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「二度とこのような事態が起こることのないよう、新たな体制で新たな警護を行うために人心一新を図る」
2022年8月25日、警察庁の中村格長官(当時)は安倍晋三元首相の銃撃事件を受けて、記者会見で淡々とこう述べ、引責辞任する意向を明かした。テレビカメラの前で見せた表情には一切変化は見られなかったが、「退席時のご様子は明らかに悔しそうでした」(警察関係者)という。中村前長官は「警護の在り方を抜本的に見直し、国家公安委員会に辞職を願い出た」とした。辞任は翌26日の閣議ですんなりと了解されている。事件を巡っては、警察キャリアの鬼塚友章奈良県警本部長(当時)も辞職に追い込まれた。
安倍元首相の銃撃現場 時事通信社
警察庁警備局の課長級ポスト経験者はこう語る。
「警察内部では政治家や海外からの賓客といった要人の警護体制について検証が行われることとなりました。当然、天皇陛下や皇族方の警護、いわゆる『警衛』の体制についてはどうなのかという点も、大きな不安材料とみなされたことは言うまでもありません。まさにその再検証が、現在進行形で行われています」
元首相の暗殺という事態に警察トップが引責辞任に追い込まれるのは当然のことだろう。だが、今年4月15日には岸田文雄首相が和歌山市内の応援演説予定地で爆発物を投げつけられる事件も発生。警護の困難さが改めて浮き彫りとなった。
万が一、皇室の方々が犠牲となれば、警察幹部が1人や2人詰め腹を切らされるだけでは済まないであろうことは、想像に難くない。結果が重大であれば、数多くの公僕の「警察人生が終わる」(同前)のだ。
天皇や皇族を標的にしたテロ行為は少なくない。歴史的にみれば大正12(1923)年、当時の皇太子だった裕仁親王(のちの昭和天皇)が狙撃された「虎ノ門事件」。弾は外れ、裕仁親王は無事だったが、時の山本権兵衛内閣は総辞職を余儀なくされた。また、昭和50(1975)年7月17日には、上皇さま(当時皇太子)が戦後初の沖縄訪問で糸満市のひめゆりの塔に献花しようと歩み寄られたところで、地下壕に潜んでいた新左翼系活動家の男2人が火炎瓶を投げつけた(ひめゆりの塔事件)。実は、近年でもこうしたテロ未遂は繰り返されている。
平成4(1992)年10月4日、山形県総合運動公園陸上競技場で開催された第47回国民体育大会(国体)の開会式に出席されていた上皇さま(当時天皇)がお言葉を述べられていたところ、新左翼系活動家の男が「天皇は帰れ」「天皇訪中反対」などと叫んでグラウンドからロイヤルボックスにいた上皇ご夫妻に向けて発煙筒を投げつけた。発煙筒は上皇ご夫妻には届かずグラウンド内に落ちたため、ご夫妻には怪我もなく無事だった。男はすぐに取り押さえられたが、警衛体制の不備が問われ、山形県警防犯部長が辞表を提出している。
平成15(2003)年7月4日早朝には、北海道富良野市の国道38号で、上皇ご夫妻(当時天皇皇后)の車列とすれ違った軽自動車が対向車線からUターンをして、猛スピードで後方から急接近。皇宮護衛官が運転する白バイ3台が両車両の間に割り込むなどして進路を塞いだが、1台が犯行車両と接触し弾みで上皇ご夫妻の車のフェンダーに接触した。軽自動車を運転していた男は公務執行妨害容疑の現行犯で逮捕された。ご夫妻は無事だったが、この際も処分が検討された。
警衛警備の一翼を担う皇宮警察本部での勤務経験がある元警察キャリアが振り返る。
「最終的には白バイ隊が接近を阻止することに成功していたことから、警察庁の佐藤英彦長官(当時)は記者会見で『責任を追及すべき怠慢は認められなかった』とコメントし、警察官への処分を見送ることを明らかにした。だが、警衛体制を見直す必要があると提言しています」
ちなみに、ひめゆりの塔事件では、上皇さまは処分を希望しない旨を警察サイドに伝えられたが、沖縄県警本部長が詰め腹を切らされることとなって減給処分を下され、警察庁警備局の警備課長が辞表を提出した。実被害がなくとも、警察幹部が責任を問われるのが、警衛体制の不備の“落とし前”の付け方なのである。
