「立ち話の機会でも作ろうとしたんだけど……。お互いに歩み寄る気がない」
【写真を見る】外遊先での観光が問題視されている岸田翔太郎氏(32) 岸田文雄総理(65)の側近議員の嘆息だ。1月25日の日印協会創立120周年を祝うレセプション。年明けから総理批判を“解禁”した菅義偉前総理(74)との溝を懸念して、側近らは二人がこの場で言葉を交わせるようお膳立てしていた。 周囲は総理のあいさつに、菅氏の総理時代の業績を評価する文言をちりばめる気の使いようだった。が、岸田総理は定刻より遅れて到着し、二人が交わしたのは会釈のみ。「冷ややかな空気が流れ」(総理周辺)、菅氏のあいさつに〈岸田〉の文字はなかった。
このところ、総理官邸には党内非主流派への疑心暗鬼が広がっている。確執は根深い(写真は2020年の総裁選)「菅さんや二階(俊博元幹事長)さん(83)は、総理に解散させないまま、来秋の総裁選の出馬断念に追い込むつもりじゃないか」「早くて5月のサミットの後」 1月18日、二階氏らは都内で小泉純一郎元総理(81)や山崎拓元党副総裁(86)と会食し「この(支持率の)状況では年内解散はできない」との認識で一致した。 自分の手足を縛る動きに岸田総理も黙ってはいない。4日後のテレビ番組で総裁選前の解散を示唆。非主流派を強烈にけん制してみせた。「解散をチラつかせ始めてから、岸田さんは政局の主導権を取り戻した」と自民党幹部は証言するが、総理周辺からはさらに不穏な情報が飛び込んできた。「総理の脳裏には、4月の統一地方選と衆院選のダブルもある。ああ見えて総理は政局好きで不意打ちも辞さない。一昨年に前倒しして大勝ちした、衆院選の記憶もいまだあせていない」 そこで野党幹部たちに解散の時期を尋ねると、「早くて5月のサミットの後」と口をそろえる。「通常国会の会期中は避ける」「地元開催の広島サミットまでは冒険しない」というのが主な見立てだ。つまり、4月のダブル選挙に踏み切れば、野党の機先を制することができる。「防衛費の増額や子育て支援など、総理は年末から重要政策を打ち出した。最近も女性の就労を抑制する年収の壁の見直しも持ち出してきた。加えてコロナウイルスの5類への引き下げや、旧統一教会の解散命令請求への動きも追い風に利用できる」(先の側近議員)「岸田さんは吹っ切れた様子」 仮に4月の総選挙なら衆院の補欠選挙はなくなり、焦点は10増10減に伴う候補者調整となる。それを見越してか、総理は1月5日に森山裕党選対委員長(77)に調整を急ぐよう指示していた。その後、森山氏は周囲にこう話している。「岸田さんは吹っ切れた様子で、心に期するものがあるようだった。調整は急がないといかん」 ただ、政権内には消極的な声も少なくない。地方選に力を入れる公明党の反発は必至のうえ、日銀総裁の交代による市場の反応は不透明。内閣支持率が少しでも上向くかがカギとなる。 2月6日、岸田総理はようやく菅氏と面会し、記者団に「さまざまな政治課題について報告した」と語った。が、自民党関係者は「菅さんは反増税の立場。総理は解散に向けて少しでも理解を得ておこうとしたのでしょう」と話す。 かつて佐藤栄作元総理は「総理の権力は改造するほど下がり、解散をするほど上がる」と指摘した。岸田総理は求心力回復のために、なりふり構わぬ解散戦略に打って出るのだろうか。青山和弘(あおやまかずひろ)政治ジャーナリスト。星槎大学非常勤講師。1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。与野党を問わない幅広い人脈と、わかりやすい解説には定評がある。2021年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。「週刊新潮」2023年2月16日号 掲載
岸田文雄総理(65)の側近議員の嘆息だ。1月25日の日印協会創立120周年を祝うレセプション。年明けから総理批判を“解禁”した菅義偉前総理(74)との溝を懸念して、側近らは二人がこの場で言葉を交わせるようお膳立てしていた。
周囲は総理のあいさつに、菅氏の総理時代の業績を評価する文言をちりばめる気の使いようだった。が、岸田総理は定刻より遅れて到着し、二人が交わしたのは会釈のみ。「冷ややかな空気が流れ」(総理周辺)、菅氏のあいさつに〈岸田〉の文字はなかった。
このところ、総理官邸には党内非主流派への疑心暗鬼が広がっている。
「菅さんや二階(俊博元幹事長)さん(83)は、総理に解散させないまま、来秋の総裁選の出馬断念に追い込むつもりじゃないか」
1月18日、二階氏らは都内で小泉純一郎元総理(81)や山崎拓元党副総裁(86)と会食し「この(支持率の)状況では年内解散はできない」との認識で一致した。
自分の手足を縛る動きに岸田総理も黙ってはいない。4日後のテレビ番組で総裁選前の解散を示唆。非主流派を強烈にけん制してみせた。
「解散をチラつかせ始めてから、岸田さんは政局の主導権を取り戻した」と自民党幹部は証言するが、総理周辺からはさらに不穏な情報が飛び込んできた。
「総理の脳裏には、4月の統一地方選と衆院選のダブルもある。ああ見えて総理は政局好きで不意打ちも辞さない。一昨年に前倒しして大勝ちした、衆院選の記憶もいまだあせていない」
そこで野党幹部たちに解散の時期を尋ねると、「早くて5月のサミットの後」と口をそろえる。「通常国会の会期中は避ける」「地元開催の広島サミットまでは冒険しない」というのが主な見立てだ。つまり、4月のダブル選挙に踏み切れば、野党の機先を制することができる。
「防衛費の増額や子育て支援など、総理は年末から重要政策を打ち出した。最近も女性の就労を抑制する年収の壁の見直しも持ち出してきた。加えてコロナウイルスの5類への引き下げや、旧統一教会の解散命令請求への動きも追い風に利用できる」(先の側近議員)
仮に4月の総選挙なら衆院の補欠選挙はなくなり、焦点は10増10減に伴う候補者調整となる。それを見越してか、総理は1月5日に森山裕党選対委員長(77)に調整を急ぐよう指示していた。その後、森山氏は周囲にこう話している。
「岸田さんは吹っ切れた様子で、心に期するものがあるようだった。調整は急がないといかん」
ただ、政権内には消極的な声も少なくない。地方選に力を入れる公明党の反発は必至のうえ、日銀総裁の交代による市場の反応は不透明。内閣支持率が少しでも上向くかがカギとなる。
2月6日、岸田総理はようやく菅氏と面会し、記者団に「さまざまな政治課題について報告した」と語った。が、自民党関係者は「菅さんは反増税の立場。総理は解散に向けて少しでも理解を得ておこうとしたのでしょう」と話す。
かつて佐藤栄作元総理は「総理の権力は改造するほど下がり、解散をするほど上がる」と指摘した。岸田総理は求心力回復のために、なりふり構わぬ解散戦略に打って出るのだろうか。
青山和弘(あおやまかずひろ)政治ジャーナリスト。星槎大学非常勤講師。1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。与野党を問わない幅広い人脈と、わかりやすい解説には定評がある。2021年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。
「週刊新潮」2023年2月16日号 掲載