いつも履いている靴の汚れを気にすることはあっても、靴底の減りを気にしたことがある人は少ないのではないでしょうか。実は、靴底の減り方を見ると、歩き方のクセや体のトラブルなどに気づくことができると、世田谷人工関節・脊椎クリニックの塗山正宏先生はいいます。では、どんな減り方をしていると危険なのでしょうか。本記事でくわしくみていきましょう。
厚生労働省が公表した「令和元年 国民健康・栄養調査報告」によると、1日当たりの平均歩数は、男性が6,793歩、女性が5,832歩です※。
※ 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」
つまり、数十キロの体重をかけて毎日約6,000歩も歩いているのですから、靴底が少しずつすり減ってくるのは当然のこと。この靴底の減り方にも個人差があります。しかし、左右均等にバランスよく減っていれば正常なのですが、股関節や膝関節に疾患があると、明らかに左右均等ではなく、バランスの悪い減り方をしています。いったいどんなケースがあるのか見ていきましょう。
靴底を見て、外側が減っていることはありませんか? その場合、もしかしたら変形性膝関節症を発症しているのかもしれません。
[図表1]靴底の外側が減っている
なぜかというと、変形性膝関節症は進行すると、脚がO脚になるからです。
そもそもO脚とは、直立した時に膝の内側同士がくっつかず、外側に開いている状態のこと。脚がアルファベットのOの字のようになっていることから、このように呼ばれています。
O脚になる原因は、骨格や姿勢、筋力低下などさまざまですが、「変形性膝関節症」の発症によってなっているケースも少なくありません。O脚になると、股関節や骨盤が外側に歪み、足の外側に重心をかけるようにして歩きます。そのため、靴底の外側の減りが目立ってしまうのです。
変形性膝関節症になると、なぜO脚になるのかというと、この症状は多くの場合、膝関節の内側の軟骨がすり減っていくためです。
変形性膝関節症は、加齢などが原因で膝関節の軟骨がすり減り、膝関節に負担がかかって痛みが生じたり、可動域が狭くなった状態です。軟骨は膝関節の内側からすり減っていく傾向にあるため、そのすり減りをカバーするように体重が膝の外側にのるようになり、次第にO脚になっていくのです。
[図表2]正常な脚と、O客で内側の関節軟骨がすり減った状態
靴底の「内側」が減っていたら?理想をいえば、靴底の減り方は左右均等なのが一番ですが、歩き方のクセや骨格的な問題により、靴底の減り方は左右均等でない場合がほとんど。しかし、左右均等ではないということは、身体のどこかに構造的な問題が潜んでいるということでもあります。今度は「内側から減った場合」「左右差が出た場合」をみていきましょう。靴底の「内側」が減っていたら「寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)」かも靴底を見て、内側が減っている場合は、「寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)」の可能性が考えられます。寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)とは、簡単にいえば「股関節のかぶりが浅い」状態のことです。[図表3]靴底の内側が減っている寛骨臼は、骨盤の外側にあり、寛骨の中央部にあるカップ状の陥凹部のことをいいます。通常、寛骨臼は太ももの骨である大腿骨をしっかりと覆うことで、骨盤から大腿骨へしっかり体重をのせることができます。しかし日本人の場合、生まれつき大腿骨頭を覆っている寛骨臼のかぶりが少ないことが多いため、体重を支える面積が小さくなってしまいます。このような状態を「寛骨臼形成不全」といい、将来的に変形性股関節症に移行することが多いとされています。寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)があると、大腿骨のねじれが強く脚が内股で歩くために体重が脚の内側にかかるようになり、X脚になります。そのため、靴底の内側が減ってしまうのです。靴底の減りが「左右違う」場合は、足の長さが違うかも靴底を左右見比べて、まったく同じようにすり減っている人は、ほとんどいないでしょう。しかし、その左右差があまりにも大きい場合は、左右の脚の長さが違うことが考えられます。[図表4]靴底の減りに左右差が大きくある左右の脚長に違いが生じる原因には、変形性膝関節症や変形性股関節症などさまざまありますが、脚の長さが左右で違うと、膝や腰に負担がかかり、膝痛、腰痛などを引き起こします。またそれだけでなく、全身の荷重バランスが悪くなることから、首こりや肩こり、頭痛など、さまざまな部位に症状が生じることもあります。また、脚の長さに左右差があると、背骨が弯曲して側弯症を引き起こすこともあり、場合によっては腰背部痛や心肺機能の低下をきたすこともあります。実際のところ、左右の脚の長さがまったく同じという人は少なく、1cm程度であれば、それほど気にならない場合もあります。しかし、わずかな違いでも、骨盤や背骨に与える影響は大きなもの。整形外科などを受診し、脚長差が生じる原因を確認し、適した治療を行うことが必要です。特に、脚長差が3cm以上ある場合は負担が大きくなるため、注意が必要です※。※ 変形性股関節症の運動・生活ガイド靴底の減り方を見ると、膝関節や股関節などにトラブルが生じているサインが見えてきます。もし、靴底の減りの左右差が大きい場合は、足底板やインソールを試してみるのもいいでしょう。歩行時の体重のかかり具合を調整することで、左右均等に体重がのるようになり、膝関節や股関節への負担を軽減できるかもしれません。理想的な「靴底」の状態は?理想的なのは、靴の後ろの外側(かかとのあたり)と、足の人差し指辺りを中心に減っている靴底です。[図表5]理想的な減り方をしている靴底このような減り方の場合、しっかりかかとから着地し、外側と内側に、均等に体重が乗っていることがわかります。もし、その他の部分が異常にすり減っているという場合は、ぜひ一度、専門医を受診することをおすすめします。塗山 正宏世田谷人工関節・脊椎クリニック
