今や種類が豊富に取り揃えられているコンタクトレンズ。1dayタイプ、2weekタイプ、1monthタイプなど使用期間もさまざまだが、つい使用期間を超えて使い続けてしまったり、コンタクトレンズをつけたまま寝てしまったという人もいるだろう。 しかし、利用方法や保存方法を一歩間違えれば失明するリスクもある。安全に使用するために今一度ケアの方法・注意点などを確認すべく、専門家に聞いてみた。
まずお話を聞いたのは、株式会社シード。長年コンタクトレンズやコンタクトレンズケア用品などの製造・販売に携わっているトップ企業だ。お手入れ方法についてシードの広報担当である金澤さんにインタビューした。
◆コンタクトレンズのお手入れ方法を聞く
――コンタクトレンズの装着で間違いがちなポイントについて教えてください。
金澤:外出時にアイメイクをする方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、アイメイクをしてからコンタクトレンズを装用するのは推奨しません。日焼け止めやファンデーションなどの化粧品を直接手で触った場合は、手に化粧品成分が残っている可能性があります。
これらの汚れがレンズに付着したままですと、汚れが涙液をはじいて視界が曇ることが多くなります。お化粧をする際は、石鹸で手を洗ってから「アイメイクをする前」にコンタクトレンズを装用、そしてお化粧を落とす前にコンタクトレンズを外す「レンズ ファースト」を推奨いたします。
◆期限を守らないと眼障害を引き起こす可能性も
金澤:またこれから夏になるとプールを楽しむ方が増えると思いますが、コンタクトレンズをつけたまま入るのは危険です。プールの水に存在する雑菌が付いたコンタクトレンズを装用し続けると、細菌・カビの繁殖につながり、その結果、眼障害などのトラブルを引き起こす場合があります。視力の悪い方は、コンタクトレンズは装用せずに、度付きのゴーグルを使用することを推奨します。
あと、たまに2weekタイプを「14回使える」と勘違いしている人がいます。2weekタイプのコンタクトレンズは開封してから最長14日間再使用可能なもの。開封後2週間を過ぎたら、その間に1回しか装用していなかったとしても、新しいレンズに交換する必要があります。
この使用期間を守らずに装用を続けると、劣化や破損の恐れ、汚れの蓄積などによって異物感や眼障害を引き起こす可能性があるので気をつけましょう。
◆コンタクトレンズの注意点は他にも
――構造上1dayタイプのコンタクトレンズと、2weekタイプのコンタクトレンズはどこが違うのでしょうか?
金澤:1dayタイプは1日で使い捨てるソフトコンタクトレンズです。常に新しいレンズを使用するためレンズケアをする必要がなく、また衛生的です。2weekタイプは1枚のレンズを最長2週間の使用サイクルで洗浄と消毒をしながら取り扱うレンズです。レンズケアの煩雑さはありますが、一般的に1dayタイプに比べて低コストで使用できます。
コンタクトレンズは心臓ペースメーカーと同じ「高度管理医療機器」(使用中に不具合が生じた場合や、副作用・機能障害を生じた場合の人体へのリスクが高いもの)です。誤った方法でコンタクトレンズを使用した場合、重大な眼障害を引き起こす可能性が高くなるため、正しく使用する必要があります。
コンタクトレンズメーカーでは、使用期間内(1dayタイプは1日・単回使用)での使用を想定してのみ使用上の安全性を確認しています。そのため、必ず使用期間をお守りいただくようお願いしております。
◆コンタクトレンズケースもケアが必要?

金澤:意外と皆さんが気付かないのが、コンタクトレンズの洗浄不足。コンタクトレンズはこすり洗いが推奨されています。こすり洗いをすると、タンパク質や脂質、カルシウムなどを落とすことができるため、つけおき洗浄よりも強力な洗浄効果や消毒効果を発揮するためです。
特にソフトコンタクトレンズは水分を含んだ素材で作られているため、装用中に涙液に含まれるタンパク質、脂質、カルシウムなどの汚れがレンズに付着します。これらの汚れの洗浄が不十分だと、つけ心地が悪くなるだけでなく、視力矯正力の低下や、眼障害を引き起こす場合があります。コンタクトレンズケア用品ごとにレンズケア方法は異なりますので使用説明書を必ずご一読いただき、正しいケアを行うことが大切です。
――コンタクトレンズを保存する際に気をつけることはありますか?
