日本全国には約2万4000もの郵便局があり、さまざまな魅力あふれる局がたくさんあります。ここでは、切手収集家や郵便局めぐりをする人の間で話題になる郵便局、思わず「日本一○○」と言いたくなるものを厳選してご紹介したいと思います。
1. 日本一高所にある郵便局日本で一番高い場所にある郵便局は文句なしの富士山頂郵便局(富士宮市粟倉)です。この局は夏期限定の季節局として知られ、営業時間も午前6時から午後2時までです。厳しい環境下での勤務ということもあり、局員になるには登山経験や基礎疾患の有無などの選考基準が設けられています。
富士山頂郵便局は、富士山郵便局として明治39年(1906年)7月30日に開局したのが最初です。当初は吉田口および須走口寄りの8合目にありましたが、明治42年(1909年)に現在の山頂付近に移転しました。
戦中は昭和17年(1942年)夏までの営業でしたが、昭和24年(1949年)に富士山頂郵便局として改称・再開されます。令和2年(2020年)から新型コロナの影響で休止していましたが、令和4年(2022年)夏に営業を再開しています。
富士山頂郵便局は風景印を最初に使用開始した局のひとつでもあります。風景印は昭和6年(1931年)4月1日、日本が当時支配していた中国・関東州で先行開始されましたが、内地では富士山郵便局と富士山北郵便局(山梨県)の2つの季節局がもっとも早く、いずれも昭和6年7月10日に使用開始されました。
2. 建造物として日本一重要な郵便局経済成長のなかで失われていく明治の重要な建造物を移築し、保存することをコンセプトにした博物館明治村(愛知県犬山市)をご存じでしょうか。このテーマパークには伊勢神宮外宮前に建てられた山田郵便局(明治42年竣工・現在の伊勢郵便局)の旧局舎があり、「宇治山田郵便局舎」として重要文化財に指定されています。
「宇治山田郵便局舎」が博物館明治村に移築されたのは昭和44年(1969年)のこと。当初は郵便関係の展示場だけでしたが、昭和46年(1971年)3月に博物館明治村簡易郵便局が館内に設置されました。令和4年11月3日に約4年の大規模な改修工事を終えましたが、明治時代の竣工当時の色合いが再現されていて、とても見ごたえがあります。
3. 日本の郵便創業の地にある郵便局四日市郵便役所といっても、三重県ではありません。
ちょうど現在の日本橋郵便局がある地点、東京府豊島郡日本橋元四日市町(現在の東京都中央区日本橋一丁目)に、日本の郵便事業を管掌する駅逓司(日本郵政の前身)と四日市郵便役所(東京中央郵便局の前身)が設置され、明治4年3月1日(1871年4月20日)の郵便創業の日を迎えました。
つまり、日本橋郵便局のある場所は郵便創業時点の本拠地だったのです。
もともとこの場所は東京郵便局(東京中央郵便局)だった時期が長いのですが、同局が丸の内側に移転したため、大正6年(1917年)4月1日に日本橋郵便局という局が同じ場所に新設されました。
郵政関係者の間ではよく知られた話なのですが、日本橋郵便局は江戸橋のすぐ目の前にあり、日本橋からは少し離れています。日本橋とは開局時の行政区(日本橋区)によるもので、日本橋の近くにある局というわけではありません。
また、元四日市町という歴史ある地名は昭和3年(1928年)の震災復興期の区画整理で消滅し、通1丁目・江戸橋1丁目に編入されています。
4. 日本一南国な雰囲気に満ちた郵便局竹富郵便局は沖縄本島から約430km南西の石垣島から、さらにフェリーで6kmほどの小島にある島内唯一の郵便局です。竹富島は「農村集落」がよく保存されていることから、昭和62年(1987年)4月に重要伝統的建造物群保存地区の指定を受けており、局舎もその景観にふさわしいものとなっています。
現在の竹富島郵便局の局舎は平成5年(1993年)にできたものです。けっして古くはありませんが、琉球赤瓦の屋根に丸太の柱を用いた平屋建てで、伝統的な琉球建築を用いています。
琉球石灰岩でできた白い石垣に囲まれ、赤い建物とのコントラストが美しく仕上がっていて、「映える郵便局」みたいな話題になると、よく引き合いに出されます。
5. 日本唯一の「駅裏」簡易郵便局「駅前」と名のつく郵便局は全国に591局(2022年12月時点)を数えます。しかし島根県浜田市の浜田駅北口側には全国で唯一「駅裏」と称する簡易局(令和4年10月から一時閉鎖)がありました。
浜田駅裏簡易郵便局は昭和41年(1966年)8月新設の簡易郵便局であり、設置場所は浜田市浅井町でした。しかし簡易局の設置以前から浜田駅南口側には浅井郵便局(旧特定局)という別の局があったのです。