警視庁警備部の元幹部は皇族警備の本質についてこう述べる。
「警察法施行令に基づいて警衛についての規則を定めた国家公安委員会規則の『警衛要則』で、警衛は『天皇及び皇族の御身辺の安全を確保するとともに、歓送迎者の雑踏等による事故を防止することを本旨とする』と規定されていて、その主体はあくまでも『都道府県警察』で、『御身辺の直近の護衛及び御用邸内の警備は(中略)原則として皇宮警察が担当する』となっています。
お代替わりに伴い、秋篠宮さまが皇位継承順位第1位の皇嗣に就任されたことで、秋篠宮家には秋篠宮さまと長男で皇位継承順位第2位の悠仁さまのお二方がおられる状況になりました。現在、皇位継承権を有するのはお二方に加え、上皇さまの弟に当たる常陸宮さまのお三方のみ。当然、秋篠宮家の警衛体制強化は喫緊の課題となっているのです」 だが近年、その秋篠宮家をめぐって、いくつかの事件や事故が発生してしまっている。それが警衛の現状なのだ。宮家の内情をよく知る元皇宮護衛官が説明する。悠仁さま「追突事件」の重み「2016年11月には神奈川県相模原市緑区の中央自動車道下り線相模湖インターチェンジ付近で、山梨県へ山登りに向かう途中だった秋篠宮妃紀子さまと、当時まだ10歳だった悠仁さまが乗られるワゴン車が、前を走る乗用車に追突する事故が発生しました。当時、現場は渋滞中で、追突されたのは最後尾で停車していた車でした。お二方に怪我はなく無事でしたが、この際も処分すべきか怠慢の有無が検証されたようです。 ただ、実害はなく、当時の秋篠宮家はあくまでまだ一宮家だったということもあり、処分が行われることはなかった。だが、そもそもの警衛体制の脆弱さを露呈した事故でした。将来の天皇が乗車された車が追突事故を起こすなど言語道断です」 皇室の方々が車で移動される際、天皇皇后両陛下や上皇ご夫妻の場合は白バイなどが先導し、後方に警備の警察車両が付いて信号も全てが青信号になるが、他の皇族方には警察車両1台が後方に付くだけで、一般車と同様に赤信号で停車する。事故当時、悠仁さまの車両は一般車両と同じ扱いだったのだ。 お代替わり直前の2019年4月には、無職の男が、悠仁さまが通われていたお茶の水女子大学附属中学の校門付近の監視カメラの配線を切り、工事業者を装ったヘルメット姿で校舎に侵入。無人だった教室に入り、包丁2本を両先端に固定した棒を悠仁さまの机の上に置くという事件が起きた。これが新約聖書や人気アニメ「エヴァンゲリオン」に登場する「ロンギヌスの槍」に似ていると警察内部でも話題になった。 その後、警視庁に逮捕され、建造物侵入や銃刀法違反などの罪に問われた男は、東京地裁で懲役1年6月執行猶予4年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡されている。判決理由で東京地裁の楡井英夫裁判長は、「皇族制度に対する独自の関心について、自分の行為を誇示して世間に注目されたいという独り善がりの考えから犯行に及んだ」と指摘した。小室圭さん実家の警備計画 また昨年6月25日には、宮内庁に包丁1本などをレターパックで送り付け、職員の業務を妨害したとして皇宮警察本部と警視庁が愛知県在住のアルバイトの男を威力業務妨害容疑で逮捕している。同封された便箋には支離滅裂な内容が書かれていたとされるが、記載内容には秋篠宮家周辺に対する批判と受け取れるものもあったという。「ほんの一握りの市民によるものだとは思うが、秋篠宮家の婚約内定問題や皇位継承問題に対する批判の声はこんなにも激しいものだったのか」(前出・警察関係者) 平成の初期に行われた大喪の礼や即位の礼、大嘗祭に際しては、極左暴力集団(新左翼系過激派)によるゲリラ・テロ対策が大きな国家的課題となった。そのため全国警察を指導する立場の警察庁が警衛の陣頭指揮に当たった経緯がある。 