《17、18両日に実施した全国世論調査で、内閣支持率は「危険水域」とされる20%台まで落ち込んだ》──引用したのは毎日新聞(電子版)が9月18日に配信した記事「支持率、危険水域に 政府・与党『耐えるしか』 来春統一選へ懸念」の冒頭部分だ。
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【写真】「合同結婚披露宴」での安倍晋三元首相 昭恵夫人は当時25歳 毎日新聞と社会調査研究センターは9月17日と18日、全国世論調査を実施。19日に電子版で記事「岸田内閣支持29% 7ポイント減、3割割る 毎日新聞世論調査」を配信した。

何しろ7月の調査では、内閣支持率は52%あった(註1)。それが8月には36%となり、9月は29%になってしまったわけだ。まさに急落と言える。岸田文雄首相 原因として毎日新聞は、安倍晋三元首相(享年67)の国葬の開催と、自民党と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の“癒着”をめぐる問題の影響を挙げている。担当記者が言う。「毎日新聞の調査では、国葬『反対』は62%。自民党の統一教会に関する調査が『不十分だ』は76%に達しました。更に、安倍元首相と統一教会の関係についても『調査すべきだ』という回答が68%と過半数を大幅に超えました」 毎日新聞は、岸田内閣の支持率が下落し、《危険水域》に達したと報じた。この《危険水域》は、一般に30%を割った時だと言われている。 参考のため、8月から9月にかけて、新聞各紙が行った世論調査を、時系列で並べてみよう。結果を伝えた記事から、見出しだけをご紹介する。臨時国会も懸念材料◆毎日新聞・8月22日朝刊内閣支持16ポイント急落、36% 「自民と旧統一教会、問題ある」9割 毎日新聞世論調査◆読売新聞・9月5日朝刊内閣支持横ばい50% 旧統一教会対応「評価」76% 本社世論調査◆朝日新聞・9月13日岸田内閣支持、最低41% 不支持47%、初めて逆転 朝日新聞社世論調査◆時事通信・9月15日内閣支持32%、発足後最低=国葬反対51%-時事世論調査◆産経新聞・電子版・9月19日岸田内閣支持率42・3% 12ポイント急落 不支持率と逆転 本社・FNN合同世論調査 読売新聞を除けば、いずれも岸田内閣に逆風が吹いていることを伝えている。「例えば、時事通信の調査分析(註2)からは、自民党支持者も岸田政権に不満を持っていることが分かります。国葬『賛成』は自民党支持者でさえ過半数に届かず、統一教会の問題に至っては『首相らの説明は納得できない』が63・9%に達しました」(同・記者) 岸田文雄首相(65)に対する有権者の評価が、日を追うごとに急落しているのは明白だ。自民党のベテラン国会議員は頭を抱える。「9月27日の国葬を無事に終えても、10月3日に秋の臨時国会が招集される見通しで、野党が激しく統一教会の問題を追及するのは確実です。岸田内閣の対応によっては、更に支持率が下がる可能性があります」早期解散のメリット 7月の参院選に勝利した岸田内閣は「黄金の3年間」を迎えると言われていた。これは2025年夏の参院選まで大型の国政選挙が行われないことを指す。「ところが、今や自民党議員は『黄金の3年間』などと口にしなくなりました。むしろ岸田内閣の支持率がどこまで下がってしまうのか、戦々恐々としているのが実情です」(同・ベテラン自民党議員) 短期的な視点では、「このまま打つ手がなく、ズルズルと支持率が下がり続ける」という可能性が懸念されているという。 ベテラン議員ほど危機感が強く、「岸田は長くはもたない。ならば早めに勝負するしかない」という声が上がり始めているという。「具体的には、衆院を解散して総選挙に打って出るべきだ、という意見です。いわば“リセット解散”というイメージでしょうか。有権者が統一教会の問題を強く批判している以上、野党を含めて審判を仰ぐ。