悪事を取り締まるはずの警察官が、どうして町の安全を守るための交番で不適切なことをしてしまうのか。人の道に背く不倫カップルならば、時に職場で不適切な行為に耽ってしまうこともあるだろう。だが、それをするのが警察官で、場所が「交番」となると──。
【写真】不適切な行為に対し、兵庫県警も処分を発表 長野県警が9月1日、業務時間外に不適切な交際をしたとして、男性巡査部長(44)と女性巡査(22)を戒告の懲戒処分(ともに依願退職)にしていたことが発覚した。既婚の巡査部長と独身の女性巡査は、勤務時間外に交番で性的行為を複数回していたという。県警関係者が語る。

「まだ警察官としての経験が少ない女性巡査に指導という名目で接するうち、2人は不倫関係になったそうです。普段はホテルを使っていたようですが、誰もいないタイミングを見計らって交番でも性行為をしていた。交番での逢瀬の回数は10回ぐらいだったとのことです。2人が非番の日に一緒にいることが噂になり、交番に用のない時に2人でいたところも目撃されるなどして、アウトとなったようです」 県警は『週刊ポスト』の取材に、「この件については発表していません。男性巡査部長と女性巡査が2020年11月から2022年6月頃まで不適切な交際をしていたため、9月1日付で戒告の懲戒処分とした。同日付で2人とも依願退職したということ以外は県警からは話せません」(警務部監察課)として、「県民の信頼を裏切るもので、誠に遺憾。深くおわびする。職員に対する指導をより一層徹底し、再発防止に努める」(同前)という。 だが、交番で情事を重ねる警察官は少なくはないようで、これまでも度々、報じられてきた。 今年7月には愛媛県警が30代の男性巡査部長と20代の女性巡査を懲戒処分にしたと発表した。2人は県内の同じ交番に勤務していた2021年9月頃から2022年3月頃にかけて、交番などで勤務中や休憩中、勤務前に性的行為を複数回していた。地元紙記者が語る。「女性巡査は独身でしたが男性巡査部長は既婚者で、不倫関係だったということです。2人が別々の所属となった後に、女性巡査が上司に相談したことで発覚しました。女性は依願退職し、男性は巡査長への降格を申し出て受理されました」 昨年5月には兵庫県警が、勤務中に交番で性行為をして職務を怠ったなどとして女性巡査部長(当時29)を減給の懲戒処分、男性巡査長(当時26)を本部長訓戒、男性巡査部長(当時33)を所属長訓戒の処分とした(女性巡査部長と男性巡査長は依願退職)。 彼女らの行動はさらに乱倫だった。兵庫県警関係者が明かす。「女性巡査部長の処分がより重くなったのは、2人を相手に不適切な行為をしたためです。女性巡査部長は2019年8月~2020年2月頃、同じ甲子園署に所属していた後輩の男性巡査長を交番に呼び出して、夕方から休憩室でことに及んだり、署の執務室でも性的な行為をしていた。 その直後の同年3~5月頃には別の男性巡査部長とも不倫関係になり、男性が仮眠していた署内の参考人室でキスをするなどしていた。3人とも当時は既婚者でいずれも不倫関係でした。調査には『けじめがつけられなかった』『浮かれていた』などと話していました。女性巡査部長は夫も警察官でしたが、不倫発覚後に離婚が成立したと聞いています」 その兵庫県警では2017年にも既婚の男性警部(当時39)が独身の女性巡査(当時30)と署内の道場に隣接する個室で性行為をしたとして処分を受けていた。2020年も既婚の男性巡査部長(当時32)と独身の女性巡査(当時21)が勤務中に交番で3回ほど性行為をしたとして処分された。男女が同じ仮眠室で休憩 交番で性行為をした警察官は処分の対象となり、ほとんどが依願退職している。実名が出ることはなくても、全国紙やテレビ、ネットなどで何度も報じられることになる。 代償が大きいにもかかわらず、なぜやめられないのか──。元神奈川県警警察官で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこう語る。