「ビッグボス」
フィリピンの警察当局は、全国で多発する「闇バイト強盗」の指示役「ルフィ」とされる男をそう呼んでいるという。男は同国の首都マニラ近郊の入管施設「ビクタン収容所」に身柄を拘束されている渡辺優樹容疑者(38)だ。複数の国で、大規模な特殊詐欺を働く犯罪グループの大幹部とされる。
「犯罪グループはマニラに近いマカティ市内の廃墟となった7階建てのホテルを拠点とし、日本などにいる実行犯に指示を出していたようです。廃ホテルが摘発されたのは19年11月。フィリピンの入管当局によって、内部にいた日本人36人が拘束されました。拠点は他にもあったようで、渡辺容疑者は摘発を逃れています」(全国紙国際部記者)
渡辺容疑者が捕まったのは21年5月だ。すでに窃盗などの事件で指名手配されていたが、フィリピン人女性や子どもへの暴行容疑で逮捕された。
「日本の警察は渡辺容疑者の逮捕状をとり、フィリピン当局へ身柄の引き渡しを求めていますが微妙な状況です。フィリピン政府は協力的な姿勢を示すも、すでに渡辺容疑者は女性への暴行の罪などで起訴されています。裁判が始まり実刑判決を受ければ、服役後の引き渡しになるんです」(同前)
日本では「闇バイト強盗」の被害が拡大している。茨城、栃木、神奈川、広島、山口など、昨年10月以降に全国8都県で数千万円規模の金品が強奪される事件が続発。東京都狛江市では大塩衣与さん(90)が自宅で全身に暴行を受け殺害されるなど、悪質な犯行が続いているのだ。
「実行犯たちは、ネット上の『闇バイト』に応募して犯行に及んでいました。指示を出していたのが『ルフィ』『ミツハシ』『キム』と名乗る人物です。実行犯のスマートフォンにはフィリピンの国番号『63』からの着信履歴が残っており、警察は渡辺容疑者が『ルフィ』とみて捜査を進めています。ただ実行犯の中には、警察の調べに対し『ルフィ』と東京都東村山市で会ったと証言する人間もいる。『ルフィ』を名乗る指示役が、複数いた可能性もあるんです。
指示役は、実行犯を恐怖で支配していました。平気で『(住民を)殺してもいい』と説明。実行犯には、顔写真と運転免許証など身分証明書の画像を送るよう求めていました。一旦画像を送ると、『逃げたらヒドい目に遭うぞ』という趣旨のメッセージが。実行犯は家族構成まで伝えていたため、親族にまで危害が加えられるのを恐れ簡単には抜けられなかったのでしょう。『(警察に)犯行を認めたら粛清される』と、多くの実行犯が怯えています」(全国紙社会部記者)
指示役のリーダー的存在と思われる渡辺容疑者の素顔は、凶悪そのものだ。
「フィリピンにいた特殊詐欺の犯罪グループからも、相当恐れられていたようです。フィリピンでの公判記録などによると、幹部にはミスがあれば末端のメンバーをベルトで殴るように指示。割れたビール瓶で、身体をメッタ刺しにされたメンバーもいると聞いています」(前出・国際部記者)
渡辺容疑者はフィリピンの収容施設にいる。それほど簡単に、収容所から海外へ指示が出せるものなのだろうか。
「19年5月から9月にかけ収容所にいた韓国人ルポライター金潤永氏が、共同通信への取材に応えた内容によると、職員にカネさえ払えばなんでもできるそうです。
ゴキブリやネズミが這い回る不衛生極まりない収容所で多くの人が半裸で生活する中、渡辺容疑者は月に10万円の電気代がかかるエアコンのきいた『VIPルーム』にいるとか。スマホもパソコンも簡単に入手でき、専用のトイレまでついているといいます。渡辺容疑者はカネにものを言わせ、自由で快適な暮らしをしているようです」(同前)
詐欺グループのメンバーを恐怖で支配し、複数の凶悪犯罪を指示していた「ルフィ」。これ以上フィリピンの収容所で、優雅な生活をおくらせるわけにはいかないだろう。