若者や外国人観光客を中心に、年末の風物詩となっていたといっても過言ではない渋谷駅前のカウントダウン。しかし、同イベントは新型コロナウイルスの影響により、2020年、2021年と開催がとり止められており、2022年も12月26日に渋谷区ホームページにて中止が正式に発表されていた。
【画像】人、人、人…! カウントダウンイベントをやっていないのに渋谷スクランブル交差点に集うのはどんな人達なのか? スクランブル交差点は歩行者に開放されることなく、大型ビジョンにカウントダウン用の映像も放映されず、渋谷駅周辺の公共の場での飲酒も禁止。近2年と同様の来街防止対応がとられる形だ。

さりとて、近2年ともに年越しの瞬間のスクランブル交差点は、渋谷区が制限を行ったにもかかわらず、結果的には狂騒と呼ぶのがふさわしい空間となっていた(2020年末の様子/2021年末の様子)。カウントダウンイベント中止から3年目。2022年12月31日の深夜、渋谷駅周辺ははたしてどのような状況だったのか。年越しを迎えた瞬間の渋谷 文藝春秋 ◆◆◆ 爆増した外国人観光客 筆者が現地に到着したのは22時30分頃。この時点で、人流が昨年までとは桁違いだった。近隣の飲食店も大入りの様子で、通りにも人が溢れかえっている。そして、道行く人の多くが渋谷駅へと歩を進めているのだ。 なかでも目立つのが、観光で日本を訪れていると思しき諸外国の人の多さ。昨年のカウントダウンでは勉学や労働のために日本に滞在していると語るアジア系外国人がほとんどだったが、入国制限の緩和や円安といった事情も手伝ってか、さまざまな地域から日本を訪れる人が増えていることを肌身で感じる。「オレゴン州から来ました。たくさんの人が集まって、楽しんでいるさまを肌で感じられるから、渋谷のことが好きなんだ」と語る男性も日本を訪れた目的は観光だという。 アメリカ出身だという女性二人組は日本で英語講師をしているのだとか。「日本に住み始めたのは1年前くらい。去年は新宿に行っていて、今年初めて渋谷に来ました。終電があるから帰るけど、祝祭の雰囲気を味わいたくて」 ここで紹介した人以外にも外国人旅行客と思われる人は多くおり、街を歩いていると、さまざまな国の言語が耳に飛び込んできた。被り物で渋谷を訪れていた若者からの意外な言葉 年越しの瞬間が近づいてくるにつれ、スクランブル交差点周辺に人がどんどん集まり始め、23時45分頃には「スクランブル交差点方面への侵入を制限する柵」が設置されることに。 一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。 そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。 さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
スクランブル交差点は歩行者に開放されることなく、大型ビジョンにカウントダウン用の映像も放映されず、渋谷駅周辺の公共の場での飲酒も禁止。近2年と同様の来街防止対応がとられる形だ。

さりとて、近2年ともに年越しの瞬間のスクランブル交差点は、渋谷区が制限を行ったにもかかわらず、結果的には狂騒と呼ぶのがふさわしい空間となっていた(2020年末の様子/2021年末の様子)。カウントダウンイベント中止から3年目。2022年12月31日の深夜、渋谷駅周辺ははたしてどのような状況だったのか。年越しを迎えた瞬間の渋谷 文藝春秋 ◆◆◆ 爆増した外国人観光客 筆者が現地に到着したのは22時30分頃。この時点で、人流が昨年までとは桁違いだった。近隣の飲食店も大入りの様子で、通りにも人が溢れかえっている。そして、道行く人の多くが渋谷駅へと歩を進めているのだ。 なかでも目立つのが、観光で日本を訪れていると思しき諸外国の人の多さ。昨年のカウントダウンでは勉学や労働のために日本に滞在していると語るアジア系外国人がほとんどだったが、入国制限の緩和や円安といった事情も手伝ってか、さまざまな地域から日本を訪れる人が増えていることを肌身で感じる。「オレゴン州から来ました。たくさんの人が集まって、楽しんでいるさまを肌で感じられるから、渋谷のことが好きなんだ」と語る男性も日本を訪れた目的は観光だという。 アメリカ出身だという女性二人組は日本で英語講師をしているのだとか。「日本に住み始めたのは1年前くらい。去年は新宿に行っていて、今年初めて渋谷に来ました。終電があるから帰るけど、祝祭の雰囲気を味わいたくて」 ここで紹介した人以外にも外国人旅行客と思われる人は多くおり、街を歩いていると、さまざまな国の言語が耳に飛び込んできた。被り物で渋谷を訪れていた若者からの意外な言葉 年越しの瞬間が近づいてくるにつれ、スクランブル交差点周辺に人がどんどん集まり始め、23時45分頃には「スクランブル交差点方面への侵入を制限する柵」が設置されることに。 一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。 そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。 さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
スクランブル交差点は歩行者に開放されることなく、大型ビジョンにカウントダウン用の映像も放映されず、渋谷駅周辺の公共の場での飲酒も禁止。近2年と同様の来街防止対応がとられる形だ。
さりとて、近2年ともに年越しの瞬間のスクランブル交差点は、渋谷区が制限を行ったにもかかわらず、結果的には狂騒と呼ぶのがふさわしい空間となっていた(2020年末の様子/2021年末の様子)。カウントダウンイベント中止から3年目。2022年12月31日の深夜、渋谷駅周辺ははたしてどのような状況だったのか。