金澤:コンタクトレンズだけでなく保存するレンズケースもしっかり洗い、しっかり乾燥させておくことが大事です。レンズケースの洗浄不足、長期間使用により汚れが蓄積し細菌の繁殖をまねくことがありますので、ケア用の製品を購入するごとに新しいレンズケースに交換することを推奨します。
コンタクトレンズを取り出したケース内の液を再利用するのも、同様の理由でNG。1dayタイプ以外はコンタクトレンズケースに市販のケア用品を使用し、保存するようにしましょう。
◆コンタクトレンズと長く付き合っていくために
――コンタクトレンズと長く付き合っていくためにすべきことがあれば教えてください。
金澤:コンタクトレンズを使用する方は眼科の定期検診を受けることをおすすめします。目にキズなどのトラブルがあっても、自覚症状がなく、気づかないうちに激しい痛みや充血などの眼障害が進行するケースがあります。
また、度数があわなくなったコンタクトレンズを使用することは目が疲れやすくなる一因です。そして、目の疲れが肩こりや頭痛の原因になっている場合も……。目の異常に自覚がなくても定期的に目の検診を受けることも重要です。
◆コンタクトレンズの使用期限を医師に取材
続いてお話を聞いたのは、TCB東京中央美容外科池袋西口院の院長・岡ひかり医師。美容医療に関してはもちろんのこと、大学病院で眼科医として勤務した経験もあり、幅広い知識を有している。コンタクトについて医学的な観点で回答をいただいた。
――そもそもなぜコンタクトレンズの使用期限があるのでしょうか?
岡ひかり(以下、岡医師):コンタクトレンズに使用されるレンズの素材にはそれぞれ耐久性があり、未開封であっても耐久性や安全性は落ちていきます。そのため、安全に使用できる期間の目安として、各メーカーごとに使用期限を設けています。期限切れのコンタクトを使った場合、感染症のリスクが高まったり、レンズが破損し目が傷つく可能性があります。
――コンタクトレンズで1dayのものを2日以上使う人もいると思いますが、医療上どのようなリスクがあるのでしょうか?
岡医師:1日のみ使える設計で作られているため、2weekタイプなどに比べると劣化が早く、破れやすくなります。破れると角膜に傷がついたり、ひどい場合はそこから細菌が感染し角膜潰瘍といわれる状態になる事もあります。角膜潰瘍はコンタクトレンズ装用における症状の中では重度で失明してしまうこともあります。傷が治っても角膜の濁りが残り、視力低下の原因になることがあります。
◆コンタクトレンズを水道水で洗ってはダメ?

岡医師:水道水を使用すると浸透圧の違いからコンタクトレンズの形状変形や、水道水に含まれる鉄・カルシウムイオンなどによるコンタクトレンズの汚れ、塩素による眼障害を発症する可能性があります。日本の水道水は塩素消毒によって大腸菌に代表される病気の原因になる微生物は除去されていますが、すべての微生物を取り除いた無菌の状態ではありません。
なかでも水道水が原因で発症する角膜感染症の代表例としてアカントアメーバ角膜炎が挙げられます。アカントアメーバ角膜炎は診断や治癒が難しい難治性疾患で、治癒しても角膜の混濁や不正乱視が残存して視力障害をおこします。失明の恐れがある怖ろしい疾患なのでコンタクトレンズの水洗いは絶対にやめましょう。
◆異常を感じたら眼科ですぐに診察を
――コンタクトレンズをつけたまま昼寝や仮眠をとっても大丈夫でしょうか?コンタクトレンズの装着時間の目安があれば教えてください。
岡医師:睡眠中はまばたきがないため、涙が減少し、乾燥してコンタクトは眼に張り付いてしまいます。張り付いた状態で外してしまうと、角膜(黒目)に傷がついてしまう可能性があります。また、コンタクトレンズを装着している時は、角膜はレンズに含まれた水分や眼とレンズの間にある涙から酸素を取り込んでいます。睡眠中、涙が少なくなると角膜は酸欠を起こしてむくみ、感染症を起こしやすくなったり、角膜内皮細胞が減少してしまったりということが起こります。
この角膜内皮細胞というものはとても大切なもので角膜の呼吸や代謝を担っており、角膜の透明性を維持しているもので、一度減ってしまうと元には戻りません。あまりにも数が少なくなってしまうと、将来、白内障の手術などができなくなってしまう可能性もあると言われています。仮眠であっても必ずコンタクトレンズは外したほうが良いです。
装用時間の目安は1日平均12~16時間までとされていますが、それはあくまでも目安です。目の状態には個人差があり、生活環境や使用しているコンタクトレンズの種類によっても変わります。必ず眼科医の診察を受け、その指示に従って、目に負担をかけないように装用時間を守りましょう。
<取材・文/はるうらら>
【岡ひかり】TCB東京中央美容外科「池袋西口院」院長として、数多くの施術を担当しており、患者様に寄り添った親身なカウンセリングが好評。美容医療に関してはもちろんのこと、大学病院で眼科医として勤務した経験もあり、幅広い知識を有している。これまで培った経験を活かし、患者様の笑顔を引き出す治療プランを提供する