永遠のテーマともいえる「賃貸か持ち家か」論争。新築マンション価格の高騰、金利の上昇、ウッドショックなど、住まいをめぐる状況が変化していく中で、決着がつくどころか、ますます対立は激しくなっているようだ。そこで、マンショントレンド評論家で、著書『60歳からのマンション学』がある日下部理絵氏に、改めてそれぞれのメリット・デメリットを比較してもらい、どちらを選択するべきか、答えを出してもらった。
たびたび話題になる、マイホームは「賃貸」か、「持ち家」か論争。
巷では、賃貸は気楽だし、転勤や騒音トラブルなどがあっても、いつでも引っ越しできる。持ち家は自分のものになるから老後も安心、それにマイホームは長年の夢……などと議論は尽きない。なかには賃貸と持ち家だと、生涯の住居費で1000万円以上もの差がでた、との話もある。
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結論から先に申し上げて恐縮だが、どちらも正解でどちらも不正解である。現在の年齢、収入、家族構成など前提とする条件や計算方法、ライフスタイルによって結論は全く異なってくるからだ。たとえば初期費用や維持費、修繕費など将来想定されるあらゆる費用を含めて試算している場合もあれば、ざっくり住宅ローン返済額と賃料だけを比べている場合もある。さらに、住宅ローンも、借入金額や金利などの諸条件によって異なり、結果的に同じ価格の物件を購入しても金額は様々となる。ただし、視点を変えて見ると、賃貸物件はオーナーがおり、安価な賃料でも空室よりは貸した方がいいとか、相続で譲り受けたとか、慈善事業でもない限り、それなりに儲かるから貸しているわけだ。つまり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。しかし、ライフスタイルが変わらない人はいないし、「人生100年時代」といわれ、より長生きできることになり、今までの「住宅すごろく」から“もう一コマ”、はたまた「ふりだし」に戻り、いま一度、誰もが住まいについて考えなければならない時代になっている。いうならば長生きできることはメデタイはずだが、より論争を難解にしているともいえる。それによく考えると住宅ローンの返済期間である35年間は、終身雇用だったからできた逸話ともいえるかもしれない。さらに、新築マンション価格の高騰、金利の上昇、リフォーム費用の高騰など、いま住まいを取り巻く環境は厳しい。散々語り尽くされてきた感もあるが、皆さんにとっての解を導いていただくため、いま一度、賃貸と持ち家について、項目ごとに見ていこう。賃貸か持ち家か、12のチェックポイント(1) 初期費用の負担マイホームを借りるにしろ、買うにしろ初期費用がかかる。持ち家を現金で一括購入するケースは少ないので住宅ローンを組むと仮定すると、頭金や住宅ローン費用、登記費用、仲介手数料、不動産取得税などの諸費用として、物件価格の3%~10%程度の初期費用が必要。たとえば4000万円の住宅を購入した場合、120万~400万円程度の初期費用がかかる。いっぽう賃貸は、敷金、礼金、仲介手数料、物件によって保証会社の保証料がかかる。しかし、月額賃料が基本となり2か月~5か月程度。賃料にもよるが、持ち家と比べるとグッと初期費用は抑えられる。持ち家の方が初期費用の負担額は圧倒的に大きいのだ。Photo by iStock (2) ローン返済と家賃負担持ち家は、初期費用の負担は大きいが、ローン完済後は毎月の支払いがなくなり住居にかかる費用が賃貸と比べて少なくなる。賃貸は、初期費用の負担は抑えられるものの、賃貸で住み続ける限り毎月賃料を支払い続けなければいけない。(3) ローンリスク住宅を購入する際、一般的にローンを組むが、完済するまで毎月返済しなければいけない。リストラや転職などで収入減になり生活費が足りなくなった場合でも、ローンは払わなければならずローンリスクを負う。しかし、手続きすることで貸出条件緩和という措置が利用できることもある。それでも返済が難しい場合、売却の検討をすることになるが、住宅ローン残高より相場価格が大幅に低い場合、もし売却できても、家はないのにローン返済は続くというリスクがある。そのため、売却を選択することが現実的ではないこともある。さらに滞納が続く場合、住宅ローンを借りた金融機関(保証会社)から抵当権をもとに競売を申し立てられ、住宅ローンの残債を一括回収しようと強制的に売却される。