日本人の2人に1人がかかるとされる「がん」。これを「予防する」のではなく「治療する」ワクチンが、2030年までに広く利用できるようになるだろうと、新型コロナウイルスのワクチン開発にも関わったドイツのバイオ企業が発表しました。【写真を見る】世界初の「がん治療ワクチン」近く実現へ mRNAで脳梗塞・心疾患治療も【まるっと!サタデー】■新型コロナのワクチン開発技術が がん研究にもー世界初の「がんワクチン」を開発しているのはドイツのバイオ企業「ビオンテック」です。新型コロナウイルスのワクチンをファイザー社と共に開発したことで知られています。

2022年10月、そのトップらがイギリスBBCの番組に出演し、「がんの治療用ワクチンは2030年までに広く利用できるようになる」と話しました。独・ビオンテック ウール・シャヒンCEO、オズレム・テュレジCMO:「私たちが『がんワクチン』開発のために何十年も研究してきたことが、新型コロナワクチン開発の追い風になりました。そして今、その開発で培った経験ががん研究に活かされています。がんの治療用ワクチンは2030年までに広く利用できるようになるでしょう」■メッセンジャーRNAの技術を応用した「がんワクチン」とは?「がんワクチン」は、新型コロナワクチンに使われた「メッセンジャーRNA」の技術を応用し、2030年以内には実現される見通しです。「ワクチン」といってもがんを予防するものではなく、がんを治療するためのものだといいます。10年以上にわたってメッセンジャーRNAを研究してきた、東京医科歯科大学の位啓史教授によると、「がんワクチン」の最大のポイントは患者ごとに最も効果が期待できるように作る「オーダーメイドワクチン」にできることだといいます。東京医科歯科大学 位啓史教授:「メッセンジャーRNAというのはたんぱく質の設計図、その情報の部分はいくらでも書き換えられる。ですから患者さんのがん組織を直接とって、その異常な部分を調べて、それに対するワクチンを1人1人に設計して、それをメッセンジャーRNAの形で投与する。この細胞は敵だぞ、やっつける相手だぞという風に体の免疫システムに認識させて治療に役立てる」「薬を作ってこれをみんな使いなさいではなく、1人1人の患者さんのがん細胞に合わせたワクチンを作ることができる。そこがメッセンジャーRNAの一番の特徴」東京医科歯科大学 位啓史教授:「『個別化医療』という言葉が一番今注目されるキーワードの1つで、 医療のあり方が変わる部分があると思います」また位教授は、手術や放射線治療、抗がん剤に続く新たな治療法として「がんワクチン」が使われるようになれば、体本来の免疫システムを使うメッセンジャーRNA治療だからこそ、抗がん剤治療に比べ副作用などの患者の体にかかる負担もかなり軽減できるだろうとしています。■「がんワクチン」はどの種類のがんに有効なのか「がんワクチン」は、どんな種類のがんに対して使用が想定されているのでしょうか。東京医科歯科大学 位啓史教授:「一番有望視されているのは皮膚がん。肺がんの一部、頭頚部がん。いくつかのタイプのがんにはもう効果が確認されていて、いま人への治療の準備が急ピッチで進んでいる状況」東京医科歯科大学 位啓史教授:「コロナパンデミックが起こらなければ、実はもう今年あたりにも第1号のがんワクチンが実用化されるというぐらいのスケジュールだったと思います。希望的な観測としてはあと1年から2年というところかなと個人的には思っています」■メッセンジャーRNAの技術はがん以外にも新型コロナワクチンで使われたメッセンジャーRNAの技術が切り開く医療の未来。ターゲットはがんだけではありません。位教授が進めている実験の映像では、メッセンジャーRNAを使った脊髄損傷治療を受けたネズミが、麻痺から回復している様子が分かります。東京医科歯科大学 位啓史教授:「脊髄損傷を起こしてしまったネズミだが足を引きずりながら歩いている。それに対してメッセンジャーRNAで治療したマウスは、一歩一歩足をしっかり動かすようになっていて、麻痺が回復してきていることが分かります」ーー将来的には脊髄損傷した人でも、例えば半身不随になった人を治せる可能性がある?東京医科歯科大学 位啓史教授:「可能性がある。