2020年に新型コロナウイルスが上陸して以降、今年4月末まで、毎日テレビから流れていた「1日の感染者数」の報告もなくなり、コロナはいまや“普通のかぜ”となりつつある。そんな中、5類移行と時を同じくして5月8日から6回目のワクチン接種がスタートした。
【グラフ】ワクチン接種率はどんどん低下!「6回目」は激減「医療従事者や65才以上の高齢者、基礎疾患がある人などに対象が絞られていますが、接種状況はこれまでに比べてスローペースです」(全国紙社会部記者・以下同)
接種人数は、6月13日時点で1000万人余り。1億人以上が受けた1回目に比べると、わずか10分の1にとどまっている。率で見ても、2回目までは全人口の80%を超えていたが、3回目には70%弱に減り、4回目には50%以下、5回目は30%以下へと急減した。 接種による重篤な副反応や、接種後の死亡事例などの報告も後を絶たず、WHO(世界保健機関)が今年3月末に「60才未満の健康な人と子供にはこれ以上の追加接種を推奨しない」との立場を明らかにするなど、“ワクチン不信”の声は高まっている。 だが、政府は追加接種を絶えず推奨し続けている。世界中を見渡してみても、日本ほどコロナワクチンを接種している国はほかにない。1人当たりの接種回数の国際比較では、日本は平均3.09回でダントツだ。「昨年秋以降、ほとんどの国で接種回数が頭打ちになる中、日本だけは増え続けていて、3回目以降の総接種回数は人口比で141.72%と、2位以下の国の倍近い数字です。 今年3月には、政府が8.8億回分のワクチンを購入し、接種事業に4兆円の支出をしていることが報じられました。これは国民全員が7回接種できる量に相当し、ワクチンを提供する海外メーカーとの契約内容も明かされていない。あまりにも“無謀な買い物”だと会計検査院が注意を促したほどです」 それだけの接種回数を誇ってもなお、コロナを封じ込めることはできていない。「5類移行後の1か月間で、全国約5000か所の定点医療機関から報告された感染者数は約2.5倍に増加。これを受けて、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会長を務めた尾身茂氏は6月14日、『(流行の)第9波の入り口に入ったのではないか』と発言しました」 医療ジャーナリストの村上和巳さんが言う。「コロナワクチンの初期は、95%という高い発症予防の有効率が出ていました。しかし、アルファ株、デルタ株、そしてオミクロン株と変異していく中で、効果が下がっていったのは事実です。オミクロン株になるとそれが60~70%ぐらいにまで低下してしまった。 ワクチン接種をしたのに感染してしまう“ブレークスルー感染”も、デルタ株までは10%前後でしたが、オミクロン株では30~40%にのぼり、感染や発症そのものを抑える効果は、当初ほどは期待できなくなっている」ワクチンは薬。必ず副作用がある 追加接種の効果低減や、リスクへの不安もある中で、すでに6回目のワクチン接種を済ませたと話すのは、神奈川県在住の会社員・Uさん(75才)だ。「年が年だからね。打たないよりは打つ方が安心だと思って、案内が届いてすぐに申し込みました。打ってから3日間くらい腕が痛かったけど、副反応はその程度。同じ会社で私と年齢が近い人は、みんな6回目を打っています」 実際に内田さんのような人は少なくなく、6月上旬に都内の内科を受診した会社員・Sさん(43才)はこんな光景を目にした。「70才、80才という私の両親くらいの人たちが待合室に大勢いたので何かと思ったら、ワクチン接種でした。私は3回目まででやめたので、まだこんなに律義に接種する人がいるのかと驚きです」 前出の村上さんによれば、ワクチンに見込まれるのは「感染の予防効果」だけではないという。「ワクチンには感染予防効果、発症予防効果、そして重症化予防効果があります。なかでもいま注目されているのは、重症化予防効果。オミクロン株になってから、ワクチンの感染予防と発症予防の効果は減りましたが、重症化リスクを抑える効果は60~70%ぐらい維持されていると考えられる。しかも接種から半年ほどは効果が続くこともわかっています」(村上さん・以下同) 政府が追加接種をすすめる背景には、重症化を防ぎ医療費増大を抑えたい狙いもある。「コロナはいったん重症化すると命にかかわりますし、治療には医療費がものすごくかかる。例えばECMO(体外式膜型人工肺)はいったんつけると2か月くらい外すことができない人もいて、その場合1人当たり約400万円もかかる。国としてはそれを防ぎたいという事情もあるのです」 しかし、前述の通り、ワクチンには副反応への不安も伴う。