その点、賃貸はローンリスクの想定は不要だ。賃貸物件に住んでいる限り賃料を払い続けなければいけないが、生活が苦しくなれば家賃の安いところへ引っ越しすることも可能である。(4) 税金持ち家は、住宅を取得した時に納める「不動産取得税」以外にも、土地や家屋といった不動産の所有者に課税される固定資産税や都市計画税(市街化区域内)を、毎年負担しなければならない。自宅を所有している限り毎年納付する必要があるため、住宅ローン完済後であっても、空室で現在は使っていなくても負担し続けなければならない。賃貸は所有していないため、当然ながら税金の負担はない。(5) 優遇制度持ち家は、一定の条件を満たせば、住宅ローン控除やすまい給付金、各種税金の軽減などの優遇措置を受けることができる。つまり、本来の費用よりも少ない金額で家を手に入れることができるのだ。しかし、賃貸にはこのような優遇制度の適用はない。住み替えや老後のことまで想定する(6) 保険料火災保険は、持ち家と賃貸どちらも加入が必要だが、賃貸は家財だけに火災保険をかけるのに対して、持ち家は家財と建物にも火災保険をかけるため、その分保険料がかかる。賃貸の方が保険料は安くすむ。Photo by iStock (7) 住宅性能建物の構造、設備や内装、気密性や断熱性、セキュリティ、災害への備え、サービス面など、近年では持ち家と遜色ない賃貸物件もあるが、一般的には持ち家の方が優れていることが多い。住宅性能は、住み心地にも大きく影響する。(8) 維持管理・修繕費などの費用持ち家は、維持管理にかかる費用、大規模修繕などの修繕費を負担しなければならない。マンションの場合、毎月、修繕積立金や一時金の徴収が発生する可能性も。賃貸は、毎月の家賃、共益費や管理費という名目で支払う以外は、維持管理の費用はオーナーや管理会社が負担する。修繕費も個人的に内装を変えたなどでなければ、自然故障は物件を所有するオーナーが負担するため基本的には不要である。(9) リフォーム持ち家であれば、壁紙の張り替え、間取りの変更、バリアフリー化など、自由にリフォームを行うことできる。ただし、マンションの場合は管理組合に申請し承認が必要。賃貸は基本的にリフォームできず、壁に釘やネジで穴を開ける際にも気を遣う。(10) 住み替えや引っ越し気軽に住み替えや引っ越しできる賃貸に対して、持ち家は簡単にはできない。持ち家を売却したり、貸したりしなければ資金繰りが大変になる。売却には時間を要し、買い手が見つからない(つまり売れない)、売れても購入金額と大幅な差異が出たり、売却金額によっては住宅ローンの残債より低く、自己資金がなければ引き渡しできないといったリスクも考えられる。賃貸であれば、家族が増えて家が狭くなった、子どもが独立して広すぎる、収入減・急な転勤などのライフスタイルに応じて、住み替え・引っ越しが持ち家より容易に実現できる。(11) 住まいの確保・安心感持ち家であれば、社会的信用のほか、将来にわたって住む場所があるという安心感を得ることができる。賃貸はオーナーの意向や保証会社の審査によって賃貸契約を継続できない場合がある。また、高齢になるほど借りられる物件が限定され借りにくくなる傾向がある。(12) 資産形成持ち家はローンを完済すると自分の資産として残り、いざというときには売却したり貸したりして資金源になる。なかには資産価値が大幅に下がることもあるが、買ったときより高く売れて得することも。また将来、子どもに財産として残すこともできる。老後は、自宅を売却した資金を老人ホームの費用に充てたり、不動産を担保にお金を借り入れ、亡くなった後に売却金で借入金を返済するリバースモーゲージを活用したり、リースバックという運営会社に売却後もそのまま住み続けられるサービスを活用するなど選択肢が広がる。いっぽう賃貸は「負動産」リスクはないものの、どれだけ家賃を支払い続けても自分の資産にはならない。賃貸のメリットとデメリットとは最後に、賃貸と持ち家についてメリットとデメリットをまとめよう。