定年延長や廃止を検討する企業が出始め、定年後再雇用が当たり前になりつつある昨今。けれど週刊SPA!は「断固NO」。60歳で颯爽と会社を去り、充実した老後生活に突入するのだ。そのためには当然準備が必要。明るい老後を叶えるべく60歳で会社を去る方法を徹底調査。
今回はエコノミストの野尻哲史氏と生活経済ジャーナリストのいちのせかつみ氏に、生活水準を保ちつつ生活コストを下げる、安く暮らせる地方暮らしについて解説してもらった。
◆安く暮らせる地方を検討
年金と貯蓄で生活するにしても、かつかつでは自由とは言えない。でも、生活水準を保ちつつ生活コストを下げる。そんな妙手はあるのか。退職後の生活を研究するエコノミスト・野尻哲史氏は、3大都市(東名阪)以外の県庁所在地への移住を推奨する。
野尻氏が’22年2月に60代の6000人を対象に行った独自の調査と公的統計を基に分析した結果から、オススメ地方都市をあげる。
<老後にオススメの地方都市ベスト10>
1 熊本市2 岐阜市3 鹿児島市4 松山市5 福岡市6 長野市7 奈良市8 和歌山市9 広島市10 那覇市
「第1位の熊本市や第2位の岐阜市は、東京と比べて家賃は半額以下で物価も4%ほど安いです。気候や自然環境が良く、生活を支える食べ物が絶品という声が目立ちました」
実際、総務省統計局「家計調査」を見ると、熊本市での月の食費は5万7727円で、東京23区より2万6000円近く安い。
◆2000万円以上お得!地方暮らしで自由を謳歌
また住宅金融支援機構によると、マンションの平均購入価格は、熊本市が3258万円(平均面積74.2屐砲紡个掘東京都は5392万円(平均面積56.5屐砲函2000万円以上も安くマンションを購入できる。
「コンパクトシティを標榜する第4位の松山市や第5位の福岡市は、徒歩圏内に公共施設や商業施設がまとまっていて生活がしやすいです。特に、松山市は路面電車が走っていて、段差がほとんどないので足腰の弱い高齢者に優しい」(前出・野尻哲史氏)
◆定年退職後のイメトレをしてみよう
60歳で定年退職して、何の下調べもせず地方都市に移住すれば、時間とお金をドブに捨てかねない。「まずはイメトレ」と語るのは、地方移住に詳しい生活経済ジャーナリスト・いちのせかつみ氏だ。
「10~12時は将棋教室など、移住先でのタイムスケジュールを24時間時計に落とし込みます。これを1週間分作成。そうすれば、月のおおまかな支出が把握できます」
次いで、24時間時計の内容を実現できそうな地方の県庁所在地を探していく。
◆現地の人と触れ合う機会を持ってみよう
「移住者への行政サービスや、先人の動画から3都市くらいに絞ります。ただ、移住先の県民性と相性が悪いと“豊かさ”は遠のくので、ボランティア活動やお試し移住体験ツアーに参加するなど、現地の人と触れ合う機会を持ちましょう。
ウイークリーマンションを利用して現地で実際に生活してみるのもオススメです」(前出・いちのせかつみ氏)
◆賃貸で1年ほど住んでから決めてからも遅くはない
移住先を訪れる際は、「交通インフラや病院・公共施設の場所は必ず確認」とは野尻氏。
一方で「地域に馴染めるかすぐにはわからないので、まずは賃貸で1年ほど住むのもあり」とは、いちのせ氏。“こんなはずじゃ”の数を減らすためにも、何となくでの地方都市移住は避けたほうがよさそうだ。
【エコノミスト 野尻哲史氏】フィンウェル研究所代表。地方都市移住など、退職後の生活に関する提言を行う。著書に『「老後の資産形成をゼッタイ始める!」と思える本』(扶桑社)
【生活経済ジャーナリスト いちのせかつみ氏】市野瀬トータルコンサルタント代表。大阪大谷大学や高知大学で非常勤講師を務める。ファイナンシャルプランナーとして新聞や雑誌で「家計簿診断」を連載中
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/杉原洋平 モデル/丹羽俊輔 野田順久 山村ひびき