公判で明らかになったのは、被害者への壮絶な集団リンチの内容だった。
7時間近く暴行が加えられ、肋骨の骨折は38ヵ所。底が木製の靴で40回以上蹴られ身体中に内出血……。被害者はボロボロの状態となってショック死した。
10月7日、東京地裁で行われた裁判員裁判の公判(平出喜一裁判長)で関口寿喜被告(27)に懲役10年の判決が下された。問われていたのは、東京・歌舞伎町の雑居ビルの屋上で無職の氏家彰さん(当時43)を集団で暴行し殺害した傷害致死の罪。平出裁判長は「傷害致死の事案の中でも悪質かつ残酷」と断じた。
「事件が起きたのは昨年11月です。関口被告と氏家さんは、『トー横』と呼ばれる歌舞伎町『TOHOシネマズ』横の地域を拠点にしていました。事件の1ヵ月ほど前、千葉県木更津市から歌舞伎町に進出していた『木更津グループ』と氏家さんがトラブルに。『木更津グループ』の少年たちは、氏家さんを暴行し入院させるほどのケガを負わせたんです。
『木更津グループ』は、退院後も暴行を加えようと氏家さんを探し続けます。昨年11月27日、彼らは歌舞伎町にいた氏家さんを拘束。氏家さんは同じ『トー横』のボランティアグループに所属し、仲の良かった関口被告に連絡し助けを求めました。しかし関口被告は氏家さんを救助するどころか、少年たちと一緒になって激しい暴行を加えたんです」(全国紙社会部記者)
なぜ関口被告は、友人である氏家さんを裏切ったのだろうか。関口被告は、公判でこう話している。
「最初は助けるつもりだったが、(氏家さんの言動に)だんだんイライラし暴行してしまいました」
「本気で暴行はしていません。手加減していました。ただ『兄弟』と呼び合っていた共犯者(少年たち)に『本気で怒っている』ところを見せないと、関係が悪化すると思った」
しかし、出廷した見張り役の少年によると「手を抜いているようには見えなかった」とか。「(こめかみから血を流す氏家さんを見て)さすがに『マズいんじゃないか』と言っても」、気にする様子もなく殴打していたという。
狂暴な性格を露わにした関口被告。法廷であきらかになったのは、意外な素顔だった。
「内気な性格で、小学校時代から人とコミュニケーションをとるのが苦手だったようです。高校では、壮絶なイジメを受けていました。同級生たちにタバコの火を肌に押しつけられ殴られるなどしたため、通信制の高校に転校せざるを得なかった。仕事についても長続きせず、親子関係も悪かったようです。父親から勘当され居場所を失い、『トー横』に流れ着いたと聞いています」(前出記者)
関口被告の父親は、法廷でこう証言している。
「集団で暴行を受ける痛みを知っていたのに情けない……。間違った居場所を見つけてしまったんだと思います」
法廷で「アキラ(氏家さん)と遺族に申し訳なく思っています」と謝った関口被告。謝罪の気持ちがあるなら、凄惨な集団リンチから氏家さんを救うべきだっただろう。