「賃貸」のメリット・住み替えがいつでも気軽にできる・初期費用が持ち家よりもかからない・職場によっては家賃補助を活用できる・収入に合わせて住居費(家賃)を調整できる・維持管理や修繕などメンテナンスが不要・相続トラブルに巻き込まれないPhoto by iStock 「賃貸」のデメリット・物件の選択肢が限られる・家賃を支払い続けなければいけない・いくら家賃を払っても資産にならない・賃貸借契約の更新時に更新料がかかる・設備や内装などグレードが持ち家より低い場合が多い・リフォームなどを自由にできない・高齢者は賃貸契約や更新を断られる可能性がある賃貸の最大のメリットは、何と言っても気軽に住み替えや引っ越しができること。転勤や転職、騒音などのトラブルに巻き込まれたときにも対応しやすい。また、収入に合わせて住居費(家賃)を調整することもできる。持ち家の場合は、年収が下がっても住宅ローンの総額が変わるわけではない。毎月の返済額など返済方法を変更する場合も手続きが煩雑である。賃貸は多額のローンを抱えるという心理的不安がない一方で、ずっと家賃を支払い続ける必要がある。またいくら家賃を払っても自分の物にならないため、人生100年時代という長い視点で見た場合、一生住める家はあるのかという不安が残る。さらに高齢になると、生活費のほかに医療費・介護費などの出費がかさむ。にもかかわらず、定年後の主な収入は年金となるため、年金だけで足りない場合は、バイトなどの再就職や貯蓄を切り崩して生活していくことに。平均寿命が延びることで住居費の負担が生活苦につながる可能性があるのだ。また、高齢になるほど賃貸物件の選択肢が減り、特に独居の高齢者は極めて借りにくいのが現状である。高齢でなくても貸主から建物の取壊しなどの正当な事由で更新を拒まれた場合、次の住まいはすぐに見つかるか、保証会社の審査や身元保証人の確保など、その都度手続きが必要であり、安定や安心は得られない傾向がある。一方、持ち家のメリットとデメリットは?「持ち家」のメリット・賃貸よりもファミリー層向けの物件が豊富・設備や内装などのグレードが賃貸より高い・リフォームやリノベーションが自分好みにできる・住宅ローン控除などの優遇制度を利用できる・万が一のとき団体信用生命保険で住宅ローンがゼロになる・ローン完済すれば老後の住居費用の負担が減る・資産を持つことができ、親族に残すこともできるPhoto by iStock 「持ち家」のデメリット・簡単に住み替えができない・買い替えや売却活動は労力を伴う・売買の諸費用がかかる・維持管理や修繕などメンテナンスに手間とお金がかかる・マンションの場合、毎月管理費や修繕積立金がかかる・固定資産税などの税金がかかる・万が一住宅に欠陥があった場合、損害賠償などの対応が必要・地震、ゲリラ豪雨など災害被害にあった場合も対処しなければならない・相続トラブルになる可能性がある賃貸は単身向け物件が多いが、持ち家は単身者からファミリー層向けまで物件の選択肢が豊富である。キッチン、浴室などの設備、内装などのグレードも賃貸よりも高いことが多い。自分好みにリフォームでき、物件によっては間取り変更やバリアフリー化までリノベーションもできる。また、退職までに住宅ローンを完済できれば、老後の住居費の負担が軽くなり、老後の資産計画も立てやすくなる。しかし、持ち家は維持管理や修繕などのメンテナンスを自分で行わなければならない。修繕や改修は10年~15年前後で行うのが一般的だ。賃貸は、維持管理や修繕はオーナーが行うので、手間がかからずお金は賃料等に含まれる。また簡単に住み替えができない点は、転勤族や引っ越し好きな方にとってはデメリットだ。さらに高層ビルなどが建設されて日当たりや景観が悪くなった、騒音などのトラブルに巻き込まれたなどの場合はすぐに身動きできず健康にも影響を与えかねない。人生100年時代の視点で考えよう冒頭でも申し上げたとおり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。しかし、持ち家はリスクも大きい。その対処法として、「可変性(造りかえられるか)」と「換金性(売れるか、貸せるか)」があげられる。家族構成の変化やバリアフリー化が必要になった場合に備えて、間取りなど自由にリフォームできる物件であるか。急な転勤や転職などで不要になったときに、「売ったり」「貸したり」現金化しやすいか、という視点も交えて物件を選ぶことがポイントである。また、価値観の共有(使いやすい、個性的だけどセンスがよく人気など)、持ち家の良さを説明できると、イザというときに人生の足を引っ張る負動産ではなく富動産になりやすい。 持ち家のローン返済総額と賃貸の家賃総額は、住むエリアや物件、ローンの諸条件によって変わるため単純に比較するのは難しい。