指の先端が丸く広がり、太鼓のバチ状に変形してしまう“バチ指”。世界でも数少ない症状で、重大な疾患を持つ人が稀になると言われている。美容師の吉田彰吾さんもバチ指を持つ1人だ。彼はその姿をあえてTikTokやYoutubeで配信し、大きな反響を呼んでいる。心ないコメントがくることも多いなかで、それでも動画を発信し続けるのは、吉田さんが伝えたい考えや想いがあるからだという。
【画像】“バチ指”の特徴を活かした吉田さんのヘッドスパ、アシスタント時代から「指圧が気持ちいい」と評判■兄がきっかけで気づいた“バチ指” クラスメイトの言葉に傷つくことも YouTubeショート動画「実は兄弟でバチ指」は566万再生されるほど大きな反響を呼び、1.6万件のコメントが寄せられた。そこには「『バチ指』というものを初めて知った」という声が多く寄せられる中で、「閲覧注意」「気持ち悪い」などのネガティブなコメントも散見され、さまざまな意見が飛び交った。吉田さん自身はこんなに驚かれるとは思っていなかったという。「『グロテスク』とか『炎上目的で載せている』とか結構言われますけど、僕はずっとこれで生きてきたので。形がちょっと違うというだけで、ここまで人は反応を示すものなんだと驚いたのが率直な感想です」「障害やコンプレックスでお金稼ぎをするのは最低だ」などと、ときには厳しい意見も寄せられるが、そういったコメントにも吉田さんは動画のなかで真摯に答えている。「『見た目が気持ち悪い』という誹謗中傷もありますが、それよりもSNSの発信の仕方を指摘されることが多いです。『見た目にインパクトがある動画は苦手な人が多く不快に思う人がいる』などと言われることもありますが、『いろんな人が自由に発信しているのに、なぜそんなことを気にしなければいけないの?』というのが本音です」 顔が見えない状況になると、より同調圧力が強くなるのは、SNSの怖さでもある。「YouTubeではものすごく言われますけど、TikTokとかInstagramで見るとまた違う反応なんです。だから、『ほかの人が言ったら自分も言っていい』という感覚に陥るのは危険だなって感じますね」 吉田さんがバチ指の症状に気づいたのは思春期にちょうど差し掛かった頃。もともと肥厚性皮膚骨膜症という指定難病を持っており、その症状の1つとしてバチ指が表出した。「兄が中学3年生くらいの頃に、指がおかしいということで病院に行く機会があって、そのときに僕も確認してみたら、兄ほどではないけど、指の形が変わり始めて違和感があることに気づいて…。それが小学生のときでした」 ただ、今になって思い返してみると、小学校の低学年の頃にも異変に気づいたタイミングはあった。「絵を描く授業で、手のデッサンをする機会があったんです。絵は得意だったんですが、手の絵だけ指の形がうまく描けなかった。自分では違和感に気づいていないんだけど、なんとなく(周りと)形が違うという認識は小さな頃からあった印象です」 同級生の何気ない言葉にショックを受けたこともある。なかでも、中学生のときにクラスメイトの女子が発した「手が綺麗な男の人が好き」という一言は衝撃的だった。「中学校の高学年くらいまで、自分が気にしていたからこそ、思春期の頃はショックでした。自分が気にしているからこそ、テレビに出てくる有名人の指などもいちいち目について過敏になっていましたね」■「そんなに周りは気にしていない」 開き直ったことで得られたコンプレックスへの価値観 思春期の頃は、「治せるものなら治したい」とバチ指がコンプレックスだったが、今では「これはこれで一緒に付き合っていける」と語る。そう思うようになったのは、SNSを発信するようになってからだという。「体に何かしらの特徴があったり、体以外でも特技などがあったりしたほうが、たくさんの人の視界に入ることができる。きっかけが多いという点では、体に特徴があるほうが利点かなと感じることは多いです。あと、全国の病院でも診てくれる先生がなかなかいないレベルの病気なので、同じ病気の人とつながれて、症状の共有や情報交換ができるのもSNSのいいところですね」 今では、ネイルアートを楽しむまでに。バチ指であることを受け入れられるようになったのは、高校生の頃の体験が影響している。「高校の中盤から後半くらいから、あえて自分から指のことをネタにし始めるようになりました。開き直ったほうが周囲の反応が良かった。それからは「そんなに周りは気にしていないんだ」と思えるようになりました。