海外での心臓移植手術を必要とする1歳の女の子「あおちゃん」。手術には、総額5億3000万円にも上る高額な費用が必要です。懸命な募金活動を続けてきた家族の元に7日、うれしいニュースが飛び込んできました。
■国内手術に大きな壁「ドナー不足」…年平均2件
佐藤葵ちゃん。呼び名は「あおちゃん」。生まれた時から「先天性心疾患」を患い、これまで4度の手術を受けましたが、心臓から必要な血液が送り出せない「重症心不全」となりました。
今は、小さな体に補助人工心臓を付けて命をつないでいる状態。ただ、補助人工心臓は、感染症などのリスクが高いため、早期の心臓移植手術が必要な状況です。
父親・佐藤昭一郎さん:「移植しない場合は、自分で全身に血を巡らせることができない状態がひどくなっていく。臓器不全を起こしたり、良くない状態になって、最終的には死に至る。要は、みとるということになる」
あおちゃんの両親は、「国内で心臓移植手術を受けられれば…」と考えました。ところが、大きな壁となっているのが「ドナー不足」です。
人口100万人あたりの臓器提供者の数は、アメリカが38人に対し、日本はわずか0.6人。小さな子どもの場合、移植のチャンスがあるのは年に2人程度です。
日本では、移植できる可能性は極めて低いことから、両親は、早期の移植が見込めるアメリカでの手術を決断しました。
母親・佐藤清香さん:「ICU(集中治療室)でも日々のなかで、ガリガリにやせて。それでも久しぶりに親に会うと、笑顔になる娘を見て、親としてできることは何でもしたい。しようと思いました」
■大好きな妹のため…“姉”も一緒に募金活動
しかし、またしても問題がありました。それが“莫大な移植費用”です。
日本国内と違い、アメリカでの心臓移植は保険が適用されません。そのため、直近の例では3億円から4億円の費用が必要でした。
ところが、あおちゃんのケースでは、円安のあおりを受けて、その1.5倍、5億3000万円もの費用を用意しなければならなくなったのです。
その大まかな内訳は、医療費として3億7000万円、渡航費で8100万円。渡航費がこれほど高額なのは、補助人工心臓を付けたままの移動には、医療用ジェット機をチャーターする必要があるからだといいます。
先月、両親は支援者と共に募金活動をスタート。その決断も簡単ではなかったといいます。
昭一郎さん:「世の中には、我々の娘以外にも、大変な状況という方はたくさんいると思うので。我々がどんどん前に出て行って、支援を呼び掛けるところの申し訳なさもあった」
昭一郎さん:「もうちょっと大きい声で」
あおちゃんの姉:「よろしくお願いします」
巣鴨駅前で行った募金活動では、父・昭一郎さんのそばで恥ずかしそうに立つ女の子の姿がありました。あおちゃんのお姉さんです。
街頭で呼び掛けるのはこの日が初めて。最初は大きな声が出ませんでしたが、大好きな妹のために、勇気を振り絞りました。
■担当医「日本でも臓器提供の理解広がって」
清香さん:「あおちゃん見える?」
姉:「見えるよ」
現在、あおちゃんには家族の24時間の付き添いが求められているため、主に母親の清香さんが病院に寝泊まり。昭一郎さんは仕事をこなしながら、姉の世話をしています。
姉:「イナイ、イナイ、バー」「いっぱい抱っこしましょうか」
清香さん:「抱っこする?」
昭一郎さん:「長女がさびしいと言っている。私も頑張っているとはいうものの、やはり母でしか埋められないものがあって。そういうのもあって、早めに移植したいという思いも強いです」
あおちゃんの担当医は、心臓移植で救われている子どもたちがいることを知ってもらい、日本でも臓器提供に対する理解が広がってほしいと訴えます。
埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科・戸田紘一医師:「(3年前)20歳くらいの女の子を立て続けに4人診ました。小さいころ、1~4歳くらいで移植をして帰ってきて。ネイルサロンの仕事を始めた子と、大学生で頑張っている子と、来年受験だという子でした。そういったこともできる可能性が広がるということが、分かって頂ければ」
■“5億円”募金達成へ…移植の順番待ち予定
募金を始めて3週間余り経った7日、うれしいニュースが飛び込んできました。
昭一郎さん:「きのう時点で、お陰様で5億円を超えていて、(目標額の)95%ほど集まっている状況。驚きとありがたさと感謝の気持ちでいっぱいです」
募金額が5億円を超え、さらに、当初の想定より円高となっていることから、募金活動に終了のめどがつきました。
募金額が5億円に達したことを電話であおいちゃんに報告しました。
昭一郎さん:「あおい、もうちょっとでアメリカ行けそう。手術の準備で5億円は超えました。皆のおかげで」
清香さん:「やったー、やったー」
昭一郎さん:「やったー」
今後は、アメリカに渡ってドナー登録を行い、移植の順番を待つ生活となります。
募金によって集まったお金が余った場合は、次の移植を待つ子どもたちに渡す方針だということです。
(「グッド!モーニング」2022年12月8日放送分より)