しかし、人生100年時代という視点でみると「賃貸か、持ち家か論争」は、住み続けるか、住み替えるか、に尽きる。住み続けるのであれば、持ち家ならリノベーションするなど、負動産とならないような対策が必要である。賃貸ならオーナーが改修などを定期的に行ってくれるかがポイントになるであろう。住まいは人生の拠点である。長い時間を過ごす大切な場所だからこそ、それぞれの良いところ悪いところをよく理解することが重要だ。その際には、「何年住む予定なのか」具体的な金額をシミュレーションし、よく検討してから決めることをおすすめしたい。賃貸・持ち家にかかわらず、ライフスタイルやライフステージにあう最適な家を選んでいただきたいものだ。
結論から先に申し上げて恐縮だが、どちらも正解でどちらも不正解である。
現在の年齢、収入、家族構成など前提とする条件や計算方法、ライフスタイルによって結論は全く異なってくるからだ。たとえば初期費用や維持費、修繕費など将来想定されるあらゆる費用を含めて試算している場合もあれば、ざっくり住宅ローン返済額と賃料だけを比べている場合もある。
さらに、住宅ローンも、借入金額や金利などの諸条件によって異なり、結果的に同じ価格の物件を購入しても金額は様々となる。
ただし、視点を変えて見ると、賃貸物件はオーナーがおり、安価な賃料でも空室よりは貸した方がいいとか、相続で譲り受けたとか、慈善事業でもない限り、それなりに儲かるから貸しているわけだ。つまり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。
しかし、ライフスタイルが変わらない人はいないし、「人生100年時代」といわれ、より長生きできることになり、今までの「住宅すごろく」から“もう一コマ”、はたまた「ふりだし」に戻り、いま一度、誰もが住まいについて考えなければならない時代になっている。
いうならば長生きできることはメデタイはずだが、より論争を難解にしているともいえる。それによく考えると住宅ローンの返済期間である35年間は、終身雇用だったからできた逸話ともいえるかもしれない。
さらに、新築マンション価格の高騰、金利の上昇、リフォーム費用の高騰など、いま住まいを取り巻く環境は厳しい。散々語り尽くされてきた感もあるが、皆さんにとっての解を導いていただくため、いま一度、賃貸と持ち家について、項目ごとに見ていこう。
(1) 初期費用の負担
マイホームを借りるにしろ、買うにしろ初期費用がかかる。
持ち家を現金で一括購入するケースは少ないので住宅ローンを組むと仮定すると、頭金や住宅ローン費用、登記費用、仲介手数料、不動産取得税などの諸費用として、物件価格の3%~10%程度の初期費用が必要。たとえば4000万円の住宅を購入した場合、120万~400万円程度の初期費用がかかる。
いっぽう賃貸は、敷金、礼金、仲介手数料、物件によって保証会社の保証料がかかる。しかし、月額賃料が基本となり2か月~5か月程度。賃料にもよるが、持ち家と比べるとグッと初期費用は抑えられる。持ち家の方が初期費用の負担額は圧倒的に大きいのだ。
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(2) ローン返済と家賃負担持ち家は、初期費用の負担は大きいが、ローン完済後は毎月の支払いがなくなり住居にかかる費用が賃貸と比べて少なくなる。賃貸は、初期費用の負担は抑えられるものの、賃貸で住み続ける限り毎月賃料を支払い続けなければいけない。(3) ローンリスク住宅を購入する際、一般的にローンを組むが、完済するまで毎月返済しなければいけない。リストラや転職などで収入減になり生活費が足りなくなった場合でも、ローンは払わなければならずローンリスクを負う。しかし、手続きすることで貸出条件緩和という措置が利用できることもある。それでも返済が難しい場合、売却の検討をすることになるが、住宅ローン残高より相場価格が大幅に低い場合、もし売却できても、家はないのにローン返済は続くというリスクがある。そのため、売却を選択することが現実的ではないこともある。さらに滞納が続く場合、住宅ローンを借りた金融機関(保証会社)から抵当権をもとに競売を申し立てられ、住宅ローンの残債を一括回収しようと強制的に売却される。その点、賃貸はローンリスクの想定は不要だ。