中年男性の炎上が後を絶たない。火種は確かにあったかもしれない。でも中には火種をつくった人が「おじさん」であったがゆえに余計に燃え広がる事例がある。なぜこんなにも“叩いていい存在”になったのか。その背景を探ってみた。◆新人研修での発言が社内炎上して孤立
昭和型サラリーマンの価値観が社内で叩かれる原因になってしまったのは、サイボウズの松川隆さん(50歳)だ。
炎上が起きたのは8年前。当時は人事部で新人研修を行う立場だった松川さん。いわゆる熱血漢だ。
「昼休みに新人が先輩と談笑している姿が怠惰に見えて、オンライン掲示板に名指しで、『君が集中すべきことは目の前の研修だろ』と強めの文章を書き込みました。すると多くの社員から『昼休みの行動を制限するのはおかしい』と反論されて。昔のやり方は通じないんだと痛感しました」
◆「熱血指導が“自分らしさ”だと思ってましたが…」
仕事は気合と根性で乗り切るのが当たり前。そんな偏った価値観を押しつけたことで松川さんは社内で孤立した。
「当時は味方が誰もいないように感じて、会社に行きたくなかったです。熱血指導が“自分らしさ”だと思ってましたが、炎上して以降は、部下に強いる言い方ではなく、『こう思うんだけど、あなたはどうしたい?』と提案するようになりました。余計な摩擦を生んで疲弊したくないですから」
◆「セミナーでみのネタになっているのが救い」
今はかつての社内炎上をようやく笑い話として昇華できるようにもなったという。
「周りの社員に“燃える男”とイジられたのも、社外の中年向けセミナーでみのネタになっているのが救いです」
松川さんのように、職場で生きづらさを感じる人は多い。
「最初に役職や肩書を伝えると若手に煙たがられるので、なるべく明かさない」(41歳・広告代理店)、「社員の容姿を褒めると下心があると思われて避けられるので一切触れない」(43歳・会社経営)など、彼らは社内で叩かれることにおびえて縮こまっている。
「昭和世代の感覚や距離感の詰め方で、『よかれと思って』助言をしたり、こだわりが譲れなかったりする中年は想像力や共感力が欠如した浮いた存在になってしまいます。その結果、叩かれる標的にされてしまうのです」(恋愛戦略家・関口みなこ氏)
これらは対岸の火事ではなく、いつ自分の身に起こるかわからない。
【恋愛戦略家・関口みなこ氏】著書に『「最初の男」になりたがる男、「最後の女」になりたがる女 夜の世界で学ぶ男と女の新・心理大全』(KADOKAWA)がある
取材・文/週刊SPA!編集部