オンラインゲームなどで知り合い、一度も会わずに「リモート交際」を始める男女が増えている。デジタル化を反映した現象と言えそうだが、2人の間で日常的なやりとりに使われるネット交流サービス(SNS)には、ドメスティックバイオレンス(DV)被害のリスクが潜んでいる。中でも一番怖いのは――。
【写真まとめ】返事、返事、返事…矢継ぎ早のLINE画像 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、オンラインゲームで知り合ったほかのユーザーと、LINE(ライン)などのアプリで交流した経験がある人は、10~20代のほぼ半数に上る。30代でも40・5%、40代も38・1%を占め、意外と少なくない。
臨床心理士の福田由紀子さんは「チームで対戦するようなゲームの場合、やりとりしながら一緒に戦うなど仲間意識が生じやすいのが要因」と分析する。 愛知県内に住む女性(39)は2020年7月、オンラインゲームで意気投合した九州地方の男性(37)と、対面では一度も会わないまま付き合い始めた。LINEや電話で連絡を取り合ううちにひかれていった。 だが、初めは優しかった男性の態度は、すぐにひょう変。女性が「黒歴史」と呼ぶ展開が待っていた。 女性は家族や親戚以外と連絡を取ったり、SNSをしたりすることを禁じられた。胸元の開いた服を着るのもNG。男性の機嫌が悪いと「ごみ女」「ウソつき」と罵倒され、男性が一方的に押しつけたルールに従わなければ女性や家族に危害を加えると脅された。 同年11月、精神的に追い詰められた女性は男性を包丁で刺し、殺人未遂などの疑いで逮捕された。一方の男性も脅迫容疑で逮捕されたが、女性は「実際に暴力を振るわれたわけではないので、DVだとは思っていなかった」と話す。 2人がLINEで交わしたメッセージは1日平均約500通。交際した約4カ月間で計6万通に上った。ビデオ通話機能も頻繁に利用していたが、直接会ったのは事件当日が4回目だった。 福田さんはDV被害の支援にも長年携わっており、「スマホの普及、SNSの進化で束縛や監視はより容易になった」と指摘。その上で「一番怖いのは被害者がDVに気付いていないこと。『ルールを破った私が悪い』と自分を責め、誰かに相談しようという気にならない」と嘆息する。 寄せられる相談の中には、夜寝るときもテレビ電話をつなぎっぱなしにするよう求められ、「寝息が聞きたい」「朝起こして」と言われて息苦しく感じているケースがあった。【藤顕一郎】
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、オンラインゲームで知り合ったほかのユーザーと、LINE(ライン)などのアプリで交流した経験がある人は、10~20代のほぼ半数に上る。30代でも40・5%、40代も38・1%を占め、意外と少なくない。
臨床心理士の福田由紀子さんは「チームで対戦するようなゲームの場合、やりとりしながら一緒に戦うなど仲間意識が生じやすいのが要因」と分析する。
愛知県内に住む女性(39)は2020年7月、オンラインゲームで意気投合した九州地方の男性(37)と、対面では一度も会わないまま付き合い始めた。LINEや電話で連絡を取り合ううちにひかれていった。
だが、初めは優しかった男性の態度は、すぐにひょう変。女性が「黒歴史」と呼ぶ展開が待っていた。
女性は家族や親戚以外と連絡を取ったり、SNSをしたりすることを禁じられた。胸元の開いた服を着るのもNG。男性の機嫌が悪いと「ごみ女」「ウソつき」と罵倒され、男性が一方的に押しつけたルールに従わなければ女性や家族に危害を加えると脅された。
同年11月、精神的に追い詰められた女性は男性を包丁で刺し、殺人未遂などの疑いで逮捕された。一方の男性も脅迫容疑で逮捕されたが、女性は「実際に暴力を振るわれたわけではないので、DVだとは思っていなかった」と話す。
2人がLINEで交わしたメッセージは1日平均約500通。交際した約4カ月間で計6万通に上った。ビデオ通話機能も頻繁に利用していたが、直接会ったのは事件当日が4回目だった。
福田さんはDV被害の支援にも長年携わっており、「スマホの普及、SNSの進化で束縛や監視はより容易になった」と指摘。その上で「一番怖いのは被害者がDVに気付いていないこと。『ルールを破った私が悪い』と自分を責め、誰かに相談しようという気にならない」と嘆息する。
寄せられる相談の中には、夜寝るときもテレビ電話をつなぎっぱなしにするよう求められ、「寝息が聞きたい」「朝起こして」と言われて息苦しく感じているケースがあった。【藤顕一郎】