていない」と説明した。司法解剖の結果、死因は運転中の心臓発作などではなく、事故により全身を強く打ったことによる外傷性ショックだったことが判明。ただ、事故の直接的な原因は分かっていない。 道警は22日、トラックを捜索し、ドライブレコーダーなどを押収した。それまでにも梶谷運転手の勤務先や自宅を家宅捜索しており、トラックの速度など事故直前の状況や、運行管理の実態などを調べている。 一方で、北海道特有の道路事情が事故を誘発した可能性があることも明らかとなってきた。 現場は片側1車線で、緩やかにカーブする見通しのよい道路だったが、長い道なりが続き、信号は少なく、車線の幅は狭い。ある道警幹部は「北海道は土地が広く都市間の距離が長いので、ゆるやかで単調な道が多い。今回の事故現場もその一つ。脇見や居眠りなどのリスクは当然高まる」と指摘する。 道開発局や八雲町によると、事故現場を含む、八雲町内の国道約14キロの区間は、2013年に同局が「事故危険区間」に選定した区間だった。また、道路の安全確保を求める地元町内会からは03年以降、道路の拡幅や信号機の設置、中央分離帯の設置などを求める要望書が、国や道警に計29件寄せられていたという。 だが、事故現場から前後500メートルの区間では過去10年間、死亡事故や車線を逸脱する事故の発生はなく、対策は未着手だった。道開発局は今後の対策について「今回の事故を踏まえて、自治体や警察など、関係機関と協議していきたい」と話している。
事故は18日正午ごろに発生。八雲町の食肉処理場に豚を運んでいたトラックと、札幌市から函館市に向かっていた都市間高速バス「高速はこだて号」が衝突し、バスの乗客12人も重軽傷を負った。
バスの運行会社の「北都交通」(札幌市)によると、運行記録計から事故当時のバスは制限速度の50キロ程度で走行していたとみられる。道警は付近を走行していた車のドライブレコーダーの映像から、トラック側に過失があり、対向車線にはみ出してバスに衝突したとみて、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで調べている。
トラックを運転していた梶谷誠運転手(65)=森町=が勤務していた養豚会社「日本クリーンファーム」の吉原洋明社長は事故後、「(梶谷運転手に)長時間労働や過重労働にあたるような労働時間はなかった。持病があったとも聞いていない」と説明した。司法解剖の結果、死因は運転中の心臓発作などではなく、事故により全身を強く打ったことによる外傷性ショックだったことが判明。ただ、事故の直接的な原因は分かっていない。
道警は22日、トラックを捜索し、ドライブレコーダーなどを押収した。それまでにも梶谷運転手の勤務先や自宅を家宅捜索しており、トラックの速度など事故直前の状況や、運行管理の実態などを調べている。
一方で、北海道特有の道路事情が事故を誘発した可能性があることも明らかとなってきた。
現場は片側1車線で、緩やかにカーブする見通しのよい道路だったが、長い道なりが続き、信号は少なく、車線の幅は狭い。ある道警幹部は「北海道は土地が広く都市間の距離が長いので、ゆるやかで単調な道が多い。今回の事故現場もその一つ。脇見や居眠りなどのリスクは当然高まる」と指摘する。
道開発局や八雲町によると、事故現場を含む、八雲町内の国道約14キロの区間は、2013年に同局が「事故危険区間」に選定した区間だった。また、道路の安全確保を求める地元町内会からは03年以降、道路の拡幅や信号機の設置、中央分離帯の設置などを求める要望書が、国や道警に計29件寄せられていたという。
だが、事故現場から前後500メートルの区間では過去10年間、死亡事故や車線を逸脱する事故の発生はなく、対策は未着手だった。道開発局は今後の対策について「今回の事故を踏まえて、自治体や警察など、関係機関と協議していきたい」と話している。