利用者は年々増えて、いまや大学生の約半数が利用しているという「奨学金」。奨学金のおかげで夢を追いかけられるけれど、卒業が迫る中で返済の不安も募る・・・今の大学生が抱える「奨学金」事情とは。フジテレビの宮司愛海キャスターが、ある女子学生を取材した。2つの奨学金を利用、アルバイトを掛け持ち…大学4年生の1日に密着岩手出身の大学4年生、前川優美さん(21)。週に5日、アルバイトを掛け持ちし、生活費を稼ぎながら大学に通っている。節約のために都内のシェアハウスに住み、家賃は友人と折半し、4万3千円。

宮司愛海 キャスター:金銭の仕送りはない?大学4年生 前川優美さん(21):基本はもう、出来るだけ自分で出来るようにして。アルバイト代だけでは学費まではまかなえず、2種類の奨学金を利用しているという。そんな前川さんの1日に、密着した。まず午前10時、1つ目のアルバイト先である飲食店へ。ここでは5時間働き、終わったのは午後3時。お昼ご飯も食べずに、足早に大学へ向かう。この日は、教授に卒業論文のテーマを相談する日だ。教授:またでもこの後あるんだよね?前川さん:そうですね。ちゃちゃっと。教授:じゃあちょっと、前川さんバイトがあるから先に。教授も、前川さんがこの後もバイトを控えているのを考慮し、順番を早めにしてくれた。前川さんも「一人でやってるとやっぱ行き詰まっちゃったりとか。(相談して)明確になるので、すごく助かっています」と話す。いったん家で自炊 その後2つめのアルバイトへそして午後4時半、大学の次に向かうのは…前川さん:このあとはいったんお家に帰って、ちょっとごはん。夜ご飯食べて、それから午後7時から銭湯に出勤します。自宅に戻って早めの夕食。なるべく自炊を心がけているという。前川さん:やっぱり自炊して、食費を節約するのもそうですし。(家で)朝食べて、夜夕方に食べてっていう感じですかね。夕食を終えると、すぐ2つ目のアルバイト先へ。次は近所の銭湯だ。終わったのは、日付が回った午前0時15分。前川さん:(バイト先で)お風呂は入れるので、お風呂入って、そのまま自宅に帰りたいと思います。水道代とかかかっちゃうじゃないですか。そういうのもすごく助かっています。アルバイト先の銭湯で入浴をすまし、水道代を節約しているという。この日は学業の合間に、約10時間も働いた。待ち受ける13年間の返済 夢か就職か葛藤も学校に通いながら2つのアルバイトを掛け持ちしているが、その目的は、生活費を稼ぐためだけではなく、大きな夢のためでもあった。宮司キャスター:これからやってみたいこと、今後の夢は?前川さん:私はゲストハウスっていう場所に興味があって。過疎化が進んでいて、空き家が多くなっているじゃないですか。そういう空き家をリフォームして、地域を盛り上げることにすごく興味がありますね。夢を実現するために、お金をためて、全国各地のゲストハウスを自分の目で見て回っているという。大学卒業まで、あと10カ月。将来への期待が高まる一方で、不安もある。それが、奨学金の返済だ。前川さん:(奨学金を)いざ返さなければいけないってことを考えると、不安はありますね。それを考えると、わーって、もう今から背筋がぞわぞわしますけど。2種類の奨学金で、合わせて約600万円を借りている前川さんの場合、来年4月から始まる返済は月4万円ほど。それが約13年続く。宮司キャスター:月々お金を返さなければいけないっていうのが、何かのハードルになったりは?前川さん:今できる夢ってなんだろう、今自分が出来ることが、就職なのか、ちょっと頑張ってみるのかっていうのを考える。そこは自分で自分を抑えてるところは正直ある。すぐに自分の夢を追いかけるか、それとも奨学金の返済のために就職するかで悩んでいるという。奨学金のおかげで上京することができ、後悔はしていないというが・・・。前川さん:(大学進学せず)就職するっていう将来もあったかもしれないですし。それに葛藤してる友達とか同世代とか多いと思うので、同じ悩みを持ってる人は多いんじゃないかと思う。奨学金で進学が…夢追うハードルに? 問われる在り方前川さんの場合は2つの貸与型の奨学金を使用し、4年間で約600万円を借りた(内訳:日本学生支援機構 月6万4000円 +岩泉町奨学生 月6万円 → 4年間で計595万2000千円)。来年から返済は月4万円が始まる。番組では、奨学金の在り方について議論した。榎並大二郎 キャスター:13年間でしょ。そうなると何か就職しなきゃとか、転職もなかなか考えられなくなるし。そういう意味では制限されてしまうなとは思う。宮司 キャスター:前川さんのお話を聞き、夢を追い求めたい気持ちもあるけれど、現実的に大丈夫か不安がある、という葛藤が手に取るようにわかった。私自身も2つの奨学金を利用し、それがなければ今の自分がなかったという意味では借りて本当に良かった。けれど大学4年生の時、4年間でいくら借りたかという明細書を見て、300万円以上を借りたと改めて現実を突きつけられて、これから先大丈夫かなと不安があったのを思い出す。奨学金の返済が、夢を追いかけるハードルにならないでほしいと改めて感じた。社会学者・慶応義塾大学SFC研究所上席研究員:古市憲寿さん給付型を増やしましょうとか、大学をいっそ無償化しましょうかとか、色々と議論があると思う。でも同じ18歳でも、もう働いて税金を納めている人もいる。その中で、大学に行くというだけで、全員に対して授業料無料というのはちょっと同じ18歳で比べてみてもアンフェアではないかとは思う。一方で、大学は未来を広げてくれる場所というか。大学で夢を見つけたり、新しい人生を見つけるチャンスは、どんな家に生まれても閉ざすべきではないと思う。大学などに気楽に行ける状況というのは悪くないと思う。(「イット!」5月30日放送より)
利用者は年々増えて、いまや大学生の約半数が利用しているという「奨学金」。奨学金のおかげで夢を追いかけられるけれど、卒業が迫る中で返済の不安も募る・・・今の大学生が抱える「奨学金」事情とは。
フジテレビの宮司愛海キャスターが、ある女子学生を取材した。
岩手出身の大学4年生、前川優美さん(21)。
週に5日、アルバイトを掛け持ちし、生活費を稼ぎながら大学に通っている。
節約のために都内のシェアハウスに住み、家賃は友人と折半し、4万3千円。
宮司愛海 キャスター:金銭の仕送りはない?