それをもちろん目指してやっている」このほかにも、日本人の病気による死因3位の「脳梗塞」については、脳の神経細胞が死ぬのをメッセンジャーRNA治療でいかに抑えることができるか。また加齢によって軟骨がすり減り膝が痛む「変形性関節症」の治療についても研究が進んでいます。東京医科歯科大学 位啓史教授:「ほとんどのお年寄りの方はなってしまう病気。(治療方法は)痛みを取るための薬を入れたり、もうあとは運動しなさいリハビリしなさい、もう人工関節を入れましょう、そういう治療しかなかった。メッセンジャーRNAを投与すると軟骨の壊れ方が非常に抑えられる」ーー何年ぐらいで治験に入ろうとお考えですか?東京医科歯科大学 位啓史教授:「2024年に患者さんの臨床試験を始めさせていただくということで準備を進めています。メッセンジャーRNAはどんなタンパク質でも作ることができるので、全く新しいタイプの薬として今後使われるようになる。本当に今までできなかったことがメッセンジャーRNAを使うことによってできるようになる。 (医療)革新の1つと言っていいと思う」■「メッセンジャーRNAが多くの病気に使われるようになる」新型コロナワクチンに使われたメッセンジャーRNAを応用すれば、様々な病気を予防したり、治療したりできるようになる・・・。現在「がん治療ワクチン」の開発を進めているビオンテック社のカタリン・カリコ上級副社長も、変わる医療の未来をこう話しています。独・ビオンテック カタリン・カリコ上級副社長:「ある種の肝臓疾患や心臓疾患の治療にもなりますし、メッセンジャーRNAがとても多くの異なる用途や他の病気に使われるようになるでしょう」(まるっと!サタデー 2022年10月29日放送より)
日本人の2人に1人がかかるとされる「がん」。これを「予防する」のではなく「治療する」ワクチンが、2030年までに広く利用できるようになるだろうと、新型コロナウイルスのワクチン開発にも関わったドイツのバイオ企業が発表しました。
【写真を見る】世界初の「がん治療ワクチン」近く実現へ mRNAで脳梗塞・心疾患治療も【まるっと!サタデー】■新型コロナのワクチン開発技術が がん研究にもー世界初の「がんワクチン」を開発しているのはドイツのバイオ企業「ビオンテック」です。新型コロナウイルスのワクチンをファイザー社と共に開発したことで知られています。

2022年10月、そのトップらがイギリスBBCの番組に出演し、「がんの治療用ワクチンは2030年までに広く利用できるようになる」と話しました。独・ビオンテック ウール・シャヒンCEO、オズレム・テュレジCMO:「私たちが『がんワクチン』開発のために何十年も研究してきたことが、新型コロナワクチン開発の追い風になりました。そして今、その開発で培った経験ががん研究に活かされています。がんの治療用ワクチンは2030年までに広く利用できるようになるでしょう」■メッセンジャーRNAの技術を応用した「がんワクチン」とは?「がんワクチン」は、新型コロナワクチンに使われた「メッセンジャーRNA」の技術を応用し、2030年以内には実現される見通しです。「ワクチン」といってもがんを予防するものではなく、がんを治療するためのものだといいます。10年以上にわたってメッセンジャーRNAを研究してきた、東京医科歯科大学の位啓史教授によると、「がんワクチン」の最大のポイントは患者ごとに最も効果が期待できるように作る「オーダーメイドワクチン」にできることだといいます。東京医科歯科大学 位啓史教授:「メッセンジャーRNAというのはたんぱく質の設計図、その情報の部分はいくらでも書き換えられる。ですから患者さんのがん組織を直接とって、その異常な部分を調べて、それに対するワクチンを1人1人に設計して、それをメッセンジャーRNAの形で投与する。この細胞は敵だぞ、やっつける相手だぞという風に体の免疫システムに認識させて治療に役立てる」「薬を作ってこれをみんな使いなさいではなく、1人1人の患者さんのがん細胞に合わせたワクチンを作ることができる。そこがメッセンジャーRNAの一番の特徴」東京医科歯科大学 位啓史教授:「『個別化医療』という言葉が一番今注目されるキーワードの1つで、 医療のあり方が変わる部分があると思います」また位教授は、手術や放射線治療、抗がん剤に続く新たな治療法として「がんワクチン」が使われるようになれば、体本来の免疫システムを使うメッセンジャーRNA治療だからこそ、抗がん剤治療に比べ副作用などの患者の体にかかる負担もかなり軽減できるだろうとしています。