Q:沖縄県には米軍の基地だけでなく、自衛隊の基地も置かれているの?
共働きで月収17万円 母、再びよぎった夜の仕事 コロナで沖縄は今 A:そうです。沖縄は1972年に日本に復帰するまで27年間、米国が統治し、米軍が駐留していました。復帰した後も米軍は残りましたが、新たに日本の自衛隊も置かれることになりました。沖縄県によると、2021年3月末時点で、県内に陸上自衛隊や海上自衛隊、航空自衛隊などの55施設があり、約8200人の自衛官がいます。

Q:最近は中国に近い島にも新しく自衛隊の基地を造っていると聞いたけど。 A:そうですね。まず、16年に日本の一番西にあって台湾に近い与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視隊という部隊が置かれました。レーダーで周辺の船や航空機の動きを監視しています。15年に島では配備の賛否を問う住民投票があり、賛成が反対を上回りました。23年度末までには、電磁波を使う「電子戦」に対応する部隊も加わる予定です。 19年には沖縄本島の南西約300キロにある宮古島にも陸上自衛隊の駐屯地が開設され、その年に警備部隊、翌年にはミサイル部隊が置かれました。宮古島と与那国島の間にある石垣島でも現在、駐屯地の建設工事が進んでいて、22年度末までにはミサイル部隊が置かれる予定です。 Q:次々と自衛隊の部隊が置かれているんだね。なぜ? A:中国の軍事的な台頭や北朝鮮による核・ミサイルの開発など東アジアで緊張が高まっていることが背景にあります。民主党政権だった10年に、政府は今後の安全保障政策の基本方針となる「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を決めました。その中で、自衛隊の勢力が手薄で、「防衛上の空白地域」とも呼ばれた鹿児島県や沖縄県の島々(南西諸島)の守りを強化することにしたのです。これを「南西シフト」と呼びます。 元々、自衛隊の部隊は北海道などに重点的に置かれていたんですね。第二次世界大戦後の世界は、米国とソ連(当時)が対立する冷戦となり、日本の中では北の方がソ連に近かったためです。しかし、ソ連が崩壊して冷戦が終わり、日本周辺の環境も変化したことで、自衛隊の態勢も「北から南へ」と重点が移されました。 Q:島の住民はどう思っているの? A:石垣島から約170キロの距離にある尖閣諸島では中国の船が度々、日本の領海に侵入しています。台湾を巡る軍事的な緊張が今後、高まる恐れもあり、「自衛隊が島にいた方が安心だ」と考える人もいます。 一方で、自衛隊の態勢が強化されることで逆に軍事的な緊張が高まることを心配したり、「紛争が起きた時に島が狙われるのではないか」と不安を感じたりする人もいます。8月に米国の下院議長が台湾を訪問した直後には、中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習をして、ミサイルが与那国島から約80キロ先の海域に落下しました。島の漁師たちが漁を自粛する事態になりました。 近くで軍事的な衝突が起きた時に、島の住民を安全な場所に避難させることができるのか。十分に検討されているとは言えません。また、島にできた自衛隊の駐屯地を米軍が使うことになれば、さらに緊張が高まる可能性もあります。【西部報道部・宮城裕也】 ◇ 沖縄県知事選が9月11日に投開票されます。日本復帰50年の節目に争われる知事選に合わせ、沖縄の政治や社会が抱える課題をわかりやすく解説します。
A:そうです。沖縄は1972年に日本に復帰するまで27年間、米国が統治し、米軍が駐留していました。復帰した後も米軍は残りましたが、新たに日本の自衛隊も置かれることになりました。沖縄県によると、2021年3月末時点で、県内に陸上自衛隊や海上自衛隊、航空自衛隊などの55施設があり、約8200人の自衛官がいます。
Q:最近は中国に近い島にも新しく自衛隊の基地を造っていると聞いたけど。
A:そうですね。まず、16年に日本の一番西にあって台湾に近い与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視隊という部隊が置かれました。レーダーで周辺の船や航空機の動きを監視しています。15年に島では配備の賛否を問う住民投票があり、賛成が反対を上回りました。23年度末までには、電磁波を使う「電子戦」に対応する部隊も加わる予定です。
19年には沖縄本島の南西約300キロにある宮古島にも陸上自衛隊の駐屯地が開設され、その年に警備部隊、翌年にはミサイル部隊が置かれました。宮古島と与那国島の間にある石垣島でも現在、駐屯地の建設工事が進んでいて、22年度末までにはミサイル部隊が置かれる予定です。
Q:次々と自衛隊の部隊が置かれているんだね。なぜ?
A:中国の軍事的な台頭や北朝鮮による核・ミサイルの開発など東アジアで緊張が高まっていることが背景にあります。民主党政権だった10年に、政府は今後の安全保障政策の基本方針となる「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を決めました。その中で、自衛隊の勢力が手薄で、「防衛上の空白地域」とも呼ばれた鹿児島県や沖縄県の島々(南西諸島)の守りを強化することにしたのです。これを「南西シフト」と呼びます。
元々、自衛隊の部隊は北海道などに重点的に置かれていたんですね。第二次世界大戦後の世界は、米国とソ連(当時)が対立する冷戦となり、日本の中では北の方がソ連に近かったためです。しかし、ソ連が崩壊して冷戦が終わり、日本周辺の環境も変化したことで、自衛隊の態勢も「北から南へ」と重点が移されました。
Q:島の住民はどう思っているの?
A:石垣島から約170キロの距離にある尖閣諸島では中国の船が度々、日本の領海に侵入しています。台湾を巡る軍事的な緊張が今後、高まる恐れもあり、「自衛隊が島にいた方が安心だ」と考える人もいます。
一方で、自衛隊の態勢が強化されることで逆に軍事的な緊張が高まることを心配したり、「紛争が起きた時に島が狙われるのではないか」と不安を感じたりする人もいます。8月に米国の下院議長が台湾を訪問した直後には、中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習をして、ミサイルが与那国島から約80キロ先の海域に落下しました。島の漁師たちが漁を自粛する事態になりました。
近くで軍事的な衝突が起きた時に、島の住民を安全な場所に避難させることができるのか。十分に検討されているとは言えません。また、島にできた自衛隊の駐屯地を米軍が使うことになれば、さらに緊張が高まる可能性もあります。
【西部報道部・宮城裕也】

沖縄県知事選が9月11日に投開票されます。日本復帰50年の節目に争われる知事選に合わせ、沖縄の政治や社会が抱える課題をわかりやすく解説します。