NPO法人「難病患者支援の会」(東京)の仲介でベラルーシに渡航し、肝臓と腎臓の同時移植を受けた後に死亡した患者男性(当時45歳)の遺族がNPOを相手取り、費用の一部約4000万円の返還を求める訴訟を東京地裁に起こしていたことがわかった。
提訴は、NPOが臓器移植法違反容疑で警視庁に摘発される前の1月29日付。
訴状によると、男性は肝臓と腎臓を患い、NPOに仲介を依頼してベラルーシで臓器移植を受けることを決意。昨年5月頃、医師の診断書の手配や現地での滞在支援などの名目でNPOと契約を交わし、計約8500万円をNPOの口座に振り込んだ。
男性は同月中にベラルーシに入国し、ドナー(臓器提供者)が見つかるのを待ったが、同7月下旬、NPOの滞在支援などは不要になったとして契約解除をNPOに伝えた。一方で、現地での滞在は続け、同9月1日に病院で肝臓と腎臓の移植手術を受けた。手術後に腹膜炎を起こし、同28日に現地で死亡した。
遺族は訴状で、男性が支払った費用のうち4000万円は使われておらず、NPOの不当利得に当たるとして返還を求めている。5月に第1回口頭弁論があったが、NPO理事長の菊池仁達被告(63)(臓器移植法違反で起訴)は勾留中で出廷せず、今月27日に次回弁論が予定されている。
読売新聞が入手した録音記録によると、菊池被告は昨年5月、男性側から苦情があったと関係者に明かし、「じゃあ降りる(仲介をやめる)って言ったら黙っちゃって。あと2000万円出さないと俺はやらないよって言ったら、プラス2000万円振り込んできたよ」などと発言していた。
菊池被告は、男性とは別の患者2人にベラルーシでの臓器移植をあっせんしたとして臓器移植法違反(無許可あっせん)で東京地裁に起訴されている。取材に弁護士を通じて「ノーコメント」とした。
NPOを巡っては、中央アジア・キルギスなどでの移植を依頼した別の男性(59)も昨年12月、手術を受けられなかったなどとしてNPOに約1841万円の返還などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。