■「がんワクチン」はどの種類のがんに有効なのか「がんワクチン」は、どんな種類のがんに対して使用が想定されているのでしょうか。東京医科歯科大学 位啓史教授:「一番有望視されているのは皮膚がん。肺がんの一部、頭頚部がん。いくつかのタイプのがんにはもう効果が確認されていて、いま人への治療の準備が急ピッチで進んでいる状況」東京医科歯科大学 位啓史教授:「コロナパンデミックが起こらなければ、実はもう今年あたりにも第1号のがんワクチンが実用化されるというぐらいのスケジュールだったと思います。希望的な観測としてはあと1年から2年というところかなと個人的には思っています」■メッセンジャーRNAの技術はがん以外にも新型コロナワクチンで使われたメッセンジャーRNAの技術が切り開く医療の未来。ターゲットはがんだけではありません。位教授が進めている実験の映像では、メッセンジャーRNAを使った脊髄損傷治療を受けたネズミが、麻痺から回復している様子が分かります。東京医科歯科大学 位啓史教授:「脊髄損傷を起こしてしまったネズミだが足を引きずりながら歩いている。それに対してメッセンジャーRNAで治療したマウスは、一歩一歩足をしっかり動かすようになっていて、麻痺が回復してきていることが分かります」ーー将来的には脊髄損傷した人でも、例えば半身不随になった人を治せる可能性がある?東京医科歯科大学 位啓史教授:「可能性がある。それをもちろん目指してやっている」このほかにも、日本人の病気による死因3位の「脳梗塞」については、脳の神経細胞が死ぬのをメッセンジャーRNA治療でいかに抑えることができるか。また加齢によって軟骨がすり減り膝が痛む「変形性関節症」の治療についても研究が進んでいます。東京医科歯科大学 位啓史教授:「ほとんどのお年寄りの方はなってしまう病気。(治療方法は)痛みを取るための薬を入れたり、もうあとは運動しなさいリハビリしなさい、もう人工関節を入れましょう、そういう治療しかなかった。メッセンジャーRNAを投与すると軟骨の壊れ方が非常に抑えられる」ーー何年ぐらいで治験に入ろうとお考えですか?東京医科歯科大学 位啓史教授:「2024年に患者さんの臨床試験を始めさせていただくということで準備を進めています。メッセンジャーRNAはどんなタンパク質でも作ることができるので、全く新しいタイプの薬として今後使われるようになる。本当に今までできなかったことがメッセンジャーRNAを使うことによってできるようになる。 (医療)革新の1つと言っていいと思う」■「メッセンジャーRNAが多くの病気に使われるようになる」新型コロナワクチンに使われたメッセンジャーRNAを応用すれば、様々な病気を予防したり、治療したりできるようになる・・・。現在「がん治療ワクチン」の開発を進めているビオンテック社のカタリン・カリコ上級副社長も、変わる医療の未来をこう話しています。独・ビオンテック カタリン・カリコ上級副社長:「ある種の肝臓疾患や心臓疾患の治療にもなりますし、メッセンジャーRNAがとても多くの異なる用途や他の病気に使われるようになるでしょう」(まるっと!サタデー 2022年10月29日放送より)
世界初の「がんワクチン」を開発しているのはドイツのバイオ企業「ビオンテック」です。新型コロナウイルスのワクチンをファイザー社と共に開発したことで知られています。
2022年10月、そのトップらがイギリスBBCの番組に出演し、「がんの治療用ワクチンは2030年までに広く利用できるようになる」と話しました。
独・ビオンテック ウール・シャヒンCEO、オズレム・テュレジCMO:「私たちが『がんワクチン』開発のために何十年も研究してきたことが、新型コロナワクチン開発の追い風になりました。そして今、その開発で培った経験ががん研究に活かされています。がんの治療用ワクチンは2030年までに広く利用できるようになるでしょう」
「がんワクチン」は、新型コロナワクチンに使われた「メッセンジャーRNA」の技術を応用し、2030年以内には実現される見通しです。「ワクチン」といってもがんを予防するものではなく、がんを治療するためのものだといいます。