賃貸物件に住んでいる限り賃料を払い続けなければいけないが、生活が苦しくなれば家賃の安いところへ引っ越しすることも可能である。(4) 税金持ち家は、住宅を取得した時に納める「不動産取得税」以外にも、土地や家屋といった不動産の所有者に課税される固定資産税や都市計画税(市街化区域内)を、毎年負担しなければならない。自宅を所有している限り毎年納付する必要があるため、住宅ローン完済後であっても、空室で現在は使っていなくても負担し続けなければならない。賃貸は所有していないため、当然ながら税金の負担はない。(5) 優遇制度持ち家は、一定の条件を満たせば、住宅ローン控除やすまい給付金、各種税金の軽減などの優遇措置を受けることができる。つまり、本来の費用よりも少ない金額で家を手に入れることができるのだ。しかし、賃貸にはこのような優遇制度の適用はない。住み替えや老後のことまで想定する(6) 保険料火災保険は、持ち家と賃貸どちらも加入が必要だが、賃貸は家財だけに火災保険をかけるのに対して、持ち家は家財と建物にも火災保険をかけるため、その分保険料がかかる。賃貸の方が保険料は安くすむ。Photo by iStock (7) 住宅性能建物の構造、設備や内装、気密性や断熱性、セキュリティ、災害への備え、サービス面など、近年では持ち家と遜色ない賃貸物件もあるが、一般的には持ち家の方が優れていることが多い。住宅性能は、住み心地にも大きく影響する。(8) 維持管理・修繕費などの費用持ち家は、維持管理にかかる費用、大規模修繕などの修繕費を負担しなければならない。マンションの場合、毎月、修繕積立金や一時金の徴収が発生する可能性も。賃貸は、毎月の家賃、共益費や管理費という名目で支払う以外は、維持管理の費用はオーナーや管理会社が負担する。修繕費も個人的に内装を変えたなどでなければ、自然故障は物件を所有するオーナーが負担するため基本的には不要である。(9) リフォーム持ち家であれば、壁紙の張り替え、間取りの変更、バリアフリー化など、自由にリフォームを行うことできる。ただし、マンションの場合は管理組合に申請し承認が必要。賃貸は基本的にリフォームできず、壁に釘やネジで穴を開ける際にも気を遣う。(10) 住み替えや引っ越し気軽に住み替えや引っ越しできる賃貸に対して、持ち家は簡単にはできない。持ち家を売却したり、貸したりしなければ資金繰りが大変になる。売却には時間を要し、買い手が見つからない(つまり売れない)、売れても購入金額と大幅な差異が出たり、売却金額によっては住宅ローンの残債より低く、自己資金がなければ引き渡しできないといったリスクも考えられる。賃貸であれば、家族が増えて家が狭くなった、子どもが独立して広すぎる、収入減・急な転勤などのライフスタイルに応じて、住み替え・引っ越しが持ち家より容易に実現できる。(11) 住まいの確保・安心感持ち家であれば、社会的信用のほか、将来にわたって住む場所があるという安心感を得ることができる。賃貸はオーナーの意向や保証会社の審査によって賃貸契約を継続できない場合がある。また、高齢になるほど借りられる物件が限定され借りにくくなる傾向がある。(12) 資産形成持ち家はローンを完済すると自分の資産として残り、いざというときには売却したり貸したりして資金源になる。なかには資産価値が大幅に下がることもあるが、買ったときより高く売れて得することも。また将来、子どもに財産として残すこともできる。老後は、自宅を売却した資金を老人ホームの費用に充てたり、不動産を担保にお金を借り入れ、亡くなった後に売却金で借入金を返済するリバースモーゲージを活用したり、リースバックという運営会社に売却後もそのまま住み続けられるサービスを活用するなど選択肢が広がる。いっぽう賃貸は「負動産」リスクはないものの、どれだけ家賃を支払い続けても自分の資産にはならない。賃貸のメリットとデメリットとは最後に、賃貸と持ち家についてメリットとデメリットをまとめよう。「賃貸」のメリット・住み替えがいつでも気軽にできる・初期費用が持ち家よりもかからない・職場によっては家賃補助を活用できる・収入に合わせて住居費(家賃)を調整できる・維持管理や修繕などメンテナンスが不要・相続トラブルに巻き込まれないPhoto by iStock 「賃貸」のデメリット・物件の選択肢が限られる・家賃を支払い続けなければいけない・いくら家賃を払っても資産にならない・賃貸借契約の更新時に更新料がかかる・設備や内装などグレードが持ち家より低い場合が多い・リフォームなどを自由にできない・高齢者は賃貸契約や更新を断られる可能性がある賃貸の最大のメリットは、何と言っても気軽に住み替えや引っ越しができること。