「20~30年前だと交番に女性警察官が就くこと自体がかなり珍しかった。2009年に警視庁が女性警察官の活躍の場を広げるためにと本格的に女性警察官が交番勤務に入るようになって、男性同様に夜勤もこなすようになりました。最近は女性警察官が増えたこともあり、交番勤務の経験を積ませる機会も増えています」 交番勤務に就くと、指導役の先輩警官とペアを組むことになる。「女性警察官の場合、交番では基本的に一人勤務はしません。先輩の男性警官とマンツーマンの勤務になります。交番勤務は女性がいる場合はほとんどが3人体制で、女性警察官はペアとして付いた男性警察官とはパトロールはもちろん、食事も休憩も一緒です。 交番の2階や事務室の奥は仮眠室になっていて、枕を置いて制服を着たまま横になって1~2時間の仮眠をします。新しい交番では仮眠室が男女別に造られているところもありますが、古い交番だと男女が同じ仮眠室で休憩することになる。そうした交番の特性も、性行為をしやすい場所にしてしまうのでしょう。たとえ仮眠の時間でも、警察官なら緊急事態が起こったらすぐに外に出られる服装で行為に及んでいるはずです」(小川氏) 交番で性行為をした警察官らは「不倫関係」だったということも特徴としてある。小川氏が語る。「女性警察官には30~40代のベテランと組ませることが多いので、結果として相手が既婚者である確率も上がってしまう。全国に警察官は26万人いますから全員がそうではなく、なかにはそうなってしまうケースがあるということです。 交番勤務はある意味密室で、男性警察官と一緒にいる時間が長いのが不倫関係になる一因なのでは。勤務は当直、非番、休日、当直、非番、日勤の繰り返しで、24時間勤務の当直が1か月に10日ほどあります。朝の8時前に出勤し、非番になるのは翌日の昼。指導役の先輩とずっと一緒にいるので悩みを相談することもありますし、恋愛関係に発展しやすいところはあるでしょう」交番は“手軽にできる”場所 19歳から1年間の交番勤務を経て地方警察署の地域課に勤務していた元警察官の吉野千夏さん(仮名、48)も、警察組織特有の上下関係が、警察官同士の不倫を生みやすいところがあると語る。「私がいた時代は特に女性警察官の立場は弱かった。週に1回の柔道の稽古では組み手で締め付けると見せかけて身体を過剰に密着されたこともあります。月に2回ほどある飲み会では無理やりキスされそうになったり、抱きつかれたりが日常茶飯事でした。 そんななかで既婚の30代後半の巡査部長から『外で会おう』と誘われて食事をして、2回目に呼び出された時は当然のようにホテルに誘われました。先輩から言われたことを断われる雰囲気は一切なく、言われた通りにするのが当たり前でしたから、そういうものだと受け入れていました。ただ私の場合は、職場の飲み会で後ろにいた警察官に衣服を無理やりおろされて……それがきっかけで警察を辞めたので、不倫関係も長くは続きませんでした」 退職後、千夏さんはセクシー女優に転身し、現在は主婦になっている。その千夏さんから見ても、警察官の不倫カップルが交番で性行為をするケースが増えていることは想像がつくという。「女性警察官が他の男性警察官と同じように夜勤や交番勤務をする時代になったなら、交番は“手軽にできる場所”になるでしょう。警察官からしてみれば交番は日常的にいる場所で、休憩室があって、そこに一般人が立ち入ることがない。上下関係が厳しいから、交番に他の警察官がいても口止めしやすい。 警察官は普段から柔道などで鍛えていてエネルギッシュですし。決して給料的に恵まれているわけではないので、ホテル代を節約できるという面もある。不規則な勤務形態のなかで、ものの5分くらいで済ませることができる……というのはあると思います」 もっとも甘い誘惑には棘もある。“交番での情事”は発覚しやすいのだ。前出の小川氏は言う。「当然、周りの正義感ある同僚が密告することは多い。さらに職務上の権限を利用して関係を持っていた場合や、不倫関係がこじれたりした場合は、どちらかが誰かに相談したりすることでも発覚する。そうなると処分は免れません」 そのスリルさえも、交番での情事をやめられない理由なのか。※週刊ポスト2022年10月21日号