10年以上にわたってメッセンジャーRNAを研究してきた、東京医科歯科大学の位啓史教授によると、「がんワクチン」の最大のポイントは患者ごとに最も効果が期待できるように作る「オーダーメイドワクチン」にできることだといいます。
東京医科歯科大学 位啓史教授:「メッセンジャーRNAというのはたんぱく質の設計図、その情報の部分はいくらでも書き換えられる。ですから患者さんのがん組織を直接とって、その異常な部分を調べて、それに対するワクチンを1人1人に設計して、それをメッセンジャーRNAの形で投与する。この細胞は敵だぞ、やっつける相手だぞという風に体の免疫システムに認識させて治療に役立てる」「薬を作ってこれをみんな使いなさいではなく、1人1人の患者さんのがん細胞に合わせたワクチンを作ることができる。そこがメッセンジャーRNAの一番の特徴」
東京医科歯科大学 位啓史教授:「『個別化医療』という言葉が一番今注目されるキーワードの1つで、 医療のあり方が変わる部分があると思います」
また位教授は、手術や放射線治療、抗がん剤に続く新たな治療法として「がんワクチン」が使われるようになれば、体本来の免疫システムを使うメッセンジャーRNA治療だからこそ、抗がん剤治療に比べ副作用などの患者の体にかかる負担もかなり軽減できるだろうとしています。
「がんワクチン」は、どんな種類のがんに対して使用が想定されているのでしょうか。
東京医科歯科大学 位啓史教授:「一番有望視されているのは皮膚がん。肺がんの一部、頭頚部がん。いくつかのタイプのがんにはもう効果が確認されていて、いま人への治療の準備が急ピッチで進んでいる状況」
東京医科歯科大学 位啓史教授:「コロナパンデミックが起こらなければ、実はもう今年あたりにも第1号のがんワクチンが実用化されるというぐらいのスケジュールだったと思います。希望的な観測としてはあと1年から2年というところかなと個人的には思っています」
新型コロナワクチンで使われたメッセンジャーRNAの技術が切り開く医療の未来。ターゲットはがんだけではありません。位教授が進めている実験の映像では、メッセンジャーRNAを使った脊髄損傷治療を受けたネズミが、麻痺から回復している様子が分かります。
東京医科歯科大学 位啓史教授:「脊髄損傷を起こしてしまったネズミだが足を引きずりながら歩いている。それに対してメッセンジャーRNAで治療したマウスは、一歩一歩足をしっかり動かすようになっていて、麻痺が回復してきていることが分かります」
ーー将来的には脊髄損傷した人でも、例えば半身不随になった人を治せる可能性がある?
東京医科歯科大学 位啓史教授:「可能性がある。それをもちろん目指してやっている」
このほかにも、日本人の病気による死因3位の「脳梗塞」については、脳の神経細胞が死ぬのをメッセンジャーRNA治療でいかに抑えることができるか。また加齢によって軟骨がすり減り膝が痛む「変形性関節症」の治療についても研究が進んでいます。
東京医科歯科大学 位啓史教授:「ほとんどのお年寄りの方はなってしまう病気。(治療方法は)痛みを取るための薬を入れたり、もうあとは運動しなさいリハビリしなさい、もう人工関節を入れましょう、そういう治療しかなかった。メッセンジャーRNAを投与すると軟骨の壊れ方が非常に抑えられる」
ーー何年ぐらいで治験に入ろうとお考えですか?
東京医科歯科大学 位啓史教授:「2024年に患者さんの臨床試験を始めさせていただくということで準備を進めています。メッセンジャーRNAはどんなタンパク質でも作ることができるので、全く新しいタイプの薬として今後使われるようになる。本当に今までできなかったことがメッセンジャーRNAを使うことによってできるようになる。 (医療)革新の1つと言っていいと思う」
新型コロナワクチンに使われたメッセンジャーRNAを応用すれば、様々な病気を予防したり、治療したりできるようになる・・・。
現在「がん治療ワクチン」の開発を進めているビオンテック社のカタリン・カリコ上級副社長も、変わる医療の未来をこう話しています。
独・ビオンテック カタリン・カリコ上級副社長:「ある種の肝臓疾患や心臓疾患の治療にもなりますし、メッセンジャーRNAがとても多くの異なる用途や他の病気に使われるようになるでしょう」