東北福祉大学といえば、近年、男子ゴルフのスター選手が数多く輩出しているスポーツの名門校として知られる。その運営母体である巨大宗門を舞台に、元学長と宗派の幹部が激しく火花を散らしているという。
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【写真を見る】4400万円の交際費が追及されたこともある、松山の恩師・阿部靖彦監督 一昨年、日本人初のマスターズ優勝を果たした松山英樹(30)と去年、学生ながら日本ツアーでアマ初の2勝を飾った蝉川泰果(22)。本邦のゴルフ界を担う逸材たる二人が1月12日からの米男子ゴルフ、ソニー・オープンにそろい踏みした。

彼らは東北福祉大ゴルフ部のOBと現役選手という関係にあり、阿部靖彦監督(60)を共通の師として仰ぐわけだが、「阿部氏は今や大学の実権を手中に収めた形ですよ」松山英樹 そう声を潜めて語るのは、さる大学関係者だ。「彼は運営母体である曹洞宗の幹部に飲食店で接待を繰り返し、大学の人事に関して自身の意に沿うように働きかけてきました。教え子の松山を同席させて高級クラブなどで豪遊し、年間4400万円も支出していたことまで内部調査で明らかになり、メディアでも報じられました。その後、なぜか不問に付されていますが……。ちなみに、昨年秋にも阿部氏は蝉川を会合に伴ったりしていたのです」(同)学長人事にも介入 時に教え子をダシに使ってまで運営元の幹部を接待攻勢したかいがあったか、「阿部氏は学校法人の本部統括部長の地位にまで上り詰めました」(同) その影響力は拡大の一途。2019年には都内で500年以上の歴史を持つ古刹、長泰寺の住職にして当時の学長だった大谷哲夫氏(83)と副学長がそろって交替したが、この人事にも監督の意向が働いていたという。「阿部氏は接待費の問題がマスコミに漏れたのは大谷氏がリークしたからに違いないと逆恨みし、あろうことか曹洞宗の幹部を動かして、大谷氏から僧籍まで剥奪しようとしました」(同)まさに泥沼の様相 すなわち20年、大学の元理事長であり、曹洞宗宗務庁教化部長だった喜美候部(きみこうべ)謙史氏ら6名の幹部が連名で宗務庁に対し、懲戒申し立てを行ったのである。「喜美候部氏と阿部氏はじっこんの仲で、たびたび飲食をともにしています。懲戒申し立ての理由としては、大谷氏が曹洞宗の意向を無視して学長再任の要求をしたり、マスコミに働きかけを行ったりしたことなどが挙げられました。宗務庁監査部は双方の言い分を慎重に調査し、刑事事件での不起訴に当たる“不求審”という決定を出しています」(同) しかし、喜美候部氏らはこれに不満を抱いたらしい。「監査審査会に不服申立書を提出したのです」(同) その不服申立書には、〈かかる抵抗を処分せずして許すことになれば、今後同様の出来事を宗門関係学校において容認せざるを得なくなり、宗制の根幹にかかわる問題となる〉 とつづられているのだが、「言い過ぎです。大谷氏はいわれなき懲戒は容認できないというだけの話」(同)当事者たちに聞くと… 大谷氏もやられっぱなしではない。昨年10月、懲戒申し立てが名誉毀損にあたるとして、逆に喜美候部氏ら6名に損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのだ。 コトここに至って事態はまさに泥沼の様相を呈している。さて、当事者たちは何を語るか。まず大谷氏は、「係争中なので、お答えは差し控えます」 かたや喜美候部氏は、「(懲戒申し立ては)曹洞宗の役職者上の務めとして、連名で申告したもの。私が個人的に申し上げる立場にはありません」 改めて曹洞宗に聞くと、「本懲戒申し立てに東北福祉大学職員(編集部注・阿部氏を指す)の強い関与や意向が大きく影響しているのではないかとのご質問ですが、全く関係ありません」 双方の主張はひたすら平行線をたどる。開祖道元は出家して悟りを開いたが、後進たちは世俗にまみれた不毛な諍いの最中にある。「週刊新潮」2023年1月26日号 掲載