長野県警が9月1日、業務時間外に不適切な交際をしたとして、男性巡査部長(44)と女性巡査(22)を戒告の懲戒処分(ともに依願退職)にしていたことが発覚した。既婚の巡査部長と独身の女性巡査は、勤務時間外に交番で性的行為を複数回していたという。県警関係者が語る。
「まだ警察官としての経験が少ない女性巡査に指導という名目で接するうち、2人は不倫関係になったそうです。普段はホテルを使っていたようですが、誰もいないタイミングを見計らって交番でも性行為をしていた。交番での逢瀬の回数は10回ぐらいだったとのことです。2人が非番の日に一緒にいることが噂になり、交番に用のない時に2人でいたところも目撃されるなどして、アウトとなったようです」
県警は『週刊ポスト』の取材に、「この件については発表していません。男性巡査部長と女性巡査が2020年11月から2022年6月頃まで不適切な交際をしていたため、9月1日付で戒告の懲戒処分とした。同日付で2人とも依願退職したということ以外は県警からは話せません」(警務部監察課)として、「県民の信頼を裏切るもので、誠に遺憾。深くおわびする。職員に対する指導をより一層徹底し、再発防止に努める」(同前)という。
だが、交番で情事を重ねる警察官は少なくはないようで、これまでも度々、報じられてきた。
今年7月には愛媛県警が30代の男性巡査部長と20代の女性巡査を懲戒処分にしたと発表した。2人は県内の同じ交番に勤務していた2021年9月頃から2022年3月頃にかけて、交番などで勤務中や休憩中、勤務前に性的行為を複数回していた。地元紙記者が語る。
「女性巡査は独身でしたが男性巡査部長は既婚者で、不倫関係だったということです。2人が別々の所属となった後に、女性巡査が上司に相談したことで発覚しました。女性は依願退職し、男性は巡査長への降格を申し出て受理されました」
昨年5月には兵庫県警が、勤務中に交番で性行為をして職務を怠ったなどとして女性巡査部長(当時29)を減給の懲戒処分、男性巡査長(当時26)を本部長訓戒、男性巡査部長(当時33)を所属長訓戒の処分とした(女性巡査部長と男性巡査長は依願退職)。
彼女らの行動はさらに乱倫だった。兵庫県警関係者が明かす。
「女性巡査部長の処分がより重くなったのは、2人を相手に不適切な行為をしたためです。女性巡査部長は2019年8月~2020年2月頃、同じ甲子園署に所属していた後輩の男性巡査長を交番に呼び出して、夕方から休憩室でことに及んだり、署の執務室でも性的な行為をしていた。
その直後の同年3~5月頃には別の男性巡査部長とも不倫関係になり、男性が仮眠していた署内の参考人室でキスをするなどしていた。3人とも当時は既婚者でいずれも不倫関係でした。調査には『けじめがつけられなかった』『浮かれていた』などと話していました。女性巡査部長は夫も警察官でしたが、不倫発覚後に離婚が成立したと聞いています」
その兵庫県警では2017年にも既婚の男性警部(当時39)が独身の女性巡査(当時30)と署内の道場に隣接する個室で性行為をしたとして処分を受けていた。2020年も既婚の男性巡査部長(当時32)と独身の女性巡査(当時21)が勤務中に交番で3回ほど性行為をしたとして処分された。
交番で性行為をした警察官は処分の対象となり、ほとんどが依願退職している。実名が出ることはなくても、全国紙やテレビ、ネットなどで何度も報じられることになる。
代償が大きいにもかかわらず、なぜやめられないのか──。元神奈川県警警察官で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこう語る。