年越しを迎えた瞬間の渋谷 文藝春秋
◆◆◆
筆者が現地に到着したのは22時30分頃。この時点で、人流が昨年までとは桁違いだった。近隣の飲食店も大入りの様子で、通りにも人が溢れかえっている。そして、道行く人の多くが渋谷駅へと歩を進めているのだ。
なかでも目立つのが、観光で日本を訪れていると思しき諸外国の人の多さ。昨年のカウントダウンでは勉学や労働のために日本に滞在していると語るアジア系外国人がほとんどだったが、入国制限の緩和や円安といった事情も手伝ってか、さまざまな地域から日本を訪れる人が増えていることを肌身で感じる。「オレゴン州から来ました。たくさんの人が集まって、楽しんでいるさまを肌で感じられるから、渋谷のことが好きなんだ」と語る男性も日本を訪れた目的は観光だという。 アメリカ出身だという女性二人組は日本で英語講師をしているのだとか。「日本に住み始めたのは1年前くらい。去年は新宿に行っていて、今年初めて渋谷に来ました。終電があるから帰るけど、祝祭の雰囲気を味わいたくて」 ここで紹介した人以外にも外国人旅行客と思われる人は多くおり、街を歩いていると、さまざまな国の言語が耳に飛び込んできた。被り物で渋谷を訪れていた若者からの意外な言葉 年越しの瞬間が近づいてくるにつれ、スクランブル交差点周辺に人がどんどん集まり始め、23時45分頃には「スクランブル交差点方面への侵入を制限する柵」が設置されることに。 一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。 そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。 さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
なかでも目立つのが、観光で日本を訪れていると思しき諸外国の人の多さ。昨年のカウントダウンでは勉学や労働のために日本に滞在していると語るアジア系外国人がほとんどだったが、入国制限の緩和や円安といった事情も手伝ってか、さまざまな地域から日本を訪れる人が増えていることを肌身で感じる。
「オレゴン州から来ました。たくさんの人が集まって、楽しんでいるさまを肌で感じられるから、渋谷のことが好きなんだ」と語る男性も日本を訪れた目的は観光だという。 アメリカ出身だという女性二人組は日本で英語講師をしているのだとか。「日本に住み始めたのは1年前くらい。去年は新宿に行っていて、今年初めて渋谷に来ました。終電があるから帰るけど、祝祭の雰囲気を味わいたくて」 ここで紹介した人以外にも外国人旅行客と思われる人は多くおり、街を歩いていると、さまざまな国の言語が耳に飛び込んできた。被り物で渋谷を訪れていた若者からの意外な言葉 年越しの瞬間が近づいてくるにつれ、スクランブル交差点周辺に人がどんどん集まり始め、23時45分頃には「スクランブル交差点方面への侵入を制限する柵」が設置されることに。 一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。 そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。 さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
「オレゴン州から来ました。たくさんの人が集まって、楽しんでいるさまを肌で感じられるから、渋谷のことが好きなんだ」と語る男性も日本を訪れた目的は観光だという。
アメリカ出身だという女性二人組は日本で英語講師をしているのだとか。
「日本に住み始めたのは1年前くらい。去年は新宿に行っていて、今年初めて渋谷に来ました。終電があるから帰るけど、祝祭の雰囲気を味わいたくて」 ここで紹介した人以外にも外国人旅行客と思われる人は多くおり、街を歩いていると、さまざまな国の言語が耳に飛び込んできた。被り物で渋谷を訪れていた若者からの意外な言葉 年越しの瞬間が近づいてくるにつれ、スクランブル交差点周辺に人がどんどん集まり始め、23時45分頃には「スクランブル交差点方面への侵入を制限する柵」が設置されることに。 一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。 そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。 さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
「日本に住み始めたのは1年前くらい。去年は新宿に行っていて、今年初めて渋谷に来ました。終電があるから帰るけど、祝祭の雰囲気を味わいたくて」
ここで紹介した人以外にも外国人旅行客と思われる人は多くおり、街を歩いていると、さまざまな国の言語が耳に飛び込んできた。
年越しの瞬間が近づいてくるにつれ、スクランブル交差点周辺に人がどんどん集まり始め、23時45分頃には「スクランブル交差点方面への侵入を制限する柵」が設置されることに。
一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。 そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。 さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。 そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。 さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