だからSNSでも指を全面的に生かして、自分の持っている体や武器を最大限に生かそうと思いました」■「自分の体のことを卑下してほしくない」 SNSの発信を通して伝えていきたい想い 現在、美容師をしている吉田さん。中学1年生の頃に初めて行った美容室で、担当してくれた美容師への憧れから、夢に向かって歩むも、手先の器用さを問われる美容師への道は試練の連続だった。「美容師を目指していくなかで、自分だけちょっと変えなくてはいけない部分はありました。ロットがうまく巻けないとか、ハサミのリングに指が入らないとか。指の形が原因で人よりも遠回りしたこともありましたが、そのたびにどうしたらできるようになるのか、自分なりに工夫して乗り越えてきました」 日常生活のなかでも、鼻の穴やマグカップの取っ手に指が入らない、ボウリングができない、グーが握れないなど、人にとっての“当たり前”が難しく感じる場面は少なくない。「手袋や指輪も一般的なサイズのものは合わないですし、作業的な面では、ページをめくったり、キーボードを打ったり、爪楊枝を一本取ったり、小銭を拾ったりといった細かい作業が難しいです。みなさんが指先を使ってしていることが、僕の場合は指の面積が広いのでミスが多いし時間もかかってしまいます」 それでも、バチ指でよかったと感じることもある。「アシスタントの頃から、ヘッドスパやマッサージが気持ちいいと褒められることが多かったです。また、「あの指の子だ」とか「マッサージが上手な子ね」みたいな感じで認識してもらいやすかったです。体の特徴によって覚えてもらえるきっかけになるのは、美容師になった今でも大きなメリットですね」 バチ指“であるがゆえに”出来ないことは自分なりに出来るように最善を尽くし、バチ指“だからこそ”プラスになることを模索してきた結果なのだ。「僕がバチ指で悩んだように、人にはそれぞれコンプレックスがあります。それについては解決できるものに関しては、できることをすべてやればいいと考えています。例えば、見た目にコンプレックスがあるのなら、その劣等感に引っ張られていろんなことができなくなるくらいなら、整形したっていいと思う。悲観するくらいなら明るくなれる方法を考えたほうが幸せになれるから」 どんな意見があろうとも、今後もSNSなどを通して、「『自分の体がこうだからできない』といった思いをする人が少なくなるような発信をしていきたい」と吉田さんは意気込む。「自分の体のことを卑下するようなことがなく、前向きにいろんなことにチャレンジできる人が増えるきっかけになれたらいいなと思います」
■兄がきっかけで気づいた“バチ指” クラスメイトの言葉に傷つくことも
YouTubeショート動画「実は兄弟でバチ指」は566万再生されるほど大きな反響を呼び、1.6万件のコメントが寄せられた。そこには「『バチ指』というものを初めて知った」という声が多く寄せられる中で、「閲覧注意」「気持ち悪い」などのネガティブなコメントも散見され、さまざまな意見が飛び交った。吉田さん自身はこんなに驚かれるとは思っていなかったという。
「『グロテスク』とか『炎上目的で載せている』とか結構言われますけど、僕はずっとこれで生きてきたので。形がちょっと違うというだけで、ここまで人は反応を示すものなんだと驚いたのが率直な感想です」
「障害やコンプレックスでお金稼ぎをするのは最低だ」などと、ときには厳しい意見も寄せられるが、そういったコメントにも吉田さんは動画のなかで真摯に答えている。
「『見た目が気持ち悪い』という誹謗中傷もありますが、それよりもSNSの発信の仕方を指摘されることが多いです。『見た目にインパクトがある動画は苦手な人が多く不快に思う人がいる』などと言われることもありますが、『いろんな人が自由に発信しているのに、なぜそんなことを気にしなければいけないの?』というのが本音です」
顔が見えない状況になると、より同調圧力が強くなるのは、SNSの怖さでもある。
「YouTubeではものすごく言われますけど、TikTokとかInstagramで見るとまた違う反応なんです。だから、『ほかの人が言ったら自分も言っていい』という感覚に陥るのは危険だなって感じますね」
吉田さんがバチ指の症状に気づいたのは思春期にちょうど差し掛かった頃。もともと肥厚性皮膚骨膜症という指定難病を持っており、その症状の1つとしてバチ指が表出した。
