既婚女性500人にアンケートをとった調査によると「今の夫と結婚したことを後悔したことはありますか? 」という質問になんと過半数(53.8%)の女性が「はい」と答えている。
結婚を後悔してる理由は人それぞれだが、多くの妻が後悔の念を抱え、ある者は夫婦の形を維持し、またある者は密かに離婚の準備を進めている。
前編記事で紹介したノブヨさん(45歳、仮名=以下同)も、夫について思うところがある一人だ。
彼女と夫との溝が深まることになった、ノブヨさん一家と義父母の食事会の様子から改めて見ていこう。
ノブヨさんの長女が小学校に入学したころのこと。義母の発案で、ノブヨさん一家と義父母で入学祝いとして外食しようということになった。
「その席で、些細なことから義母が激昂、義父の昔の浮気を暴いたんです。『あんな若い事務所の女に手をつけて、あげく囲って』とやけに生々しかった。義父が私や夫を気にして制しても『サトルだって知ってたわよ、ねえ。この際だからノブヨさんにも知ってもらえばいいのよ』と言い出した。『この人、彼女が病気になったとき、私に看病させたのよ。そのときにはもう関係があったのに。あとから知った私がどんな気持ちだったかわかる?』と義母は当時を思い出したのか号泣しはじめて。
子どもたちは何が起こったのかわからない。いつも甘いおばあちゃんが、泣いたり怒ったりしているのを見て怖くなったんでしょうね。ふたりともうつむいてしまって。食事会はさんざんでした」
帰宅すると夫が沈んでいた。薄々気づいていたし、子どものころ両親が大ゲンカしていたのは覚えているが、父が自分の会社の事務員を囲っていたとは知らなかったようだ。
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「お父さんとは反りが合わないところがあって避けていたけど、ああいうお母さんだから別の女性に逃げたのかもしれないなあと言っていました。私は逆に、お義母さんの寂しさやつらさがわかって、長男に全力で依存するのもしかたがないのかなと思った。
私は他人だし、夫とは意見が違うのもしかたがないのに、夫は『おまえにオレの気持ちがわかるもんか』と逆ギレしていた。どうして私が怒られなければいけないのかわからない。親のことは親のこととして、私たちはこの家族を守っていこうねと言ったのですが、夫は『家族なんて信じられない。家族なんて作らなければよかった』って。その言葉で一気に夫への信頼感がなくなりました」
それまで何があっても、最低限、夫のことは信頼しているつもりだった。義母と自分の確執から逃げていても、それでも人として信頼したい、信頼していると思い込んでいた。だが、夫は「家族」そのものを否定した。これだけはノブヨさんは許せなかった。
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「それでも私はなんとか夫と寄り添っていきたいと思っていました。でも夫はそれ以来、家族に温かい気持ちをもてなくなっていったように見えた。義母が病気で入院したときも、ほとんど興味を示さなかった。さすがに義母がかわいそうで、私がせっせと見舞いに行きましたが、義母もまったく変わらなかった。『あなたにめんどう見てもらうなんて、私も落ちぶれたものよね』と嫌味を言ったり、『どうしてサトルが来ないの?』と文句を言ったり」
あっけなく家族の形が壊れていったとノブヨさんは言う。ただ、考えてみれば夫の実家は元々壊れていたも同然で、ノブヨさんと夫も根本的なところで結びついていたわけではないのかもしれないと彼女はつぶやいた。
「娘は今年18歳、息子は15歳ですから、あと数年で子育てからも解放される。娘の受験にもほとんど興味を示さない夫は、もういらない。そう思っています。息子が成人したら離婚するつもり。80代に入った義父母は今も元気ですが、彼らが病気になる前に私は逃げ出すつもりです」
現状、すでに家庭内別居状態のノブヨさんとサトルさん。好きだと思った人と「いい家庭」が作れなかったことを子どもたちには申し訳ないと考えているとノブヨさんは言う。
「子どもたちには、結婚なんてしなくていい。自分の好きなことを見つけてその道でがんばってほしい。結婚はオプション程度に考えておけばいいと言っています。義父母はともかく、夫とは気持ちが通じ合う夫婦になりたかったですね。もう遅いですけど」
先々の経済的見通しは明るくない。それでも子どもたちと同時に自分も自立していきたい。「家」に縛られずに羽ばたいていきたい。ノブヨさんはそう考えている。
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育ちも価値観も違う相手と「いい家庭」を築くのは男女問わず難しい。
せめて自分自身に後悔しない人生を送れるようために、「家」に対する過剰な期待を捨てることから始めるのも一つかもしれない。