しかし、平成13(2001)年9月11日の米同時多発テロ事件を契機に、我が国の警備・公安警察も警戒対象を極左暴力集団のゲリラ・テロ対策から国際テロ対策へと、シフトチェンジを余儀なくされた。 ただ、安倍元首相の銃撃という重大テロ事件の発生を受け、警察庁は昨年11月、皇室や要人の警衛警護を指導・指揮する専従課を新設し、人員を拡大して体制を強化する必要性に迫られた。その結果、警察庁では警備運用部内で警衛室と警護室を独立させ、警衛警護対策に専従する新しい警備第二課として、人員を50人に拡充。警備第二課には警衛指導室と警護指導室を置き、災害対策などを担当していた従来の警備第二課を警備第三課に名称変更している。「『警衛要則』には、皇室の方々のどなたをお守りするかといった細かい規定はありません。法令によって警護対象として明記されている人物は限られているのです。『警護要則』では内閣総理大臣と国賓だけが明記されている。ただ『その身辺に危害が及ぶことが国の公安に係ることとなるおそれがある者として警察庁長官が定める者』という規定があり、警護細則で『衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、国務大臣、公賓・公式実務訪問賓客、その他警察庁警備局長が定める者』となっています」(前出・警視庁警備部元幹部) 大臣や有力政治家の自宅前にポリスボックスが置かれているケースがあるのも、この規定に基づいている。 秋篠宮家の長女・小室眞子さんとの婚約内定期間中、横浜市内に住む圭さんの実母の警備計画も存在した。 地元警察署関係者はこう語る。「『内親王の婚約内定者周辺者』ということで、警衛を担当する神奈川県警公安第二課の警衛担当者が差配していました。が、実家前にポリスボックスが置かれる根拠となったのは、警衛要則ではなく警護要則の細則にある『その他警察庁警備局長が定める者』だったようです」宮内庁・西村長官はこう答えた 小室さん宅のようにフレキシブルな警備警衛計画が可能ならば、“将来の天皇”2人を擁している秋篠宮家こそ、トップダウンで手厚くすべきではないのか。自身が警察庁警備局長や警視総監を歴任した、宮内庁の西村泰彦長官は今回、筆者の取材にこう答えた。「お代替わりがあって以降、警視庁から秋篠宮家の警備体制強化の申し入れがあることは事実。悠仁さまのご身辺が手薄にならないようにしたいようです」 西村長官は慎重に言葉を選んで答えた。そもそも、なぜ悠仁さま周辺の警衛警備体制が手薄だったのか。そこには皇室特有の事情がある。◆大島真生氏の「秋篠宮家を守るのは難しい」は「文藝春秋」2023年7月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(大島 真生/文藝春秋 2023年7月号)
お代替わりに伴い、秋篠宮さまが皇位継承順位第1位の皇嗣に就任されたことで、秋篠宮家には秋篠宮さまと長男で皇位継承順位第2位の悠仁さまのお二方がおられる状況になりました。現在、皇位継承権を有するのはお二方に加え、上皇さまの弟に当たる常陸宮さまのお三方のみ。当然、秋篠宮家の警衛体制強化は喫緊の課題となっているのです」
だが近年、その秋篠宮家をめぐって、いくつかの事件や事故が発生してしまっている。それが警衛の現状なのだ。宮家の内情をよく知る元皇宮護衛官が説明する。
「2016年11月には神奈川県相模原市緑区の中央自動車道下り線相模湖インターチェンジ付近で、山梨県へ山登りに向かう途中だった秋篠宮妃紀子さまと、当時まだ10歳だった悠仁さまが乗られるワゴン車が、前を走る乗用車に追突する事故が発生しました。当時、現場は渋滞中で、追突されたのは最後尾で停車していた車でした。お二方に怪我はなく無事でしたが、この際も処分すべきか怠慢の有無が検証されたようです。
ただ、実害はなく、当時の秋篠宮家はあくまでまだ一宮家だったということもあり、処分が行われることはなかった。だが、そもそもの警衛体制の脆弱さを露呈した事故でした。将来の天皇が乗車された車が追突事故を起こすなど言語道断です」