「20~30年前だと交番に女性警察官が就くこと自体がかなり珍しかった。2009年に警視庁が女性警察官の活躍の場を広げるためにと本格的に女性警察官が交番勤務に入るようになって、男性同様に夜勤もこなすようになりました。最近は女性警察官が増えたこともあり、交番勤務の経験を積ませる機会も増えています」
交番勤務に就くと、指導役の先輩警官とペアを組むことになる。
「女性警察官の場合、交番では基本的に一人勤務はしません。先輩の男性警官とマンツーマンの勤務になります。交番勤務は女性がいる場合はほとんどが3人体制で、女性警察官はペアとして付いた男性警察官とはパトロールはもちろん、食事も休憩も一緒です。
交番の2階や事務室の奥は仮眠室になっていて、枕を置いて制服を着たまま横になって1~2時間の仮眠をします。新しい交番では仮眠室が男女別に造られているところもありますが、古い交番だと男女が同じ仮眠室で休憩することになる。そうした交番の特性も、性行為をしやすい場所にしてしまうのでしょう。たとえ仮眠の時間でも、警察官なら緊急事態が起こったらすぐに外に出られる服装で行為に及んでいるはずです」(小川氏)
交番で性行為をした警察官らは「不倫関係」だったということも特徴としてある。小川氏が語る。
「女性警察官には30~40代のベテランと組ませることが多いので、結果として相手が既婚者である確率も上がってしまう。全国に警察官は26万人いますから全員がそうではなく、なかにはそうなってしまうケースがあるということです。
交番勤務はある意味密室で、男性警察官と一緒にいる時間が長いのが不倫関係になる一因なのでは。勤務は当直、非番、休日、当直、非番、日勤の繰り返しで、24時間勤務の当直が1か月に10日ほどあります。朝の8時前に出勤し、非番になるのは翌日の昼。指導役の先輩とずっと一緒にいるので悩みを相談することもありますし、恋愛関係に発展しやすいところはあるでしょう」
19歳から1年間の交番勤務を経て地方警察署の地域課に勤務していた元警察官の吉野千夏さん(仮名、48)も、警察組織特有の上下関係が、警察官同士の不倫を生みやすいところがあると語る。
「私がいた時代は特に女性警察官の立場は弱かった。週に1回の柔道の稽古では組み手で締め付けると見せかけて身体を過剰に密着されたこともあります。月に2回ほどある飲み会では無理やりキスされそうになったり、抱きつかれたりが日常茶飯事でした。
そんななかで既婚の30代後半の巡査部長から『外で会おう』と誘われて食事をして、2回目に呼び出された時は当然のようにホテルに誘われました。先輩から言われたことを断われる雰囲気は一切なく、言われた通りにするのが当たり前でしたから、そういうものだと受け入れていました。ただ私の場合は、職場の飲み会で後ろにいた警察官に衣服を無理やりおろされて……それがきっかけで警察を辞めたので、不倫関係も長くは続きませんでした」
退職後、千夏さんはセクシー女優に転身し、現在は主婦になっている。その千夏さんから見ても、警察官の不倫カップルが交番で性行為をするケースが増えていることは想像がつくという。
「女性警察官が他の男性警察官と同じように夜勤や交番勤務をする時代になったなら、交番は“手軽にできる場所”になるでしょう。警察官からしてみれば交番は日常的にいる場所で、休憩室があって、そこに一般人が立ち入ることがない。上下関係が厳しいから、交番に他の警察官がいても口止めしやすい。
警察官は普段から柔道などで鍛えていてエネルギッシュですし。決して給料的に恵まれているわけではないので、ホテル代を節約できるという面もある。不規則な勤務形態のなかで、ものの5分くらいで済ませることができる……というのはあると思います」
もっとも甘い誘惑には棘もある。“交番での情事”は発覚しやすいのだ。前出の小川氏は言う。
「当然、周りの正義感ある同僚が密告することは多い。さらに職務上の権限を利用して関係を持っていた場合や、不倫関係がこじれたりした場合は、どちらかが誰かに相談したりすることでも発覚する。そうなると処分は免れません」
そのスリルさえも、交番での情事をやめられない理由なのか。
※週刊ポスト2022年10月21日号