2023年6月8日お昼過ぎ。7人が死亡、10人が重軽傷を負った秋葉原無差別殺傷事件が起きた現場付近の交差点には、近くに住む僧侶が訪れた。13回忌までは追悼法要を行なっていたが、以降は訪れるだけにしている。
【写真】事件現場で手を合わせる大友秀逸さん「私も、犠牲になった人が刺されたのを見ました。ショックでした。地元でこんなことが起きるなんて考えてもみませんでした。僕は僧侶ですから供養するしかない。 事件後、四十九日まで毎日通ったんですが、秋葉原の女の子たちが花を買ってきて『どうやって線香あげるんですか?』と聞いてくるし、行列して並ぶわけです。ここで本当に勉強させられました。犠牲者のことを知らなくても、供養する気持ちは持っているんだなと思いました」

「行動で示すというのを死刑執行まで貫いた」加藤智大元死刑囚のかつての同僚、大友秀逸さん(46) 渋井哲也 あの事件からちょうど15年が経った。加藤智大元死刑囚のかつての同僚、大友秀逸さん(46)も事件発生の日に毎年訪れる。大友さんは事件後、加藤に手紙を送り続けたが、一度も返事はなかった。しかし、その一方で加藤は著書を4冊出した。「すべて本に書いたから、読めという感じ。あの人は行動で示す人、それを貫いた。会社を辞めたときも、無言で無断欠勤をすればわかってくれるだろうと思っていたんだろうと。それに、僕自身とのやりとりでも、態度で嫌だというのは示しましたが、言葉にはしない。最後まで何も語らなかったですね。死刑囚表現展では絵の作品を出していただけで、行動で示すというのを死刑執行まで貫いたんだな」 仙台の警備会社では一緒に働いていたが、その時は何か悩みのようなものは話さなかったのか。「ご飯に行くときに、ゲームや車、アニメの話はしていました。親の話をしても『元気です』と答えるだけ。突っ込む質問をすると、嫌な顔をして黙ってしまう。悩みを抱えていたというよりは、何かを抱えていたという感じで、それ以上、踏み込まなかった。本人は会社を人間関係で辞めたと、裁判でも書籍でも語っていましたが……」「恥ずかしいと思っていたので…」話せずに後悔していること 大友さんもかつては鬱になり、自殺未遂をしている。その経験は話さなかったのか。「話しませんでした。彼が親の話をして顔を曇らせたときに、もし恥ずかしいことと思わなければ、『実は、半年前、僕は自殺未遂した』という話もしたと思うんです。そうしたら、加藤も『自分の親にこういう教育を受けた……』みたいな展開になっていた可能性はあるんじゃないかと思っています。もちろん、それでも黙っていたかもしれないですけどね。 でも、少なくとも(話してくれる)可能性はあったかな。当時は『死んでしまいたい』と考えたことは恥ずかしいと思っていたので話せなかったですね。そこは唯一、後悔です」 大友さんは、加藤との関係を考えることで、今の人間関係を見直している。「加害者がいなければ、被害者もいない。加害者がうまれないようにするにはどうすればいいか考えています。振り返ってみると、キーポイントは自分の過去を話せなかったこと。(SNSで情報を発信する中で)DMをくれる人もいる。『消えてしまいたい』というメッセージもあります。上っ面なことを言っても響かないので、自分が見てきたこと聞いてきたことを伝えて、その人が何か感じてくれたらいいなと」(渋井 哲也)
「私も、犠牲になった人が刺されたのを見ました。ショックでした。地元でこんなことが起きるなんて考えてもみませんでした。僕は僧侶ですから供養するしかない。
事件後、四十九日まで毎日通ったんですが、秋葉原の女の子たちが花を買ってきて『どうやって線香あげるんですか?』と聞いてくるし、行列して並ぶわけです。ここで本当に勉強させられました。犠牲者のことを知らなくても、供養する気持ちは持っているんだなと思いました」
加藤智大元死刑囚のかつての同僚、大友秀逸さん(46) 渋井哲也
あの事件からちょうど15年が経った。加藤智大元死刑囚のかつての同僚、大友秀逸さん(46)も事件発生の日に毎年訪れる。大友さんは事件後、加藤に手紙を送り続けたが、一度も返事はなかった。しかし、その一方で加藤は著書を4冊出した。
