飲食業は、ほかの業種と比べると、さまざまな業務を同時にこなさなければならない。たとえば、客の入店対応から、料理のオーダーと提供。とくにランチやディナータイムは忙しくなる。 そんななかで、客の何気ない行動が、じつは「歓迎されていない」場合もある。
◆混雑時にテーブル席に堂々と座る“1名様”
ラーメン店でアルバイトをしていた星乃浩二さん(仮名・20代)は、入店時に席を自分で決めてしまう客に困っていたのだとか。 「お店によっては自由席の場合もありますが、私の勤務していたお店では、回転率を意識して、従業員が席に案内するというシステムでした」 1名の客は、基本的にカウンター席に案内するのだが、「お席にご案内するのでお待ちください」と声をかけたにもかかわらず、それを無視する客もいるという。 「ある日、1名のお客様が4人がけのテーブル席に座りました。お昼の混雑時で、次のお客様は家族連れでしたので私は思い切って『お席を移動していただけませんか』といいました」 しかし、その客からは「どこでもいいだろ」と返事がくる。結局、家族連れが座れる席がなく、待たせることになったそうだ。
◆店の回転率が上がらない… その後も、カウンター席は空くものの、来店客は家族連れが多かった。 「コロナ禍でもあり、店内で待てるのは1組までというルールがあります。ですので、車でお待ちいただいていたのですが、案内までに時間がかかることもあり、帰ってしまうお客様もいたんです」 テーブル席に座った「1名様」は、何も気にすることなく、食べ終わってもゆっくりとスマホを見続け、席に居座り続けていた。
◆食べ終わった皿は重ねないでほしい
ときどき、食べ終わった皿を重ねて置く客がいる。それは、フレンチにおいて、できればしてほしくないことだと話す秋元直子さん(仮名・30代)。 「きっとテーブルを広く使いたいからという理由と、私たち従業員が下げる際の手間を考えてのことだと思います」 しかし、それは「ありがた迷惑だ」という。 「フレンチは一般的に前菜、魚料理、肉料理など一人のお客様につき提供するタイミングがあります。従業員は、お皿を下げるためだけにホールに出ていくことは非常に非効率なので、料理を提供したタイミングで目についたお皿を下げるのが基本なんです」
◆「お皿の裏面を汚したくない」 皿を多く下げるためには手にのせる際のコツがあり、右利きと左利きによっても異なった持ち方があるようだ。 「お皿を重ねられると、下げる時の効率的な持ち方ができず、洗い場とテーブルの行き来が増えます。また、ソースの種類によってお皿の裏面を汚したくないので、できれば重ねたくないこともあります」 とくにドロっとしたソースの場合は食洗機ではきれいに落ちず、スポンジで軽くこするという工程が追加される。 「お皿は従業員のペースで下げられるように、お客様の前に置いたままにしてほしいと思っています」 フレンチでは、料理提供すべてを従業員に任せていただきたいと、切実に話してくれた。
◆クーポン券のスクリーンショットは使用不可だが…

「当然お断りをしたのですが、納得してもらえず、『なんでダメなの』と問い詰められました。その後も押し問答が続き、私では対応できなくなってしまいました」 時間帯責任者に対応を代わってもらい、客はなんとか引き下がってくれたという。しかし、その後の展開が衝撃的だったと長澤さんは振り返る。 ◆クレーム客と街で遭遇
「なんとか引き下がったかと思いきや、本社のお客様相談センターに連絡が入ったと聞きました」 そして、それから1週間後、不運にも、そのクレーム客と遭遇してしまったそうだ。 「お客様は、『こんなこといわれたの初めてで、頭にきて本社に電話したんだよ! いまだに腑に落ちないわ』といわれ、本音では早々に切り上げたかったのですが、ここでスルーしたら面倒なことになると思い、気が済むまで話を聞いてあげました」 長澤さんは、ほかの客に快適に過ごしてもらうためにも、ルールはしっかりと守ってもらいたいと訴えた。
<取材・文/chimi86>
―[店員が語る困ったモンスター客]―