砂ぼこりで住環境が悪化したとして、千葉県山武市で住民の苦情が相次いでいる。
市が住民に十分説明しないまま、同市小松の市有地を大規模な土砂置き場にしたうえ、搬入された建設残土(建設発生土)が周囲の住宅に飛散しているためだ。市は説明不足などを認め、15日の市議会で土砂の半分を撤去する方針を示した。(長原敏夫)
問題の市有地は、九十九里浜から500メートルほど内陸にあり、九十九里ビーチライン(県道30号飯岡一宮線)に近い。敷地には、土砂が2・5~3メートル超の高さに積み上がっている。幅は最大100メートル超、長さも200メートルを超え、台地のようだ。斜面が住宅のすぐそばに迫り、晴れた日には砂が舞い上がる。
「南風が吹いた今年の5月は、私の家の前は砂嵐状態だった。洗濯物も干せない」。土砂搬入口の近くに住む農業男性(65)は、表情を曇らせる。
「土砂の台地」から約20メートル離れた場所に住む無職女性(85)は、「砂が飛んできて2階ベランダの床にたまる」と嘆く。風で再び、砂ぼこりが舞い上がるため、窓も開けられないという。
◎ 現場はかつて、日本大学が所有していた。元々は池と湿地で、2014年に市に無償譲渡された。
一部の住民から「悪臭がするので池を埋め、湿地も土で覆ってほしい」との要望を受け、市は埋め立てを決めた。その際、将来の工事で使う土砂の保管場所としても利用することとし、地元業者に委託して土砂の搬入を始めたという。昨年3月から6月の約3か月間に、約2万2000平方メートルの敷地に約5万5000立方メートルの土砂が運び込まれた。
しかし、土砂置き場とすることについて、住民への説明はほとんどなく、住民説明会などは開かれなかった。さらに、想定を大きく超えた量の土砂が搬入されたため、市は業者に搬入を止めさせる事態となった。
◎ 砂ぼこりに悩む無職女性は、「土砂置き場を造るなんて聞いていなかった。回覧板で知らされることもなかった」と憤る。搬入口の近くに住む農業男性も、「土砂搬入が始まっても、工事内容を知らせる看板一つ立てていなかった。山がどんどん高くなるので『現場を見に来い』と市に電話したこともある」と語気を強める。
この問題は15日の市議会定例会の一般質問でも取り上げられ、市の今関務・建設環境部長は「できるだけ早く(土砂を)搬出したい」と答弁した。土砂の半分ほどを撤去し、十数キロ離れた市の建設資材置き場に移す方針も示した。
市によると、撤去によって土砂の高さを1メートル弱まで下げる。「土砂の山が高くなり、風で飛ばされやすくなった」(市建設環境部)とみているためだ。低くした後は草の種をまき、飛散を抑えるという。
「住民からの埋め立て要請をきっかけとした土砂の搬入だったので、(当時の担当者が)住民説明会などを開かなかったのかもしれない」。今関部長は読売新聞の取材に、住民への説明が不足した経緯を釈明し、「結果的に説明不足となり、申し訳ない」と話した。
市によると、費用は搬入業者に求めず、市が負担するという。搬入時の委託費との「二重払い」になりかねず、市は丁寧な説明が求められそうだ。