ワクチン接種後に死亡した人は国内で2000人を超えるとされ、うち厚労省が「因果関係が否定できない」として死亡一時金を支給したケースは、5月末時点で67人にのぼる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。「ワクチンを原因とした死亡が認定されたことで、改めて“ワクチンは薬なんだ”ということが認識され始めました。薬には必ず副作用があるものなので、その点は重く受け止めるべきだと思います。コロナによる重症化リスクと副反応リスクの両者を考え、若くて基礎疾患のない人は接種を避けるという選択肢はある」「副作用」と「副反応」は英語ではどちらも「サイドエフェクト(side effect)」。副作用は薬の主成分が有効性を発揮することに付随して、ほかの部分に悪く働くことをさす。「一方、副反応はワクチンの成分そのものではなく、自己免疫疾患のように、ワクチンに対して体が過剰反応することなどが原因で引き起こされるものも含みます。 例えばリウマチは、免疫システムが自分自身を攻撃して症状が起きる自己免疫疾患ですが、原因は完全にはわかっていない。免疫にはまだ解明されていない部分が多く、個人差も大きい。ワクチンそのものは毒でなくても、それによって体が過剰反応することは、人によっては起こり得るのです」(村上さん)接種回数が増すと罹りやすくなる コロナワクチンについては副反応だけでなく、前述の通り変異株に対しての効力低下や、「免疫力を低下させる」「接種回数が増すごとに罹りやすくなる」といった研究結果も報告されている。アメリカの疾病対策予防センターの研究員による調査で、接種回数が2回、3回、4回と増えるごとに33%、38%、41%と感染率が高くなることが判明した。室井さんが続ける。「コロナウイルスにワクチンがくっつくことで、かえってウイルスの白血球への侵入を促してしまう『抗体依存性感染増強(ADE)』という現象が起こることもかねてより指摘されています」 海外でも、効果と副反応を天秤にかけて、ワクチン接種の方針が決められているが、日本とは少し状況が異なるようだ。「欧米でもWHOの推奨に沿って、基礎疾患のある人や高齢者に関しては、基本半年から1年のスパンでワクチンを打ちましょうと言っています。しかし、日本ほど広く周知しているわけではない。また、一部の国では重症化リスクが低い若者については“接種不要”という方針を打ち出しています」(村上さん) 副反応による健康被害や後遺症について「事例の収集を続けていく」とかわし続け、一方で、接種対象者に「引き続き接種を検討するよう周知していく」との方針を示す日本政府の“推進”ぶりとはたしかに異なる対応だろう。接種率低下と感染者増加に関連なし 5類に移行して以来、コロナ感染者数が増加していることについて、追加接種を受ける人が少ないからではないかという声もあるが、室井さんはこう話す。「行動制限が解除され、マスクをする人も徐々に減ってきているので、感染者数が増えるのは極めて自然なことです。いま、ワクチンは重症化予防のためのものになっているので、接種率が低いこととはあまり関係がないでしょう」 村上さんによれば、コロナはインフルエンザに比べて3倍ほども感染しやすいという。「インフルエンザは急激な全身症状が特徴で、すぐに具合が悪くなって外出しなくなるので、ほかの人に感染させにくいのです。ところがコロナは3日間ぐらい潜伏期間があって、3割ぐらいが無症状。しかも症状が出る前に感染力のピークがあるので、感染が広がりやすい。非常に厄介で、行動がこれだけ自由になれば、感染リスクは当然上がります」(村上さん・以下同) 結局、ワクチンを打つべきかどうかは、自分の重症化リスクをどう判断するかにかかっているようだ。「コロナに関してはいろいろな情報が出てきていますし、有料ですが抗体量を調べるキットもあります。基礎疾患があり、抗体価も低くなっているからワクチンを接種しよう、など自分で考えて決めるべきだと思います。マスクについても同じ。例えば電車の混み具合を見て着用を判断する、会食などの場面では、家族や親しい友人など“この人にならうつされてもしょうがないな”と、相手によって許容するといった自分なりの基準をもつことが大切です」 今後はワクチン接種の有料化が予想される。「コロナの治療薬については9月まで無償ですが、あくまでも暫定的な措置で、その先は未定です。ワクチンについては、高齢者や基礎疾患がある人を除くと、治療薬と同じタイミングで有償になる可能性はあり得ます」 これからも続く“コロナとの共存”。インフルエンザワクチンを打つかどうかが各々の判断に任されているように、コロナワクチンとのつきあい方を考えるべきときに来ているのではないか。※女性セブン2023年7月6日号