大学4年生 前川優美さん(21):基本はもう、出来るだけ自分で出来るようにして。
アルバイト代だけでは学費まではまかなえず、2種類の奨学金を利用しているという。そんな前川さんの1日に、密着した。
まず午前10時、1つ目のアルバイト先である飲食店へ。ここでは5時間働き、終わったのは午後3時。
お昼ご飯も食べずに、足早に大学へ向かう。この日は、教授に卒業論文のテーマを相談する日だ。
教授:またでもこの後あるんだよね?
前川さん:そうですね。ちゃちゃっと。
教授も、前川さんがこの後もバイトを控えているのを考慮し、順番を早めにしてくれた。前川さんも「一人でやってるとやっぱ行き詰まっちゃったりとか。(相談して)明確になるので、すごく助かっています」と話す。
そして午後4時半、大学の次に向かうのは…
前川さん:このあとはいったんお家に帰って、ちょっとごはん。夜ご飯食べて、それから午後7時から銭湯に出勤します。
自宅に戻って早めの夕食。なるべく自炊を心がけているという。
前川さん:やっぱり自炊して、食費を節約するのもそうですし。(家で)朝食べて、夜夕方に食べてっていう感じですかね。
夕食を終えると、すぐ2つ目のアルバイト先へ。次は近所の銭湯だ。終わったのは、日付が回った午前0時15分。
前川さん:(バイト先で)お風呂は入れるので、お風呂入って、そのまま自宅に帰りたいと思います。水道代とかかかっちゃうじゃないですか。そういうのもすごく助かっています。
アルバイト先の銭湯で入浴をすまし、水道代を節約しているという。
この日は学業の合間に、約10時間も働いた。
学校に通いながら2つのアルバイトを掛け持ちしているが、その目的は、生活費を稼ぐためだけではなく、大きな夢のためでもあった。
宮司キャスター:これからやってみたいこと、今後の夢は?
前川さん:私はゲストハウスっていう場所に興味があって。過疎化が進んでいて、空き家が多くなっているじゃないですか。そういう空き家をリフォームして、地域を盛り上げることにすごく興味がありますね。
夢を実現するために、お金をためて、全国各地のゲストハウスを自分の目で見て回っているという。大学卒業まで、あと10カ月。将来への期待が高まる一方で、不安もある。それが、奨学金の返済だ。
前川さん:(奨学金を)いざ返さなければいけないってことを考えると、不安はありますね。それを考えると、わーって、もう今から背筋がぞわぞわしますけど。
2種類の奨学金で、合わせて約600万円を借りている前川さんの場合、来年4月から始まる返済は月4万円ほど。それが約13年続く。
宮司キャスター:月々お金を返さなければいけないっていうのが、何かのハードルになったりは?
前川さん:今できる夢ってなんだろう、今自分が出来ることが、就職なのか、ちょっと頑張ってみるのかっていうのを考える。そこは自分で自分を抑えてるところは正直ある。
すぐに自分の夢を追いかけるか、それとも奨学金の返済のために就職するかで悩んでいるという。奨学金のおかげで上京することができ、後悔はしていないというが・・・。
前川さん:(大学進学せず)就職するっていう将来もあったかもしれないですし。それに葛藤してる友達とか同世代とか多いと思うので、同じ悩みを持ってる人は多いんじゃないかと思う。
前川さんの場合は2つの貸与型の奨学金を使用し、4年間で約600万円を借りた(内訳:日本学生支援機構 月6万4000円 +岩泉町奨学生 月6万円 → 4年間で計595万2000千円)。来年から返済は月4万円が始まる。
番組では、奨学金の在り方について議論した。
榎並大二郎 キャスター:13年間でしょ。そうなると何か就職しなきゃとか、転職もなかなか考えられなくなるし。そういう意味では制限されてしまうなとは思う。
宮司 キャスター:前川さんのお話を聞き、夢を追い求めたい気持ちもあるけれど、現実的に大丈夫か不安がある、という葛藤が手に取るようにわかった。私自身も2つの奨学金を利用し、それがなければ今の自分がなかったという意味では借りて本当に良かった。けれど大学4年生の時、4年間でいくら借りたかという明細書を見て、300万円以上を借りたと改めて現実を突きつけられて、これから先大丈夫かなと不安があったのを思い出す。奨学金の返済が、夢を追いかけるハードルにならないでほしいと改めて感じた。
社会学者・慶応義塾大学SFC研究所上席研究員:古市憲寿さん給付型を増やしましょうとか、大学をいっそ無償化しましょうかとか、色々と議論があると思う。でも同じ18歳でも、もう働いて税金を納めている人もいる。その中で、大学に行くというだけで、全員に対して授業料無料というのはちょっと同じ18歳で比べてみてもアンフェアではないかとは思う。一方で、大学は未来を広げてくれる場所というか。大学で夢を見つけたり、新しい人生を見つけるチャンスは、どんな家に生まれても閉ざすべきではないと思う。大学などに気楽に行ける状況というのは悪くないと思う。
(「イット!」5月30日放送より)