理想をいえば、靴底の減り方は左右均等なのが一番ですが、歩き方のクセや骨格的な問題により、靴底の減り方は左右均等でない場合がほとんど。しかし、左右均等ではないということは、身体のどこかに構造的な問題が潜んでいるということでもあります。今度は「内側から減った場合」「左右差が出た場合」をみていきましょう。
靴底を見て、内側が減っている場合は、「寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)」の可能性が考えられます。寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)とは、簡単にいえば「股関節のかぶりが浅い」状態のことです。
[図表3]靴底の内側が減っている
寛骨臼は、骨盤の外側にあり、寛骨の中央部にあるカップ状の陥凹部のことをいいます。通常、寛骨臼は太ももの骨である大腿骨をしっかりと覆うことで、骨盤から大腿骨へしっかり体重をのせることができます。
しかし日本人の場合、生まれつき大腿骨頭を覆っている寛骨臼のかぶりが少ないことが多いため、体重を支える面積が小さくなってしまいます。このような状態を「寛骨臼形成不全」といい、将来的に変形性股関節症に移行することが多いとされています。
寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)があると、大腿骨のねじれが強く脚が内股で歩くために体重が脚の内側にかかるようになり、X脚になります。そのため、靴底の内側が減ってしまうのです。
靴底の減りが「左右違う」場合は、足の長さが違うかも靴底を左右見比べて、まったく同じようにすり減っている人は、ほとんどいないでしょう。しかし、その左右差があまりにも大きい場合は、左右の脚の長さが違うことが考えられます。[図表4]靴底の減りに左右差が大きくある左右の脚長に違いが生じる原因には、変形性膝関節症や変形性股関節症などさまざまありますが、脚の長さが左右で違うと、膝や腰に負担がかかり、膝痛、腰痛などを引き起こします。またそれだけでなく、全身の荷重バランスが悪くなることから、首こりや肩こり、頭痛など、さまざまな部位に症状が生じることもあります。また、脚の長さに左右差があると、背骨が弯曲して側弯症を引き起こすこともあり、場合によっては腰背部痛や心肺機能の低下をきたすこともあります。実際のところ、左右の脚の長さがまったく同じという人は少なく、1cm程度であれば、それほど気にならない場合もあります。しかし、わずかな違いでも、骨盤や背骨に与える影響は大きなもの。整形外科などを受診し、脚長差が生じる原因を確認し、適した治療を行うことが必要です。特に、脚長差が3cm以上ある場合は負担が大きくなるため、注意が必要です※。※ 変形性股関節症の運動・生活ガイド靴底の減り方を見ると、膝関節や股関節などにトラブルが生じているサインが見えてきます。もし、靴底の減りの左右差が大きい場合は、足底板やインソールを試してみるのもいいでしょう。歩行時の体重のかかり具合を調整することで、左右均等に体重がのるようになり、膝関節や股関節への負担を軽減できるかもしれません。理想的な「靴底」の状態は?理想的なのは、靴の後ろの外側(かかとのあたり)と、足の人差し指辺りを中心に減っている靴底です。[図表5]理想的な減り方をしている靴底このような減り方の場合、しっかりかかとから着地し、外側と内側に、均等に体重が乗っていることがわかります。もし、その他の部分が異常にすり減っているという場合は、ぜひ一度、専門医を受診することをおすすめします。塗山 正宏世田谷人工関節・脊椎クリニック
靴底を左右見比べて、まったく同じようにすり減っている人は、ほとんどいないでしょう。しかし、その左右差があまりにも大きい場合は、左右の脚の長さが違うことが考えられます。
[図表4]靴底の減りに左右差が大きくある
左右の脚長に違いが生じる原因には、変形性膝関節症や変形性股関節症などさまざまありますが、脚の長さが左右で違うと、膝や腰に負担がかかり、膝痛、腰痛などを引き起こします。またそれだけでなく、全身の荷重バランスが悪くなることから、首こりや肩こり、頭痛など、さまざまな部位に症状が生じることもあります。
また、脚の長さに左右差があると、背骨が弯曲して側弯症を引き起こすこともあり、場合によっては腰背部痛や心肺機能の低下をきたすこともあります。
実際のところ、左右の脚の長さがまったく同じという人は少なく、1cm程度であれば、それほど気にならない場合もあります。
しかし、わずかな違いでも、骨盤や背骨に与える影響は大きなもの。整形外科などを受診し、脚長差が生じる原因を確認し、適した治療を行うことが必要です。特に、脚長差が3cm以上ある場合は負担が大きくなるため、注意が必要です※。
※ 変形性股関節症の運動・生活ガイド
靴底の減り方を見ると、膝関節や股関節などにトラブルが生じているサインが見えてきます。もし、靴底の減りの左右差が大きい場合は、足底板やインソールを試してみるのもいいでしょう。歩行時の体重のかかり具合を調整することで、左右均等に体重がのるようになり、膝関節や股関節への負担を軽減できるかもしれません。
理想的なのは、靴の後ろの外側(かかとのあたり)と、足の人差し指辺りを中心に減っている靴底です。
[図表5]理想的な減り方をしている靴底
このような減り方の場合、しっかりかかとから着地し、外側と内側に、均等に体重が乗っていることがわかります。もし、その他の部分が異常にすり減っているという場合は、ぜひ一度、専門医を受診することをおすすめします。
塗山 正宏
世田谷人工関節・脊椎クリニック