皇室の方々が車で移動される際、天皇皇后両陛下や上皇ご夫妻の場合は白バイなどが先導し、後方に警備の警察車両が付いて信号も全てが青信号になるが、他の皇族方には警察車両1台が後方に付くだけで、一般車と同様に赤信号で停車する。事故当時、悠仁さまの車両は一般車両と同じ扱いだったのだ。
お代替わり直前の2019年4月には、無職の男が、悠仁さまが通われていたお茶の水女子大学附属中学の校門付近の監視カメラの配線を切り、工事業者を装ったヘルメット姿で校舎に侵入。無人だった教室に入り、包丁2本を両先端に固定した棒を悠仁さまの机の上に置くという事件が起きた。これが新約聖書や人気アニメ「エヴァンゲリオン」に登場する「ロンギヌスの槍」に似ていると警察内部でも話題になった。
その後、警視庁に逮捕され、建造物侵入や銃刀法違反などの罪に問われた男は、東京地裁で懲役1年6月執行猶予4年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡されている。判決理由で東京地裁の楡井英夫裁判長は、「皇族制度に対する独自の関心について、自分の行為を誇示して世間に注目されたいという独り善がりの考えから犯行に及んだ」と指摘した。
また昨年6月25日には、宮内庁に包丁1本などをレターパックで送り付け、職員の業務を妨害したとして皇宮警察本部と警視庁が愛知県在住のアルバイトの男を威力業務妨害容疑で逮捕している。同封された便箋には支離滅裂な内容が書かれていたとされるが、記載内容には秋篠宮家周辺に対する批判と受け取れるものもあったという。
「ほんの一握りの市民によるものだとは思うが、秋篠宮家の婚約内定問題や皇位継承問題に対する批判の声はこんなにも激しいものだったのか」(前出・警察関係者)
平成の初期に行われた大喪の礼や即位の礼、大嘗祭に際しては、極左暴力集団(新左翼系過激派)によるゲリラ・テロ対策が大きな国家的課題となった。そのため全国警察を指導する立場の警察庁が警衛の陣頭指揮に当たった経緯がある。 しかし、平成13(2001)年9月11日の米同時多発テロ事件を契機に、我が国の警備・公安警察も警戒対象を極左暴力集団のゲリラ・テロ対策から国際テロ対策へと、シフトチェンジを余儀なくされた。 ただ、安倍元首相の銃撃という重大テロ事件の発生を受け、警察庁は昨年11月、皇室や要人の警衛警護を指導・指揮する専従課を新設し、人員を拡大して体制を強化する必要性に迫られた。その結果、警察庁では警備運用部内で警衛室と警護室を独立させ、警衛警護対策に専従する新しい警備第二課として、人員を50人に拡充。警備第二課には警衛指導室と警護指導室を置き、災害対策などを担当していた従来の警備第二課を警備第三課に名称変更している。「『警衛要則』には、皇室の方々のどなたをお守りするかといった細かい規定はありません。法令によって警護対象として明記されている人物は限られているのです。『警護要則』では内閣総理大臣と国賓だけが明記されている。ただ『その身辺に危害が及ぶことが国の公安に係ることとなるおそれがある者として警察庁長官が定める者』という規定があり、警護細則で『衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、国務大臣、公賓・公式実務訪問賓客、その他警察庁警備局長が定める者』となっています」(前出・警視庁警備部元幹部) 大臣や有力政治家の自宅前にポリスボックスが置かれているケースがあるのも、この規定に基づいている。 秋篠宮家の長女・小室眞子さんとの婚約内定期間中、横浜市内に住む圭さんの実母の警備計画も存在した。 地元警察署関係者はこう語る。「『内親王の婚約内定者周辺者』ということで、警衛を担当する神奈川県警公安第二課の警衛担当者が差配していました。