本格的な冬を迎え、雪道での車の運転に注意が必要になっている。大雪で車が立ち往生すると、ドライバーらは長時間にわたって車の中に閉じ込められ、命の危険にさらされる恐れもある。立ち往生に直面した時、どうすればよいのか。新潟県で体験したばかりの人の話などを基に、必要なグッズや対処方法を探ってみた。
転びやすい場所は「ぬ・か・づけ」 雪道の歩き方 新潟県の山沿いに住む30代の女性会社員(ブログとツイッターのハンドルネーム「やなぎ」)は19日、長岡市の勤務先から1人で帰宅途中、大雪による車の立ち往生に巻き込まれた。普段は約30分の道のりが約11時間半もかかった。やなぎさんはその一部始終をブログにつづった。

雪は18日夜から降っており、19日朝の出勤時、2020年12月に県内の高速道路で立ち往生があったことが頭をよぎり、非常食のクッキーと防災ポーチを車に持ち込んだ。体調不良で午後1時ごろに会社を早退したが、国道8号から17号にかけての通勤ルートで立ち往生が起きた。「1時間に1台分進めばラッキー」というほどの渋滞に。夕方、沿道にあったコンビニエンスストアで、ペットボトル入りのお茶、サンドイッチ、生理用品を買うことができたが、店頭の商品はほとんどなくなっていた。 夜になると、ガソリンが減ってきたため、エンジンを止めることもあった。寒さが厳しくなる中で、非常食の7年保存クッキーを取り出し、空腹をしのいだ。「『この世で一番うまいクッキーでは?』と思うくらいおいしくて、下がっていた気持ちが少し上がりました」。防災ポーチの携帯トイレで用を足し、動けなくなった前の車を押す時に、グリップ付きの手袋が役立った。 車内では孤独感にさいなまれた。スマートフォンで母親や夫と連絡を取り合い、SNSのフォロワーにも励まされた。車で充電できるコードを積んでおり、バッテリーを持たせることができた。帰宅できたのは日付が変わって20日午前0時半ごろ。長風呂で冷え切った体を温めた。 やなぎさんが防災ポーチを買ったのは、好きなキャラクターがデザインされていたからだが、「使ってこそ真価を感じました。ぜひ『もしも』に備えてほしいです。いつ自分にその『もしも』が来るか分かりません」。車に積んでおけばよかったものとして、生理用品(やなぎさんは生理1日目だった)▽靴下▽ブランケット▽水▽カイロ――を挙げる。特に水については、トイレの回数を増やさないよう飲まないようにしていたが、帰宅後は頭痛や便秘に悩まされたという。 ◇ ◇ ◇ やなぎさんの防災グッズを作ったのは、防災用品メーカー「ファシル」(静岡市)。八木法明社長(59)は、13年3月に北海道湧別町で吹雪に見舞われて車から出た父親(当時53歳)が小学3年の長女を抱きかかえたまま凍死したニュースに心を痛め、車載用防災セットの開発に乗り出した。 標準タイプの「ボウサイブロック」(税込み7480円)は、使い捨て携帯トイレ▽防寒や雨具として使えるポンチョ▽7年保存水▽7年保存クッキー▽長期保存用カイロ――など計12点入り。大きさは幅26センチ、奥行き12・8センチ、高さ16センチで、重さ1・3キロ。ホンダや三菱、ダイハツなどの自動車メーカーで新車のオプションとして採用されている。 今年5月には、物流・運送業界向けに30人分の防災用品が入った「シェアする防災セット」の販売を始めた。車体に貼る「防災用品を備えています」と書いたマークも付属する。被災したドライバーだけではなく、周りの人々にも防災用品を配り、社会貢献につなげるねらいがある。 八木社長は「防災セットは、災害の多い日本ではお守りのようなもの。自宅に備えている人は多いが、車に載せている人は少ない。防災用品を分け合い、助け合うという考え方を全国に広げていきたい」と話す。 雪道で立ち往生が起きる主な発端は、タイヤが空回りして前に進めなくなる「スタック」という現象だ。スコップで雪を取り除いたり、タイヤを前後にゆりかごのように動かしたりすることで、抜け出せることもある。だが、自力で脱出しようとしても状況が悪化することも多く、どうしようもなさそうなら日本自動車連盟(JAF)などのロードサービスに連絡する。 豪雪で車の身動きが取れなくなった場合、命に関わるのが、マフラーの排気口が雪でふさがれることによる一酸化炭素中毒だ。JAF関東本部ロードサービス部技術課の西田基之さんは「車の周りの雪をこまめにかき、マフラーの周りを排気できるようにしておくべきです」と助言する。 ガソリンがなくなってエンジンが止まるのに備え、防寒着を用意しておきたい。ロードサービスが救援に駆け付けるまでに数時間かかることもある。 「雪道の怖いところは、スタッドレスタイヤに交換したり、チェーンを巻く練習をしたりして、自分がいくら準備しても、周りの車が動かなくなれば、自分ではどうにもならなくなることです」と西田さん。不要不急な用事であれば運転しない勇気が必要だという。【木村健二】