一昨年、日本人初のマスターズ優勝を果たした松山英樹(30)と去年、学生ながら日本ツアーでアマ初の2勝を飾った蝉川泰果(22)。本邦のゴルフ界を担う逸材たる二人が1月12日からの米男子ゴルフ、ソニー・オープンにそろい踏みした。
彼らは東北福祉大ゴルフ部のOBと現役選手という関係にあり、阿部靖彦監督(60)を共通の師として仰ぐわけだが、
「阿部氏は今や大学の実権を手中に収めた形ですよ」
そう声を潜めて語るのは、さる大学関係者だ。
「彼は運営母体である曹洞宗の幹部に飲食店で接待を繰り返し、大学の人事に関して自身の意に沿うように働きかけてきました。教え子の松山を同席させて高級クラブなどで豪遊し、年間4400万円も支出していたことまで内部調査で明らかになり、メディアでも報じられました。その後、なぜか不問に付されていますが……。ちなみに、昨年秋にも阿部氏は蝉川を会合に伴ったりしていたのです」(同)
時に教え子をダシに使ってまで運営元の幹部を接待攻勢したかいがあったか、
「阿部氏は学校法人の本部統括部長の地位にまで上り詰めました」(同)
その影響力は拡大の一途。2019年には都内で500年以上の歴史を持つ古刹、長泰寺の住職にして当時の学長だった大谷哲夫氏(83)と副学長がそろって交替したが、この人事にも監督の意向が働いていたという。
「阿部氏は接待費の問題がマスコミに漏れたのは大谷氏がリークしたからに違いないと逆恨みし、あろうことか曹洞宗の幹部を動かして、大谷氏から僧籍まで剥奪しようとしました」(同)
すなわち20年、大学の元理事長であり、曹洞宗宗務庁教化部長だった喜美候部(きみこうべ)謙史氏ら6名の幹部が連名で宗務庁に対し、懲戒申し立てを行ったのである。
「喜美候部氏と阿部氏はじっこんの仲で、たびたび飲食をともにしています。懲戒申し立ての理由としては、大谷氏が曹洞宗の意向を無視して学長再任の要求をしたり、マスコミに働きかけを行ったりしたことなどが挙げられました。宗務庁監査部は双方の言い分を慎重に調査し、刑事事件での不起訴に当たる“不求審”という決定を出しています」(同)
しかし、喜美候部氏らはこれに不満を抱いたらしい。
「監査審査会に不服申立書を提出したのです」(同)
その不服申立書には、
〈かかる抵抗を処分せずして許すことになれば、今後同様の出来事を宗門関係学校において容認せざるを得なくなり、宗制の根幹にかかわる問題となる〉
とつづられているのだが、
「言い過ぎです。大谷氏はいわれなき懲戒は容認できないというだけの話」(同)
大谷氏もやられっぱなしではない。昨年10月、懲戒申し立てが名誉毀損にあたるとして、逆に喜美候部氏ら6名に損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのだ。
コトここに至って事態はまさに泥沼の様相を呈している。さて、当事者たちは何を語るか。まず大谷氏は、
「係争中なので、お答えは差し控えます」
かたや喜美候部氏は、
「(懲戒申し立ては)曹洞宗の役職者上の務めとして、連名で申告したもの。私が個人的に申し上げる立場にはありません」
改めて曹洞宗に聞くと、
「本懲戒申し立てに東北福祉大学職員(編集部注・阿部氏を指す)の強い関与や意向が大きく影響しているのではないかとのご質問ですが、全く関係ありません」
双方の主張はひたすら平行線をたどる。開祖道元は出家して悟りを開いたが、後進たちは世俗にまみれた不毛な諍いの最中にある。
「週刊新潮」2023年1月26日号 掲載