が、実家前にポリスボックスが置かれる根拠となったのは、警衛要則ではなく警護要則の細則にある『その他警察庁警備局長が定める者』だったようです」宮内庁・西村長官はこう答えた 小室さん宅のようにフレキシブルな警備警衛計画が可能ならば、“将来の天皇”2人を擁している秋篠宮家こそ、トップダウンで手厚くすべきではないのか。自身が警察庁警備局長や警視総監を歴任した、宮内庁の西村泰彦長官は今回、筆者の取材にこう答えた。「お代替わりがあって以降、警視庁から秋篠宮家の警備体制強化の申し入れがあることは事実。悠仁さまのご身辺が手薄にならないようにしたいようです」 西村長官は慎重に言葉を選んで答えた。そもそも、なぜ悠仁さま周辺の警衛警備体制が手薄だったのか。そこには皇室特有の事情がある。◆大島真生氏の「秋篠宮家を守るのは難しい」は「文藝春秋」2023年7月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(大島 真生/文藝春秋 2023年7月号)
平成の初期に行われた大喪の礼や即位の礼、大嘗祭に際しては、極左暴力集団(新左翼系過激派)によるゲリラ・テロ対策が大きな国家的課題となった。そのため全国警察を指導する立場の警察庁が警衛の陣頭指揮に当たった経緯がある。
しかし、平成13(2001)年9月11日の米同時多発テロ事件を契機に、我が国の警備・公安警察も警戒対象を極左暴力集団のゲリラ・テロ対策から国際テロ対策へと、シフトチェンジを余儀なくされた。
ただ、安倍元首相の銃撃という重大テロ事件の発生を受け、警察庁は昨年11月、皇室や要人の警衛警護を指導・指揮する専従課を新設し、人員を拡大して体制を強化する必要性に迫られた。その結果、警察庁では警備運用部内で警衛室と警護室を独立させ、警衛警護対策に専従する新しい警備第二課として、人員を50人に拡充。警備第二課には警衛指導室と警護指導室を置き、災害対策などを担当していた従来の警備第二課を警備第三課に名称変更している。
「『警衛要則』には、皇室の方々のどなたをお守りするかといった細かい規定はありません。法令によって警護対象として明記されている人物は限られているのです。『警護要則』では内閣総理大臣と国賓だけが明記されている。ただ『その身辺に危害が及ぶことが国の公安に係ることとなるおそれがある者として警察庁長官が定める者』という規定があり、警護細則で『衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、国務大臣、公賓・公式実務訪問賓客、その他警察庁警備局長が定める者』となっています」(前出・警視庁警備部元幹部)
大臣や有力政治家の自宅前にポリスボックスが置かれているケースがあるのも、この規定に基づいている。
秋篠宮家の長女・小室眞子さんとの婚約内定期間中、横浜市内に住む圭さんの実母の警備計画も存在した。
地元警察署関係者はこう語る。
「『内親王の婚約内定者周辺者』ということで、警衛を担当する神奈川県警公安第二課の警衛担当者が差配していました。が、実家前にポリスボックスが置かれる根拠となったのは、警衛要則ではなく警護要則の細則にある『その他警察庁警備局長が定める者』だったようです」
小室さん宅のようにフレキシブルな警備警衛計画が可能ならば、“将来の天皇”2人を擁している秋篠宮家こそ、トップダウンで手厚くすべきではないのか。自身が警察庁警備局長や警視総監を歴任した、宮内庁の西村泰彦長官は今回、筆者の取材にこう答えた。
「お代替わりがあって以降、警視庁から秋篠宮家の警備体制強化の申し入れがあることは事実。悠仁さまのご身辺が手薄にならないようにしたいようです」
西村長官は慎重に言葉を選んで答えた。そもそも、なぜ悠仁さま周辺の警衛警備体制が手薄だったのか。そこには皇室特有の事情がある。

大島真生氏の「秋篠宮家を守るのは難しい」は「文藝春秋」2023年7月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
(大島 真生/文藝春秋 2023年7月号)