「医療従事者や65才以上の高齢者、基礎疾患がある人などに対象が絞られていますが、接種状況はこれまでに比べてスローペースです」(全国紙社会部記者・以下同)
接種人数は、6月13日時点で1000万人余り。1億人以上が受けた1回目に比べると、わずか10分の1にとどまっている。率で見ても、2回目までは全人口の80%を超えていたが、3回目には70%弱に減り、4回目には50%以下、5回目は30%以下へと急減した。
接種による重篤な副反応や、接種後の死亡事例などの報告も後を絶たず、WHO(世界保健機関)が今年3月末に「60才未満の健康な人と子供にはこれ以上の追加接種を推奨しない」との立場を明らかにするなど、“ワクチン不信”の声は高まっている。
だが、政府は追加接種を絶えず推奨し続けている。世界中を見渡してみても、日本ほどコロナワクチンを接種している国はほかにない。1人当たりの接種回数の国際比較では、日本は平均3.09回でダントツだ。
「昨年秋以降、ほとんどの国で接種回数が頭打ちになる中、日本だけは増え続けていて、3回目以降の総接種回数は人口比で141.72%と、2位以下の国の倍近い数字です。
今年3月には、政府が8.8億回分のワクチンを購入し、接種事業に4兆円の支出をしていることが報じられました。これは国民全員が7回接種できる量に相当し、ワクチンを提供する海外メーカーとの契約内容も明かされていない。あまりにも“無謀な買い物”だと会計検査院が注意を促したほどです」
それだけの接種回数を誇ってもなお、コロナを封じ込めることはできていない。
「5類移行後の1か月間で、全国約5000か所の定点医療機関から報告された感染者数は約2.5倍に増加。これを受けて、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会長を務めた尾身茂氏は6月14日、『(流行の)第9波の入り口に入ったのではないか』と発言しました」
医療ジャーナリストの村上和巳さんが言う。
「コロナワクチンの初期は、95%という高い発症予防の有効率が出ていました。しかし、アルファ株、デルタ株、そしてオミクロン株と変異していく中で、効果が下がっていったのは事実です。オミクロン株になるとそれが60~70%ぐらいにまで低下してしまった。
ワクチン接種をしたのに感染してしまう“ブレークスルー感染”も、デルタ株までは10%前後でしたが、オミクロン株では30~40%にのぼり、感染や発症そのものを抑える効果は、当初ほどは期待できなくなっている」
追加接種の効果低減や、リスクへの不安もある中で、すでに6回目のワクチン接種を済ませたと話すのは、神奈川県在住の会社員・Uさん(75才)だ。
「年が年だからね。打たないよりは打つ方が安心だと思って、案内が届いてすぐに申し込みました。打ってから3日間くらい腕が痛かったけど、副反応はその程度。同じ会社で私と年齢が近い人は、みんな6回目を打っています」
実際に内田さんのような人は少なくなく、6月上旬に都内の内科を受診した会社員・Sさん(43才)はこんな光景を目にした。
「70才、80才という私の両親くらいの人たちが待合室に大勢いたので何かと思ったら、ワクチン接種でした。私は3回目まででやめたので、まだこんなに律義に接種する人がいるのかと驚きです」
前出の村上さんによれば、ワクチンに見込まれるのは「感染の予防効果」だけではないという。
「ワクチンには感染予防効果、発症予防効果、そして重症化予防効果があります。なかでもいま注目されているのは、重症化予防効果。オミクロン株になってから、ワクチンの感染予防と発症予防の効果は減りましたが、重症化リスクを抑える効果は60~70%ぐらい維持されていると考えられる。しかも接種から半年ほどは効果が続くこともわかっています」(村上さん・以下同)
政府が追加接種をすすめる背景には、重症化を防ぎ医療費増大を抑えたい狙いもある。
「コロナはいったん重症化すると命にかかわりますし、治療には医療費がものすごくかかる。例えばECMO(体外式膜型人工肺)はいったんつけると2か月くらい外すことができない人もいて、その場合1人当たり約400万円もかかる。国としてはそれを防ぎたいという事情もあるのです」
