広島市で開催中の先進7か国首脳会議(G7サミット)では、広島県産の食材を使った料理が多く提供された。
外交の舞台で各国首脳らの舌を楽しませたことに、生産者らは「平和のメッセージとともに、広島の食の魅力も世界に広がってほしい」と期待を寄せた。
初日の19日夕、首脳らは宮島(広島県廿日市市)を訪問。世界遺産・厳島神社を見学した後、ワーキングディナーに臨んだ。
会場は、江戸時代後期の1854年創業の老舗旅館「岩惣(いわそう)」。神社近くの景勝地・紅葉谷にあり、初代首相の伊藤博文や夏目漱石らが利用したことで知られる。広島銘菓・もみじ饅頭(まんじゅう)は、明治時代に岩惣の女将(おかみ)が地元和菓子店に相談して生まれたとされる。
メニューは、県が日本一の生産量を誇るカキの酒蒸しや和牛などを使った料理。カキを納入したマルサ・やながわ水産(同県江田島市)の柳川政憲代表(54)は「首脳が気に入ってくれたなら励みになる。愛情を込めてカキを育て、産地を盛り上げていきたい」と喜んだ。
江戸時代にルーツがあり、地元生まれや県内飼育など、厳格な条件で認定される同県庄原市の黒毛和牛「比婆(ひば)牛」もテーブルに並んだ。生産頭数が少なく、「幻の和牛」とも呼ばれる。木山耕三市長は「多くの人に『比婆牛』を届けられるよう、一丸となって生産と販売を促進したい」とコメントした。
20日に各国首脳の配偶者らが参加した宮島での昼食会では、広島の食文化に触れてもらおうと、「お好み焼アカデミー」(広島市)の松本重訓専務理事(64)らが、20枚近くのお好み焼きを目の前で焼き上げた。
岸田首相の裕子夫人が、薄い生地の上にキャベツを載せ、重ねて焼く作り方を説明すると、参加者は興味深そうに耳を傾けていたという。松本専務理事は「日本語で『ありがとう』と言ってくれる人もおり、お好み焼きの魅力をしっかり発信できた。海外にも普及させたい」と手応えを語った。
首脳らによる20日のワーキングランチでは、京都の老舗料亭「菊乃井」主人の村田吉弘さんによる和食が振る舞われた。