「すべて本に書いたから、読めという感じ。あの人は行動で示す人、それを貫いた。会社を辞めたときも、無言で無断欠勤をすればわかってくれるだろうと思っていたんだろうと。それに、僕自身とのやりとりでも、態度で嫌だというのは示しましたが、言葉にはしない。最後まで何も語らなかったですね。死刑囚表現展では絵の作品を出していただけで、行動で示すというのを死刑執行まで貫いたんだな」
仙台の警備会社では一緒に働いていたが、その時は何か悩みのようなものは話さなかったのか。「ご飯に行くときに、ゲームや車、アニメの話はしていました。親の話をしても『元気です』と答えるだけ。突っ込む質問をすると、嫌な顔をして黙ってしまう。悩みを抱えていたというよりは、何かを抱えていたという感じで、それ以上、踏み込まなかった。本人は会社を人間関係で辞めたと、裁判でも書籍でも語っていましたが……」「恥ずかしいと思っていたので…」話せずに後悔していること 大友さんもかつては鬱になり、自殺未遂をしている。その経験は話さなかったのか。「話しませんでした。彼が親の話をして顔を曇らせたときに、もし恥ずかしいことと思わなければ、『実は、半年前、僕は自殺未遂した』という話もしたと思うんです。そうしたら、加藤も『自分の親にこういう教育を受けた……』みたいな展開になっていた可能性はあるんじゃないかと思っています。もちろん、それでも黙っていたかもしれないですけどね。 でも、少なくとも(話してくれる)可能性はあったかな。当時は『死んでしまいたい』と考えたことは恥ずかしいと思っていたので話せなかったですね。そこは唯一、後悔です」 大友さんは、加藤との関係を考えることで、今の人間関係を見直している。「加害者がいなければ、被害者もいない。加害者がうまれないようにするにはどうすればいいか考えています。振り返ってみると、キーポイントは自分の過去を話せなかったこと。(SNSで情報を発信する中で)DMをくれる人もいる。『消えてしまいたい』というメッセージもあります。上っ面なことを言っても響かないので、自分が見てきたこと聞いてきたことを伝えて、その人が何か感じてくれたらいいなと」(渋井 哲也)
仙台の警備会社では一緒に働いていたが、その時は何か悩みのようなものは話さなかったのか。
「ご飯に行くときに、ゲームや車、アニメの話はしていました。親の話をしても『元気です』と答えるだけ。突っ込む質問をすると、嫌な顔をして黙ってしまう。悩みを抱えていたというよりは、何かを抱えていたという感じで、それ以上、踏み込まなかった。本人は会社を人間関係で辞めたと、裁判でも書籍でも語っていましたが……」
大友さんもかつては鬱になり、自殺未遂をしている。その経験は話さなかったのか。
「話しませんでした。彼が親の話をして顔を曇らせたときに、もし恥ずかしいことと思わなければ、『実は、半年前、僕は自殺未遂した』という話もしたと思うんです。そうしたら、加藤も『自分の親にこういう教育を受けた……』みたいな展開になっていた可能性はあるんじゃないかと思っています。もちろん、それでも黙っていたかもしれないですけどね。
でも、少なくとも(話してくれる)可能性はあったかな。当時は『死んでしまいたい』と考えたことは恥ずかしいと思っていたので話せなかったですね。そこは唯一、後悔です」
大友さんは、加藤との関係を考えることで、今の人間関係を見直している。「加害者がいなければ、被害者もいない。加害者がうまれないようにするにはどうすればいいか考えています。振り返ってみると、キーポイントは自分の過去を話せなかったこと。(SNSで情報を発信する中で)DMをくれる人もいる。『消えてしまいたい』というメッセージもあります。上っ面なことを言っても響かないので、自分が見てきたこと聞いてきたことを伝えて、その人が何か感じてくれたらいいなと」(渋井 哲也)
大友さんは、加藤との関係を考えることで、今の人間関係を見直している。
「加害者がいなければ、被害者もいない。加害者がうまれないようにするにはどうすればいいか考えています。振り返ってみると、キーポイントは自分の過去を話せなかったこと。(SNSで情報を発信する中で)DMをくれる人もいる。『消えてしまいたい』というメッセージもあります。上っ面なことを言っても響かないので、自分が見てきたこと聞いてきたことを伝えて、その人が何か感じてくれたらいいなと」
(渋井 哲也)