転勤や転職、騒音などのトラブルに巻き込まれたときにも対応しやすい。また、収入に合わせて住居費(家賃)を調整することもできる。持ち家の場合は、年収が下がっても住宅ローンの総額が変わるわけではない。毎月の返済額など返済方法を変更する場合も手続きが煩雑である。賃貸は多額のローンを抱えるという心理的不安がない一方で、ずっと家賃を支払い続ける必要がある。またいくら家賃を払っても自分の物にならないため、人生100年時代という長い視点で見た場合、一生住める家はあるのかという不安が残る。さらに高齢になると、生活費のほかに医療費・介護費などの出費がかさむ。にもかかわらず、定年後の主な収入は年金となるため、年金だけで足りない場合は、バイトなどの再就職や貯蓄を切り崩して生活していくことに。平均寿命が延びることで住居費の負担が生活苦につながる可能性があるのだ。また、高齢になるほど賃貸物件の選択肢が減り、特に独居の高齢者は極めて借りにくいのが現状である。高齢でなくても貸主から建物の取壊しなどの正当な事由で更新を拒まれた場合、次の住まいはすぐに見つかるか、保証会社の審査や身元保証人の確保など、その都度手続きが必要であり、安定や安心は得られない傾向がある。一方、持ち家のメリットとデメリットは?「持ち家」のメリット・賃貸よりもファミリー層向けの物件が豊富・設備や内装などのグレードが賃貸より高い・リフォームやリノベーションが自分好みにできる・住宅ローン控除などの優遇制度を利用できる・万が一のとき団体信用生命保険で住宅ローンがゼロになる・ローン完済すれば老後の住居費用の負担が減る・資産を持つことができ、親族に残すこともできるPhoto by iStock 「持ち家」のデメリット・簡単に住み替えができない・買い替えや売却活動は労力を伴う・売買の諸費用がかかる・維持管理や修繕などメンテナンスに手間とお金がかかる・マンションの場合、毎月管理費や修繕積立金がかかる・固定資産税などの税金がかかる・万が一住宅に欠陥があった場合、損害賠償などの対応が必要・地震、ゲリラ豪雨など災害被害にあった場合も対処しなければならない・相続トラブルになる可能性がある賃貸は単身向け物件が多いが、持ち家は単身者からファミリー層向けまで物件の選択肢が豊富である。キッチン、浴室などの設備、内装などのグレードも賃貸よりも高いことが多い。自分好みにリフォームでき、物件によっては間取り変更やバリアフリー化までリノベーションもできる。また、退職までに住宅ローンを完済できれば、老後の住居費の負担が軽くなり、老後の資産計画も立てやすくなる。しかし、持ち家は維持管理や修繕などのメンテナンスを自分で行わなければならない。修繕や改修は10年~15年前後で行うのが一般的だ。賃貸は、維持管理や修繕はオーナーが行うので、手間がかからずお金は賃料等に含まれる。また簡単に住み替えができない点は、転勤族や引っ越し好きな方にとってはデメリットだ。さらに高層ビルなどが建設されて日当たりや景観が悪くなった、騒音などのトラブルに巻き込まれたなどの場合はすぐに身動きできず健康にも影響を与えかねない。人生100年時代の視点で考えよう冒頭でも申し上げたとおり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。しかし、持ち家はリスクも大きい。その対処法として、「可変性(造りかえられるか)」と「換金性(売れるか、貸せるか)」があげられる。家族構成の変化やバリアフリー化が必要になった場合に備えて、間取りなど自由にリフォームできる物件であるか。急な転勤や転職などで不要になったときに、「売ったり」「貸したり」現金化しやすいか、という視点も交えて物件を選ぶことがポイントである。また、価値観の共有(使いやすい、個性的だけどセンスがよく人気など)、持ち家の良さを説明できると、イザというときに人生の足を引っ張る負動産ではなく富動産になりやすい。 持ち家のローン返済総額と賃貸の家賃総額は、住むエリアや物件、ローンの諸条件によって変わるため単純に比較するのは難しい。しかし、人生100年時代という視点でみると「賃貸か、持ち家か論争」は、住み続けるか、住み替えるか、に尽きる。住み続けるのであれば、持ち家ならリノベーションするなど、負動産とならないような対策が必要である。賃貸ならオーナーが改修などを定期的に行ってくれるかがポイントになるであろう。住まいは人生の拠点である。長い時間を過ごす大切な場所だからこそ、それぞれの良いところ悪いところをよく理解することが重要だ。その際には、「何年住む予定なのか」具体的な金額をシミュレーションし、よく検討してから決めることをおすすめしたい。賃貸・持ち家にかかわらず、ライフスタイルやライフステージにあう最適な家を選んでいただきたいものだ。
