難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者からの依頼を受けて殺害したとして、嘱託殺人などの罪で起訴された元医師、山本直樹被告(45)の初公判が29日午後、京都地裁(川上宏裁判長)で開かれた。
山本被告は、共犯として起訴された知人の医師、大久保愉一(よしかず)被告(45)の名を挙げ「大久保被告と一緒にいたことは間違いないが、共謀はしていないし実行もしていない」と起訴内容を否認した。また弁護側は「嘱託殺人を実行したのは大久保被告だ」と主張した。
起訴状などによると、山本被告は大久保被告と共謀し令和元年11月30日、全身の筋肉が徐々に動かなくなるALSで寝たきり状態だった京都市中京区の無職、林優里(ゆり)さん=当時(51)=に依頼され、致死量の薬物を投与。急性薬物中毒で死亡させたなどとしている。
林さんは当時、死期が迫っている状態ではなかったとされ、事件に至る経緯や両被告の行動の詳細などがどこまで明らかになるのかが注目される。
山本被告はこの事件とは別に、母親の淳子被告(78)と大久保被告と共謀し平成23年、入院中の父親=当時(77)=を退院させ殺害したとする殺人罪にも問われている。京都地裁は今年2月、山本被告に懲役13年の判決を言い渡し、被告側は控訴した。
この公判で山本被告は自身の医師免許の不正取得を機に、大久保被告と「秘密を共有し合う関係になった」と説明。一方の大久保被告は、安楽死を請け負う漫画上の医師に憧れ、安楽死を肯定するような内容をSNS(交流サイト)上に投稿していたとみられ、2人の関係や役割の解明も焦点となる。
両被告の裁判は分離して行われ、大久保被告の公判日程は未定。