声を荒らげて答弁した岸田首相(2月27日、写真・時事通信)
2月27日、岸田文雄首相が、衆院予算委員会で声を荒らげて反論する一幕があった。
「子ども関連予算の倍増」に関連し、岸田首相は2月15日に「家族関係社会支出は2020年度でGDP比2%を実現している。それをさらに倍増しようと言っている」と発言。GDP比2%がおよそ11兆円だから、GDP比4%なら、合計で22兆円規模の巨額予算となる。
だが、政府はその後、倍増の基準をめぐり「まだ整理中」と説明し、軌道修正。岸田首相も2月22日には「政策の内容を具体化した上で必要な財源を考える。中身はまだ整理している段階だ」と発言した。
27日の衆院予算意委では、立憲民主党の長妻昭政調会長が「(子ども予算)倍増に期待している人が多い。GDP比で倍にするのか、実態金額で倍にするのか」と問うた。
すると、岸田首相は、「ベースになる政策の整理を指示している」としたうえで、「中身を決めずして、最初からGDP比いくらとか、今の予算と比較でどうなのかとか、数字ありきではないと従来から申し上げている。予算をしっかり整理した上で、倍増にむけた大枠を示していく。こうした考えを従来から再三、申し上げている」と声高に主張し、自席に戻った。
だが、長妻氏が「おかしい。なぜベースも言えないのか」と再反論。岸田首相は「さっきから申し上げているように、数字ありきではない」と苛立ちを隠せない様子で、声を荒らげて同じ主張を繰り返した。野党側からやじが飛ぶと、ぶち切れ気味に「違う!」と打ち消しながら答弁する場面も――。
岸田政権が掲げる「子ども関連予算の倍増」をめぐっては、迷走が続いている。
木原誠二官房副長官は、2月21日、『深層NEWS』(BS日テレ)に出演し、こう述べた。
「子ども予算は、子どもが増えればそれに応じて増えていく。もしV字回復して出生率が本当に上がっていけば、わりと早いタイミングで倍増が実現される」
2月26日には、自民党の田村憲久・元厚労相が『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)で、岸田首相の「倍増する」とした国会答弁について、こう説明した。
「規模感というか、次元が違うということを表現するのに『倍増』という言葉を1つの象徴として使われたのだと思う」
田村氏が「倍増は1つの象徴」としたときも疑問の声は数多くあがったが、今回は首相みずから「数字ありきではない」としたことで、SNSでは批判や冷笑の声が大量に寄せられている。
ジャーナリストの江川紹子氏は、2月27日、自信のTwitterにこう書き込んだ。
《数字が出せないのに「倍増」とは、これいかに…》
このほか、
《倍増って具体的に?ってきかれて「数字のことばっか言ってんじゃねーよ!」って激昂してたよねー岸田くん。倍増って言ったら数字のことに決まってんじゃん、、アホか》
《岸田ってやっぱりアホやった?……倍増とは倍に増やす そういう事だろうが それすら分からないのか?》
《政策が決まってないのに数字は出せないってご主張ですが、政策も決まってないうちから「倍増」って言ったの、アナタでしょう?》
《防衛費は中身を決めない内から早々と決定したのに子育て予算は有耶無耶にしたままなのか? 全くやる気がない!》
などのコメントが大量にあがっている。
27日の衆院予算委で質問に立った立憲民主党の山岸一生氏は、LGBTなど性的少数者をめぐる前首相秘書官の差別発言に触れ、「そもそも首相にも責任の一端がある。首相の説明が不十分だから、周辺が真意を説明し、次から次へと失言につながってる」と批判した。
このままでは、首相が自民党総裁選で掲げた「令和版所得倍増」と同じく、「子ども関連予算の倍増」も絵に描いた餅になりかねない。