しかし、前述の通り、ワクチンには副反応への不安も伴う。ワクチン接種後に死亡した人は国内で2000人を超えるとされ、うち厚労省が「因果関係が否定できない」として死亡一時金を支給したケースは、5月末時点で67人にのぼる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。
「ワクチンを原因とした死亡が認定されたことで、改めて“ワクチンは薬なんだ”ということが認識され始めました。薬には必ず副作用があるものなので、その点は重く受け止めるべきだと思います。コロナによる重症化リスクと副反応リスクの両者を考え、若くて基礎疾患のない人は接種を避けるという選択肢はある」
「副作用」と「副反応」は英語ではどちらも「サイドエフェクト(side effect)」。副作用は薬の主成分が有効性を発揮することに付随して、ほかの部分に悪く働くことをさす。
「一方、副反応はワクチンの成分そのものではなく、自己免疫疾患のように、ワクチンに対して体が過剰反応することなどが原因で引き起こされるものも含みます。
例えばリウマチは、免疫システムが自分自身を攻撃して症状が起きる自己免疫疾患ですが、原因は完全にはわかっていない。免疫にはまだ解明されていない部分が多く、個人差も大きい。ワクチンそのものは毒でなくても、それによって体が過剰反応することは、人によっては起こり得るのです」(村上さん)
コロナワクチンについては副反応だけでなく、前述の通り変異株に対しての効力低下や、「免疫力を低下させる」「接種回数が増すごとに罹りやすくなる」といった研究結果も報告されている。アメリカの疾病対策予防センターの研究員による調査で、接種回数が2回、3回、4回と増えるごとに33%、38%、41%と感染率が高くなることが判明した。室井さんが続ける。
「コロナウイルスにワクチンがくっつくことで、かえってウイルスの白血球への侵入を促してしまう『抗体依存性感染増強(ADE)』という現象が起こることもかねてより指摘されています」
海外でも、効果と副反応を天秤にかけて、ワクチン接種の方針が決められているが、日本とは少し状況が異なるようだ。
「欧米でもWHOの推奨に沿って、基礎疾患のある人や高齢者に関しては、基本半年から1年のスパンでワクチンを打ちましょうと言っています。しかし、日本ほど広く周知しているわけではない。また、一部の国では重症化リスクが低い若者については“接種不要”という方針を打ち出しています」(村上さん)
副反応による健康被害や後遺症について「事例の収集を続けていく」とかわし続け、一方で、接種対象者に「引き続き接種を検討するよう周知していく」との方針を示す日本政府の“推進”ぶりとはたしかに異なる対応だろう。
5類に移行して以来、コロナ感染者数が増加していることについて、追加接種を受ける人が少ないからではないかという声もあるが、室井さんはこう話す。
「行動制限が解除され、マスクをする人も徐々に減ってきているので、感染者数が増えるのは極めて自然なことです。いま、ワクチンは重症化予防のためのものになっているので、接種率が低いこととはあまり関係がないでしょう」
村上さんによれば、コロナはインフルエンザに比べて3倍ほども感染しやすいという。
「インフルエンザは急激な全身症状が特徴で、すぐに具合が悪くなって外出しなくなるので、ほかの人に感染させにくいのです。ところがコロナは3日間ぐらい潜伏期間があって、3割ぐらいが無症状。しかも症状が出る前に感染力のピークがあるので、感染が広がりやすい。非常に厄介で、行動がこれだけ自由になれば、感染リスクは当然上がります」(村上さん・以下同)
結局、ワクチンを打つべきかどうかは、自分の重症化リスクをどう判断するかにかかっているようだ。
「コロナに関してはいろいろな情報が出てきていますし、有料ですが抗体量を調べるキットもあります。基礎疾患があり、抗体価も低くなっているからワクチンを接種しよう、など自分で考えて決めるべきだと思います。マスクについても同じ。例えば電車の混み具合を見て着用を判断する、会食などの場面では、家族や親しい友人など“この人にならうつされてもしょうがないな”と、相手によって許容するといった自分なりの基準をもつことが大切です」
今後はワクチン接種の有料化が予想される。
「コロナの治療薬については9月まで無償ですが、あくまでも暫定的な措置で、その先は未定です。ワクチンについては、高齢者や基礎疾患がある人を除くと、治療薬と同じタイミングで有償になる可能性はあり得ます」
これからも続く“コロナとの共存”。インフルエンザワクチンを打つかどうかが各々の判断に任されているように、コロナワクチンとのつきあい方を考えるべきときに来ているのではないか。
※女性セブン2023年7月6日号