(2) ローン返済と家賃負担
持ち家は、初期費用の負担は大きいが、ローン完済後は毎月の支払いがなくなり住居にかかる費用が賃貸と比べて少なくなる。賃貸は、初期費用の負担は抑えられるものの、賃貸で住み続ける限り毎月賃料を支払い続けなければいけない。
(3) ローンリスク
住宅を購入する際、一般的にローンを組むが、完済するまで毎月返済しなければいけない。リストラや転職などで収入減になり生活費が足りなくなった場合でも、ローンは払わなければならずローンリスクを負う。しかし、手続きすることで貸出条件緩和という措置が利用できることもある。
それでも返済が難しい場合、売却の検討をすることになるが、住宅ローン残高より相場価格が大幅に低い場合、もし売却できても、家はないのにローン返済は続くというリスクがある。そのため、売却を選択することが現実的ではないこともある。
さらに滞納が続く場合、住宅ローンを借りた金融機関(保証会社)から抵当権をもとに競売を申し立てられ、住宅ローンの残債を一括回収しようと強制的に売却される。
その点、賃貸はローンリスクの想定は不要だ。賃貸物件に住んでいる限り賃料を払い続けなければいけないが、生活が苦しくなれば家賃の安いところへ引っ越しすることも可能である。
(4) 税金
持ち家は、住宅を取得した時に納める「不動産取得税」以外にも、土地や家屋といった不動産の所有者に課税される固定資産税や都市計画税(市街化区域内)を、毎年負担しなければならない。
自宅を所有している限り毎年納付する必要があるため、住宅ローン完済後であっても、空室で現在は使っていなくても負担し続けなければならない。賃貸は所有していないため、当然ながら税金の負担はない。
(5) 優遇制度
持ち家は、一定の条件を満たせば、住宅ローン控除やすまい給付金、各種税金の軽減などの優遇措置を受けることができる。つまり、本来の費用よりも少ない金額で家を手に入れることができるのだ。しかし、賃貸にはこのような優遇制度の適用はない。
(6) 保険料
火災保険は、持ち家と賃貸どちらも加入が必要だが、賃貸は家財だけに火災保険をかけるのに対して、持ち家は家財と建物にも火災保険をかけるため、その分保険料がかかる。賃貸の方が保険料は安くすむ。
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(7) 住宅性能建物の構造、設備や内装、気密性や断熱性、セキュリティ、災害への備え、サービス面など、近年では持ち家と遜色ない賃貸物件もあるが、一般的には持ち家の方が優れていることが多い。住宅性能は、住み心地にも大きく影響する。(8) 維持管理・修繕費などの費用持ち家は、維持管理にかかる費用、大規模修繕などの修繕費を負担しなければならない。マンションの場合、毎月、修繕積立金や一時金の徴収が発生する可能性も。賃貸は、毎月の家賃、共益費や管理費という名目で支払う以外は、維持管理の費用はオーナーや管理会社が負担する。修繕費も個人的に内装を変えたなどでなければ、自然故障は物件を所有するオーナーが負担するため基本的には不要である。(9) リフォーム持ち家であれば、壁紙の張り替え、間取りの変更、バリアフリー化など、自由にリフォームを行うことできる。ただし、マンションの場合は管理組合に申請し承認が必要。賃貸は基本的にリフォームできず、壁に釘やネジで穴を開ける際にも気を遣う。(10) 住み替えや引っ越し気軽に住み替えや引っ越しできる賃貸に対して、持ち家は簡単にはできない。持ち家を売却したり、貸したりしなければ資金繰りが大変になる。売却には時間を要し、買い手が見つからない(つまり売れない)、売れても購入金額と大幅な差異が出たり、売却金額によっては住宅ローンの残債より低く、自己資金がなければ引き渡しできないといったリスクも考えられる。