もし統一教会との“癒着”が問題視されている自民党の議員が落選しても、仕方がないというわけです」(同・ベテラン自民党議員) 最大のメリットは、総選挙の結果さえ出れば、「少なくとも自民党の衆院議員は禊ぎを終えた」と主張できることだろう。岸田首相の勇気「他にもメリットはあります。いわゆる“10増10減”の問題です。衆院における“一票の格差”を是正するため、政府の審議会は、25都道府県、140選挙区の区割り案を勧告しています。予定では、秋の臨時国会で改正公職選挙法が成立し、1カ月の周知期間を経て導入されることになっています」(同・ベテラン議員) ところが「10減」は、安倍元首相の地元・山口県や、自民党の大物議員である二階俊博元幹事長(83)の地元・和歌山県などが含まれている。「安倍さんが存命でも、山口県や和歌山県は大モメすることは必至と言われていました。しかし、10月か11月に解散をすれば、現行の区割りで総選挙が行われます」(同・ベテラン議員) おまけに、本来なら山口県と和歌山県では、来年4月に衆院補選が行われる予定になっている。こちらも早期解散に踏み切れば、総選挙に吸収される。 と、まさにいいことずくめの早期解散論なのだが、岸田首相が決断する可能性は決して高くはないという。ベテランの政治記者が言う。「解散総選挙は、かなりのエネルギーを必要とします。そもそも、どんな首相だって長期政権を夢見ているものです。岸田さんだって例外ではありません。野党も支持率は低いとはいえ、選挙の結果によっては、岸田さんが自民党内で求心力を失うことだって考えられます」“岸田下ろし”の勃発!? 岸田首相に決断力はあるか──この問いにベテラン記者は首を横に振る。「岸田さんに早期解散を決断できる勇気はないでしょう。このまま内閣支持率は下がるも、選挙はやらないとなると、党内から岸田さんを引きずり下ろそうという動きが出てくるかもしれません」註1:内閣支持率4ポイント上昇52% 安倍氏銃撃「選挙に影響」71% 毎日新聞世論調査(毎日新聞・電子版・7月18日)註2:内閣支持急落、迫る「危険水域」=国葬・旧統一教会、支持層も不満-時事世論調査(時事通信・9月15日)デイリー新潮編集部
毎日新聞と社会調査研究センターは9月17日と18日、全国世論調査を実施。19日に電子版で記事「岸田内閣支持29% 7ポイント減、3割割る 毎日新聞世論調査」を配信した。
何しろ7月の調査では、内閣支持率は52%あった(註1)。それが8月には36%となり、9月は29%になってしまったわけだ。まさに急落と言える。
原因として毎日新聞は、安倍晋三元首相(享年67)の国葬の開催と、自民党と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の“癒着”をめぐる問題の影響を挙げている。担当記者が言う。
「毎日新聞の調査では、国葬『反対』は62%。自民党の統一教会に関する調査が『不十分だ』は76%に達しました。更に、安倍元首相と統一教会の関係についても『調査すべきだ』という回答が68%と過半数を大幅に超えました」
毎日新聞は、岸田内閣の支持率が下落し、《危険水域》に達したと報じた。この《危険水域》は、一般に30%を割った時だと言われている。
参考のため、8月から9月にかけて、新聞各紙が行った世論調査を、時系列で並べてみよう。結果を伝えた記事から、見出しだけをご紹介する。
◆毎日新聞・8月22日朝刊内閣支持16ポイント急落、36% 「自民と旧統一教会、問題ある」9割 毎日新聞世論調査
◆読売新聞・9月5日朝刊内閣支持横ばい50% 旧統一教会対応「評価」76% 本社世論調査
◆朝日新聞・9月13日岸田内閣支持、最低41% 不支持47%、初めて逆転 朝日新聞社世論調査
◆時事通信・9月15日内閣支持32%、発足後最低=国葬反対51%-時事世論調査
