施政方針演説に臨む岸田文雄首相(写真・長谷川 新)
1月30日、岸田文雄首相は衆院予算委員会で、育児休業中の人たちのリスキリング(学び直し)を後押しするとした、自らの国会答弁が批判されていることをめぐり「あらゆるステージにおいて、本人が希望したならば、リスキリングに取り組める環境整備を強化していくことが重要だ、という趣旨で申し上げた」として、強制する意図はないと釈明した。
首相は、自身も3人の子供の親であるとふれたうえで「子育てが、経済的、時間的、さらには精神的にたいへんだということは目の当たりにしたし、経験もした」と強調し、「決して甘く見るということではないことはご理解をいただきたい」と語った。
首相は27日の参院代表質問の答弁で、「リスキリングへの支援を抜本的に強化していく中で、育児中などさまざまな状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々を、しっかりと後押ししていく」と発言。ネット上で「育児のたいへんさを分かっていない」などと批判されていた。
だが、首相の釈明後も、批判がやむ様子はない。元TBSアナウンサーで、現在はエッセイスト、タレントとして活躍している小島慶子氏は1月30日、自身のTwitterにこう書きこんだ。
《育休中は暇だろうと私も産むまでは思ってました。命を預かり育てることをなめてました。そういう生活実感なしに子育てを語ってしまう人たちが少子化政策をやれるのか。岸田さんもぜひ、新生児~乳児育児を半年みっちり体験してください。あなたこそリスキリングが必要です!!と画面に話しかけたわ…》
SNSで注目されているのは、2022年2月25日付「文藝春秋digital」に掲載された、フリーアナウンサーの有働由美子と、岸田裕子首相夫人の対談記事だ。対談には以下のくだりがある。
《有働 子育ては広島でお一人でという、今でいう「ワンオペ育児」ですか。
岸田 そうです。子どもが小さい頃は一人が夜中に熱を出したら他の子をどうするかとか、そういう時は結構大変でしたね。あとは子どもたちの幼稚園、小学校、中学校のPTAの役員をやらなきゃ、とか》
この対談記事を読んだ人たちから、SNSではこんな声が上がっている。
《この人はとことん子育てとは何か分かってませんね。奥様おひとりでワンオペ。アウト!!!》
《岸田首相、これでよく「子育てを経験した」とか言えるね》
《「子供がいる=子育て経験した」ではないのよね…。》
SNSでは、ほかにも注目されているものがある。岸田首相は2022年9月1日、自民党総裁選に立候補を表明(当時は政調会長)。その夜、自身のTwitterに投稿した1枚の写真だ。
《夜のテレビ出演の合間に、地元から上京してきてくれた妻が食事を作ってくれました。 ありがたいです》
そんな書き込みとともに投稿された写真には、ネクタイを結んだまま、スーツ姿で食卓に座る岸田氏と、エプロン姿で立ったまま、にこやかに微笑む裕子夫人が写っている。食卓には、ミツカンの「味ぽん」と思われる瓶も。総裁選に立候補した夜に、アットホームな姿を演出したのだろうが、写真はこんな批判を浴びている。
《男尊女卑をアピールしているのでしょうか》
《一緒に食べるんじゃなくて 立ってるんですね。 座らせもしない。 岸田さんにとっての女性の意味がこの写真1枚で露呈してますよ。》
《今時ニッコリ家父長制できる余裕なんて若い男女にはないんで、あーじいさんの価値観なんだなーって感じる写真でした。》
《少なくとも、氏はこの写真を選び、Tweetすることに違和感をもたない人なのだということは、分かります》
1月30日、衆院予算委員会で質問に立った、自民党の鈴木貴子衆院議員は同日、自身のTwitterにこう書き込んだ。
《総理の“子育て”のほどは、わかりませんが… やってないなら、やってない、で良いんです。昔と今、子育ての環境、制度、悩みも異なります。自らの経験の有無に問わず、想像力と聞く力で、当事者の声をくみとり、社会に反映させていくことを、国民は期待しているはず》
岸田首相は2月上旬から、子育て中の親や若者世代、子育てサービスの関係者から意見を聞く「子ども政策対話」を始める予定だ。それと、自身の息子の問題についても、きちんと向き合ってほしいものだが……。