先月行われた夏の甲子園で、母校の九州学院高校を応援していた熊本県議会の井手順雄議員(63)が、禁煙である観客席でたばこを吸っていたということです。「副流煙で気分が悪くなった」と訴える生徒もいたということです。そうしたなか、井手県議は「試合に集中して、つい火を付けた」と話をしています。
■甲子園で“喫煙”“お酒持ち込み”
甲子園球場のアルプススタンドで、足を組み高校野球を観戦している熊本県議会の井手議員。
緑色の加熱式たばこを手に取り見つめています。すると、それを口に…。
さらに、別の角度から撮影された映像では、県議の横には球場への持ち込みが禁止されているお酒の缶が置かれています。
先月18日、夏の甲子園準々決勝。井手県議は、母校である九州学院高校の試合をアルプススタンドで観戦していました。
今回問題となっているのは、その場所です。甲子園球場では、喫煙所を除き全面禁煙です。
それにもかかわらず、井手県議は観客席で加熱式たばこを吸っていたのです。
喫煙が発覚したきっかけは、1回表の終了後にチアダンス部の生徒が学校関係者に訴えた「副流煙で気分が悪い」という一言でした。
映像には、近くにチアダンス部員が映っています。
学校関係者らは、県議に「吸わないで下さい」と注意したものの、喫煙を続けていたといいます。
井手県議は喫煙の理由について、次のように説明しました。
井手県議:「初回に5点取られてダメだなと思い、気が付いたら無意識のうちに1本吸っていた」「(Q.試合の観戦中に加熱式たばこを吸われた?)はい、そういうことです。間違いないです。すんません。甲子園というか、球場は禁煙というのは分かっております」「(Q.どのくらい吸われた?)1本です」「(Q.その後は吸っていない?)はい。そういうことです。誰か分かりませんけども『ここは禁煙ですよ』という話をされまして、『ああ、すんません、はいはい、すんません』ということで、やめたっていう状況です」
井手県議は1本だけ吸って注意されてやめ、その後は禁煙グッズに変えたと主張しています。
井手県議:「私が持っている禁煙グッズは、ペパーミント系のやつを、そこ(本体)にさすんですよ。(たばこと)同じ形状のやつを。電気(電源)はつけません。それを吸えばペパーミントの味がする」
■地元困惑「あってはならない」
井手県議が初当選したのは23年前。現在6期目で、おととしから1年間は県議会議長も務め、現在は自民党県連副会長です。
井手県議のホームページから:「私のモットーは初志貫徹であります。安心安全な街づくりを、今後とも頑張って参りたいというふうに思いますので、どうぞ最後までのご支援を心からお願い申し上げます」
熊本県議会の議長を務めたこともある井手県議は、地元でも有名な存在だということです。
地元の人:「(有名)だから、なおさら、え?なんで?っていう感じ。自分のなかで抑えきれなかったっていうのは、県議としておかしいことだなと思いました。学生さんたちの若い人たちの模範にならなきゃならない人たちが、そういうことはあってはならないと思いますね」
九州学院高校のOB:「ほとんどの人が、OBと限らず知っていると思います。(議員が)長いからですね。県民として、そういう公共の場で常識外れなことをしたということで、大変残念に思いますね」
■禁煙の議会内でもルール違反
スポーツ観戦の環境整備を訴えていた井手県議。議会での様子を同僚議員に聞くと…。
井手県議の同僚議員:「行動派の方で、ご意見もはっきり言われる。我々は尊敬する先輩でございます。そのような行動はないだろうと思っているような人ですけどね。残念としか言いようがない」
他の同僚県議からは、こんな証言がありました。
井手県議の同僚議員:「今回のニュースを見てとっさに思ったのは、執務室で(たばこを)吸ってはいけない所で吸って、注意を受けたことをすぐ思い起こしました」
この県議によると、熊本県議会の執務室では3年前まで、たばこを吸うことが許されていたといいます。
その後、執務室は禁煙となり、新たに喫煙室が作られたのですが…。
同僚議員:「喫煙室で吸わないといけないと議会で決めたんですけど、執務室の机の辺りで吸われよった。見かねて同僚県議か誰かが注意したそうです。結構、愛煙家でしょうね」
議会内でも、ルール違反をしていました。
■九州学院在校生から“憤りの声”
井手県議の母校・九州学院高校の野球部は、甲子園に春夏合わせて15回出場する常連校で、地元では特別な存在だといいます。
九州学院高校は現在プロ野球で史上最年少での三冠王へと突き進むヤクルトスワローズ村上宗隆選手の出身校です。
他にも多くのプロ野球選手を輩出するなど、野球部は学校内外から注目を集めています。
地元の人:「熊本だったら、一番知っている高校じゃないですかね。野球の他にも何か色々強かったりはするんだろうけど。これでだいぶ評判は落ちていると思う」
九州学院高校のOBである井手県議の喫煙には、在校生も憤りを隠すことができません。
九州学院高校の在校生:「応援してきた人(県議)も、九州学院の一員じゃないですか。九州学院の生徒が頑張ったけど、議会の偉い人が吸っていたからちょっと評判は下がるかな…。野球部の生徒さんたちは、ちょっと嫌かなと思います」「ショックがありますね」「友達とかが(野球部で)プレーしていて、そういうのがあると悔しいっていうのはあります」
井手県議は、今年九州学院高校が夏の甲子園出場を決めた時、SNSに「優勝おめでとうございます。応援に行きたかったのですが、委員会の視察で残念ながら現地には行けず。写真を頂きましたので、歓喜の瞬間を!!甲子園が楽しみですね!」と投稿していました。
井手県議は、楽しみにしていた甲子園で禁止されている喫煙行為を行ったのです。
■県議に直撃「試合に集中ついつい」
一体なぜ、井手県議は禁煙である甲子園球場の観客席で、加熱式たばこを吸っていたのでしょうか。本人に、当時の状況について話を聞くことができました。
井手県議:「ついうっかり。うっかりと言いますか、試合に集中してですね。ついつい火をつけていたという状況ですね」
試合に集中するあまり、うっかり吸ってしまったという井手県議。
学校関係者によると、その“うっかりの喫煙”によって体調が悪くなった生徒もいたといいます。しかし…。
井手県議:「生徒さんは結構離れていましたよ。4メートル~5メートルは離れてましたね。写真を見たら分かると思うんですが、学生さん写ってないでしょ」
「生徒との距離は離れていた」と主張する井手県議。しかし、映像を見ると、すぐ目の前をユニフォーム姿の生徒と思われる人が通っていきます。
さらに写真には…。
井手県議:「(Q.すぐ隣に小さい子どもが見えるんですけど?)ああ、それは私の知り合いです」「(Q.知り合いでも、お子さんが近くにいる…)はい、はい、はい、はい。そうです。そうです。まぁ、はい、分かりました。申し訳ございません。もう弁解は致しません」
この機会に、禁煙するのかと聞くと…。
井手県議:「できるだけ禁煙しようと。本来ならば、ほんと真面目に喫煙所で吸っているんですよ、私。家でも吸っていませんもん。家族といる時は。ついつい興奮して、ついつい吸っていたという状況で。ほんともう私の不注意です」