一昨年、昨年にはなかった措置で、カウントダウンイベントがなくとも、年末に渋谷に集まりたい人が数多くいることがうかがえる。警備を担当していた方に話を聞くと「今年はほんと多いですね。規制解除の判断も滞留の具合によるのでわからないです。全部上の判断に従ってやっているだけなので。すいません」とのことだった。
そんな中、多くの人から写真撮影をねだられていたのが、この二人組だ。
さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」 SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。 しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。 虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。カウントダウンの瞬間…… そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
さぞ、今回のような盛り上がるイベント事が好きな人たちなのだろうと推察しつつ声をかけると、被り物越しのボソボソとした声で意外な言葉が返ってきた。
「この格好はSNS時代における匿名性の具現化なんですよ」
SNS上で注目こそされど、その注目の対象は被り物を被っているような、匿名的な存在に過ぎないのではないかというメッセージを込めており、それを現実世界で体現しているのだとか。
しかし、続けて話を聞いてみると、「そんな主張もありますが、なんというか、一回来てみようと思って」とも。
虎の被り物をした男性は、岡山から上京してはじめて渋谷のカウントダウンを体験している大学一年生で、普段は都内の有名私立大学で文学を学んでいるのだと語る。クリスマスに同じ被り物で来た時とは人の多さも、自身への注目度もまったく違うのだとか。
そして迎えたカウントダウンの瞬間。渋谷はまともに歩行することすら許されない状況になっていた。芋の子を洗うように人が集い、四方八方から体を押され、身動きが取れない。
「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」「これもう進めない? 進めないよね?」「いま何時?」 筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」 そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。 これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
「ヤバいヤバいちょっと諦めかけた!」
「これもう進めない? 進めないよね?」
「いま何時?」
筆者の身体を押し除ける人からそんな声が聞こえてくる。
「なんとか身動きの取れる場所に行かなければ……」
そんなことを考えていると、時刻は既に2023年1月1日0時4分……。
これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。 そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。 規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。これからの渋谷駅前カウントダウンの行方 なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。 一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。 韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
これだけの群衆が集まっているにもかかわらず、年越しの瞬間をカウントダウンすることはなかったわけだ。時刻を気にするほどの余裕すらない人の入り乱れようだったからだろうか。
そして、午前1時を過ぎようとも、人流のほとんどはスクランブル交差点へと向かっており、「マジで海外の人ばっかだ……」「ヤバくない? ヤバくない?」などと口にする人らとすれ違う。
規制のための柵によって、スクランブル交差点に集えなかったからなのか。年越しの瞬間それ自体に価値を見出していないからなのか……。理由はわからないものの、渋谷の夜は例年以上に長く続いていた。
なお、これまでの渋谷区の発表において、昨年のカウントダウン中止を知らせる報では「『オミクロン株』の拡大懸念など予断を許さない状況」と、新型コロナウイルスに関する文章が記されていた。
一方、今年のメッセージでは新型コロナウイルスについては一切触れられておらず、「人が密集し滞留してしまうリスクを軽減するため」という理由のみが記されている。
韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。 しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。 再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。(「文春オンライン」編集部)
韓国・梨泰院での痛ましい事件があっただけに、人の集中による事故を抑える対策はもちろん必要だろう。
しかし、今年の渋谷カウントダウンでは、掲載した写真の通り、人の密集・滞留はたしかに起こっていた。また、密集・滞留を防ごうとするあまりなのか、近2年徹底されていた飲酒禁止措置はほとんど対処されていなかった。過去最多レベルで新型コロナウイルスの死者・入院者が増えるなか、対策・対応が徹底されていたのかと考えると疑問を抱かざるをえない。
再開発で日々刻々と姿を変えゆく渋谷。渋谷駅前カウントダウンの在り方も、いま、アップデートされるときが来ているのかもしれない。
(「文春オンライン」編集部)