「兄が中学3年生くらいの頃に、指がおかしいということで病院に行く機会があって、そのときに僕も確認してみたら、兄ほどではないけど、指の形が変わり始めて違和感があることに気づいて…。それが小学生のときでした」
ただ、今になって思い返してみると、小学校の低学年の頃にも異変に気づいたタイミングはあった。
「絵を描く授業で、手のデッサンをする機会があったんです。絵は得意だったんですが、手の絵だけ指の形がうまく描けなかった。自分では違和感に気づいていないんだけど、なんとなく(周りと)形が違うという認識は小さな頃からあった印象です」
同級生の何気ない言葉にショックを受けたこともある。なかでも、中学生のときにクラスメイトの女子が発した「手が綺麗な男の人が好き」という一言は衝撃的だった。
「中学校の高学年くらいまで、自分が気にしていたからこそ、思春期の頃はショックでした。自分が気にしているからこそ、テレビに出てくる有名人の指などもいちいち目について過敏になっていましたね」
■「そんなに周りは気にしていない」 開き直ったことで得られたコンプレックスへの価値観
思春期の頃は、「治せるものなら治したい」とバチ指がコンプレックスだったが、今では「これはこれで一緒に付き合っていける」と語る。そう思うようになったのは、SNSを発信するようになってからだという。
「体に何かしらの特徴があったり、体以外でも特技などがあったりしたほうが、たくさんの人の視界に入ることができる。きっかけが多いという点では、体に特徴があるほうが利点かなと感じることは多いです。あと、全国の病院でも診てくれる先生がなかなかいないレベルの病気なので、同じ病気の人とつながれて、症状の共有や情報交換ができるのもSNSのいいところですね」
今では、ネイルアートを楽しむまでに。バチ指であることを受け入れられるようになったのは、高校生の頃の体験が影響している。
「高校の中盤から後半くらいから、あえて自分から指のことをネタにし始めるようになりました。開き直ったほうが周囲の反応が良かった。それからは「そんなに周りは気にしていないんだ」と思えるようになりました。だからSNSでも指を全面的に生かして、自分の持っている体や武器を最大限に生かそうと思いました」
■「自分の体のことを卑下してほしくない」 SNSの発信を通して伝えていきたい想い
現在、美容師をしている吉田さん。中学1年生の頃に初めて行った美容室で、担当してくれた美容師への憧れから、夢に向かって歩むも、手先の器用さを問われる美容師への道は試練の連続だった。
「美容師を目指していくなかで、自分だけちょっと変えなくてはいけない部分はありました。ロットがうまく巻けないとか、ハサミのリングに指が入らないとか。指の形が原因で人よりも遠回りしたこともありましたが、そのたびにどうしたらできるようになるのか、自分なりに工夫して乗り越えてきました」
日常生活のなかでも、鼻の穴やマグカップの取っ手に指が入らない、ボウリングができない、グーが握れないなど、人にとっての“当たり前”が難しく感じる場面は少なくない。
「手袋や指輪も一般的なサイズのものは合わないですし、作業的な面では、ページをめくったり、キーボードを打ったり、爪楊枝を一本取ったり、小銭を拾ったりといった細かい作業が難しいです。みなさんが指先を使ってしていることが、僕の場合は指の面積が広いのでミスが多いし時間もかかってしまいます」
それでも、バチ指でよかったと感じることもある。
「アシスタントの頃から、ヘッドスパやマッサージが気持ちいいと褒められることが多かったです。また、「あの指の子だ」とか「マッサージが上手な子ね」みたいな感じで認識してもらいやすかったです。体の特徴によって覚えてもらえるきっかけになるのは、美容師になった今でも大きなメリットですね」
バチ指“であるがゆえに”出来ないことは自分なりに出来るように最善を尽くし、バチ指“だからこそ”プラスになることを模索してきた結果なのだ。
「僕がバチ指で悩んだように、人にはそれぞれコンプレックスがあります。それについては解決できるものに関しては、できることをすべてやればいいと考えています。例えば、見た目にコンプレックスがあるのなら、その劣等感に引っ張られていろんなことができなくなるくらいなら、整形したっていいと思う。悲観するくらいなら明るくなれる方法を考えたほうが幸せになれるから」
どんな意見があろうとも、今後もSNSなどを通して、「『自分の体がこうだからできない』といった思いをする人が少なくなるような発信をしていきたい」と吉田さんは意気込む。