東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事の高橋治之(はるゆき)被告(78)=受託収賄罪で4回起訴=に対する贈賄罪に問われた出版大手「KADOKAWA」の元五輪担当室長、馬庭(まにわ)教二被告(63)の初公判が30日、東京地裁(中尾佳久裁判長)で開かれ、起訴内容を認めた。
5ルートで計15人が起訴された一連の事件で、贈賄側の公判が始まるのは3ルート目。検察側は、馬庭被告らが会社の法務部門から「贈収賄に問われる可能性がある」との指摘を受けながら、同社前会長の角川歴彦(つぐひこ)被告(79)=贈賄罪で起訴=の承認もあり、高橋被告の要求に応じて支払いを続けたと指摘した。
検察側の冒頭陳述によると、馬庭被告らは高橋被告に対し、大会スポンサー契約の早期実現や協賛金を3億8千万円以内にすることなどを複数にわたり依頼。実際に2億8千万円で組織委と契約を締結できた。
見返りとして高橋被告の電通時代の後輩、深見和政被告(73)=受託収賄罪で2回起訴=が代表のコンサルティング会社「コモンズ2」の口座にコンサル料名目で現金を振り込むよう求められ、令和元年7月~3年1月に計約7700万円を振り込み、このうち公訴時効分を除く計約6900万円が賄賂に当たるとした。
また馬庭被告やKADOKAWA元専務の芳原世幸(としゆき)被告(65)=贈賄罪で起訴=らは、コモンズ2への支払いが贈収賄に当たるリスクがあることを法務部門の指摘で把握。角川被告に複数回相談したが「うまくやれよ」などといわれ、支払いを行った。賄賂の発覚を防ぐため、コモンズ2との契約項目には五輪以外の業務を付け加えた。
関係者によると、高橋被告はKADOKAWA側からの賄賂の受領を否認。昨年9月14日に逮捕された角川被告も否認しており、半年以上勾留されている。