新潟県の山沿いに住む30代の女性会社員(ブログとツイッターのハンドルネーム「やなぎ」)は19日、長岡市の勤務先から1人で帰宅途中、大雪による車の立ち往生に巻き込まれた。普段は約30分の道のりが約11時間半もかかった。やなぎさんはその一部始終をブログにつづった。
雪は18日夜から降っており、19日朝の出勤時、2020年12月に県内の高速道路で立ち往生があったことが頭をよぎり、非常食のクッキーと防災ポーチを車に持ち込んだ。体調不良で午後1時ごろに会社を早退したが、国道8号から17号にかけての通勤ルートで立ち往生が起きた。「1時間に1台分進めばラッキー」というほどの渋滞に。夕方、沿道にあったコンビニエンスストアで、ペットボトル入りのお茶、サンドイッチ、生理用品を買うことができたが、店頭の商品はほとんどなくなっていた。
夜になると、ガソリンが減ってきたため、エンジンを止めることもあった。寒さが厳しくなる中で、非常食の7年保存クッキーを取り出し、空腹をしのいだ。「『この世で一番うまいクッキーでは?』と思うくらいおいしくて、下がっていた気持ちが少し上がりました」。防災ポーチの携帯トイレで用を足し、動けなくなった前の車を押す時に、グリップ付きの手袋が役立った。
車内では孤独感にさいなまれた。スマートフォンで母親や夫と連絡を取り合い、SNSのフォロワーにも励まされた。車で充電できるコードを積んでおり、バッテリーを持たせることができた。帰宅できたのは日付が変わって20日午前0時半ごろ。長風呂で冷え切った体を温めた。
やなぎさんが防災ポーチを買ったのは、好きなキャラクターがデザインされていたからだが、「使ってこそ真価を感じました。ぜひ『もしも』に備えてほしいです。いつ自分にその『もしも』が来るか分かりません」。車に積んでおけばよかったものとして、生理用品(やなぎさんは生理1日目だった)▽靴下▽ブランケット▽水▽カイロ――を挙げる。特に水については、トイレの回数を増やさないよう飲まないようにしていたが、帰宅後は頭痛や便秘に悩まされたという。
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やなぎさんの防災グッズを作ったのは、防災用品メーカー「ファシル」(静岡市)。八木法明社長(59)は、13年3月に北海道湧別町で吹雪に見舞われて車から出た父親(当時53歳)が小学3年の長女を抱きかかえたまま凍死したニュースに心を痛め、車載用防災セットの開発に乗り出した。
標準タイプの「ボウサイブロック」(税込み7480円)は、使い捨て携帯トイレ▽防寒や雨具として使えるポンチョ▽7年保存水▽7年保存クッキー▽長期保存用カイロ――など計12点入り。大きさは幅26センチ、奥行き12・8センチ、高さ16センチで、重さ1・3キロ。ホンダや三菱、ダイハツなどの自動車メーカーで新車のオプションとして採用されている。
今年5月には、物流・運送業界向けに30人分の防災用品が入った「シェアする防災セット」の販売を始めた。車体に貼る「防災用品を備えています」と書いたマークも付属する。被災したドライバーだけではなく、周りの人々にも防災用品を配り、社会貢献につなげるねらいがある。
八木社長は「防災セットは、災害の多い日本ではお守りのようなもの。自宅に備えている人は多いが、車に載せている人は少ない。防災用品を分け合い、助け合うという考え方を全国に広げていきたい」と話す。
雪道で立ち往生が起きる主な発端は、タイヤが空回りして前に進めなくなる「スタック」という現象だ。スコップで雪を取り除いたり、タイヤを前後にゆりかごのように動かしたりすることで、抜け出せることもある。だが、自力で脱出しようとしても状況が悪化することも多く、どうしようもなさそうなら日本自動車連盟(JAF)などのロードサービスに連絡する。
豪雪で車の身動きが取れなくなった場合、命に関わるのが、マフラーの排気口が雪でふさがれることによる一酸化炭素中毒だ。JAF関東本部ロードサービス部技術課の西田基之さんは「車の周りの雪をこまめにかき、マフラーの周りを排気できるようにしておくべきです」と助言する。
ガソリンがなくなってエンジンが止まるのに備え、防寒着を用意しておきたい。ロードサービスが救援に駆け付けるまでに数時間かかることもある。
「雪道の怖いところは、スタッドレスタイヤに交換したり、チェーンを巻く練習をしたりして、自分がいくら準備しても、周りの車が動かなくなれば、自分ではどうにもならなくなることです」と西田さん。不要不急な用事であれば運転しない勇気が必要だという。【木村健二】