政府・与党は12日、年間所得1億円から所得税率が下がる「1億円の壁」是正に向け、総所得が20億円を超える富裕層への課税を強化する調整に入った。
所得や能力に応じた「応能負担」を求め、社会保険料を含めた負担の不均衡を解消することを目指す。首相官邸とも調整した上で最終判断する見通しだ。
富裕層課税の強化について、自民、公明両党の税制調査会は、事業で成功を収めた起業家に配慮した税制優遇と連動させる形で検討を進めてきた。協議の結果、保有する株式の譲渡益を元手にスタートアップ(新興企業)に再投資した場合、投資額のうち最大20億円までを非課税とする優遇措置が固まった。
このため、同措置に連動し、富裕層に対する課税強化は、同額の総所得20億円以上の所得者を対象とする方向だ。
1億円の壁は、一般的な給与所得に対しては10~55%課税されるのに対し、株式譲渡などの金融所得は税率が一律20%に設定されていることから生じる。富裕層の所得税や社会保険料負担が大幅に減少する実態を踏まえ、与党税調内では「改善すべきだ」との声が強い。
ただ、官邸内では「少額投資非課税制度(NISA)の恒久化と併せて課税を強化すると逆方向のメッセージを出すことになる」(木原誠二官房副長官)など慎重論もある。