◆産経新聞・電子版・9月19日岸田内閣支持率42・3% 12ポイント急落 不支持率と逆転 本社・FNN合同世論調査
読売新聞を除けば、いずれも岸田内閣に逆風が吹いていることを伝えている。
「例えば、時事通信の調査分析(註2)からは、自民党支持者も岸田政権に不満を持っていることが分かります。国葬『賛成』は自民党支持者でさえ過半数に届かず、統一教会の問題に至っては『首相らの説明は納得できない』が63・9%に達しました」(同・記者)
岸田文雄首相(65)に対する有権者の評価が、日を追うごとに急落しているのは明白だ。自民党のベテラン国会議員は頭を抱える。
「9月27日の国葬を無事に終えても、10月3日に秋の臨時国会が招集される見通しで、野党が激しく統一教会の問題を追及するのは確実です。岸田内閣の対応によっては、更に支持率が下がる可能性があります」
7月の参院選に勝利した岸田内閣は「黄金の3年間」を迎えると言われていた。これは2025年夏の参院選まで大型の国政選挙が行われないことを指す。
「ところが、今や自民党議員は『黄金の3年間』などと口にしなくなりました。むしろ岸田内閣の支持率がどこまで下がってしまうのか、戦々恐々としているのが実情です」(同・ベテラン自民党議員)
短期的な視点では、「このまま打つ手がなく、ズルズルと支持率が下がり続ける」という可能性が懸念されているという。
ベテラン議員ほど危機感が強く、「岸田は長くはもたない。ならば早めに勝負するしかない」という声が上がり始めているという。
「具体的には、衆院を解散して総選挙に打って出るべきだ、という意見です。いわば“リセット解散”というイメージでしょうか。有権者が統一教会の問題を強く批判している以上、野党を含めて審判を仰ぐ。もし統一教会との“癒着”が問題視されている自民党の議員が落選しても、仕方がないというわけです」(同・ベテラン自民党議員)
最大のメリットは、総選挙の結果さえ出れば、「少なくとも自民党の衆院議員は禊ぎを終えた」と主張できることだろう。
「他にもメリットはあります。いわゆる“10増10減”の問題です。衆院における“一票の格差”を是正するため、政府の審議会は、25都道府県、140選挙区の区割り案を勧告しています。予定では、秋の臨時国会で改正公職選挙法が成立し、1カ月の周知期間を経て導入されることになっています」(同・ベテラン議員)
ところが「10減」は、安倍元首相の地元・山口県や、自民党の大物議員である二階俊博元幹事長(83)の地元・和歌山県などが含まれている。
「安倍さんが存命でも、山口県や和歌山県は大モメすることは必至と言われていました。しかし、10月か11月に解散をすれば、現行の区割りで総選挙が行われます」(同・ベテラン議員)
おまけに、本来なら山口県と和歌山県では、来年4月に衆院補選が行われる予定になっている。こちらも早期解散に踏み切れば、総選挙に吸収される。
と、まさにいいことずくめの早期解散論なのだが、岸田首相が決断する可能性は決して高くはないという。ベテランの政治記者が言う。
「解散総選挙は、かなりのエネルギーを必要とします。そもそも、どんな首相だって長期政権を夢見ているものです。岸田さんだって例外ではありません。野党も支持率は低いとはいえ、選挙の結果によっては、岸田さんが自民党内で求心力を失うことだって考えられます」
岸田首相に決断力はあるか──この問いにベテラン記者は首を横に振る。
「岸田さんに早期解散を決断できる勇気はないでしょう。このまま内閣支持率は下がるも、選挙はやらないとなると、党内から岸田さんを引きずり下ろそうという動きが出てくるかもしれません」
註1:内閣支持率4ポイント上昇52% 安倍氏銃撃「選挙に影響」71% 毎日新聞世論調査(毎日新聞・電子版・7月18日)
註2:内閣支持急落、迫る「危険水域」=国葬・旧統一教会、支持層も不満-時事世論調査(時事通信・9月15日)
デイリー新潮編集部