賃貸であれば、家族が増えて家が狭くなった、子どもが独立して広すぎる、収入減・急な転勤などのライフスタイルに応じて、住み替え・引っ越しが持ち家より容易に実現できる。(11) 住まいの確保・安心感持ち家であれば、社会的信用のほか、将来にわたって住む場所があるという安心感を得ることができる。賃貸はオーナーの意向や保証会社の審査によって賃貸契約を継続できない場合がある。また、高齢になるほど借りられる物件が限定され借りにくくなる傾向がある。(12) 資産形成持ち家はローンを完済すると自分の資産として残り、いざというときには売却したり貸したりして資金源になる。なかには資産価値が大幅に下がることもあるが、買ったときより高く売れて得することも。また将来、子どもに財産として残すこともできる。老後は、自宅を売却した資金を老人ホームの費用に充てたり、不動産を担保にお金を借り入れ、亡くなった後に売却金で借入金を返済するリバースモーゲージを活用したり、リースバックという運営会社に売却後もそのまま住み続けられるサービスを活用するなど選択肢が広がる。いっぽう賃貸は「負動産」リスクはないものの、どれだけ家賃を支払い続けても自分の資産にはならない。賃貸のメリットとデメリットとは最後に、賃貸と持ち家についてメリットとデメリットをまとめよう。「賃貸」のメリット・住み替えがいつでも気軽にできる・初期費用が持ち家よりもかからない・職場によっては家賃補助を活用できる・収入に合わせて住居費(家賃)を調整できる・維持管理や修繕などメンテナンスが不要・相続トラブルに巻き込まれないPhoto by iStock 「賃貸」のデメリット・物件の選択肢が限られる・家賃を支払い続けなければいけない・いくら家賃を払っても資産にならない・賃貸借契約の更新時に更新料がかかる・設備や内装などグレードが持ち家より低い場合が多い・リフォームなどを自由にできない・高齢者は賃貸契約や更新を断られる可能性がある賃貸の最大のメリットは、何と言っても気軽に住み替えや引っ越しができること。転勤や転職、騒音などのトラブルに巻き込まれたときにも対応しやすい。また、収入に合わせて住居費(家賃)を調整することもできる。持ち家の場合は、年収が下がっても住宅ローンの総額が変わるわけではない。毎月の返済額など返済方法を変更する場合も手続きが煩雑である。賃貸は多額のローンを抱えるという心理的不安がない一方で、ずっと家賃を支払い続ける必要がある。またいくら家賃を払っても自分の物にならないため、人生100年時代という長い視点で見た場合、一生住める家はあるのかという不安が残る。さらに高齢になると、生活費のほかに医療費・介護費などの出費がかさむ。にもかかわらず、定年後の主な収入は年金となるため、年金だけで足りない場合は、バイトなどの再就職や貯蓄を切り崩して生活していくことに。平均寿命が延びることで住居費の負担が生活苦につながる可能性があるのだ。また、高齢になるほど賃貸物件の選択肢が減り、特に独居の高齢者は極めて借りにくいのが現状である。高齢でなくても貸主から建物の取壊しなどの正当な事由で更新を拒まれた場合、次の住まいはすぐに見つかるか、保証会社の審査や身元保証人の確保など、その都度手続きが必要であり、安定や安心は得られない傾向がある。一方、持ち家のメリットとデメリットは?「持ち家」のメリット・賃貸よりもファミリー層向けの物件が豊富・設備や内装などのグレードが賃貸より高い・リフォームやリノベーションが自分好みにできる・住宅ローン控除などの優遇制度を利用できる・万が一のとき団体信用生命保険で住宅ローンがゼロになる・ローン完済すれば老後の住居費用の負担が減る・資産を持つことができ、親族に残すこともできるPhoto by iStock 「持ち家」のデメリット・簡単に住み替えができない・買い替えや売却活動は労力を伴う・売買の諸費用がかかる・維持管理や修繕などメンテナンスに手間とお金がかかる・マンションの場合、毎月管理費や修繕積立金がかかる・固定資産税などの税金がかかる・万が一住宅に欠陥があった場合、損害賠償などの対応が必要・地震、ゲリラ豪雨など災害被害にあった場合も対処しなければならない・相続トラブルになる可能性がある賃貸は単身向け物件が多いが、持ち家は単身者からファミリー層向けまで物件の選択肢が豊富である。キッチン、浴室などの設備、内装などのグレードも賃貸よりも高いことが多い。自分好みにリフォームでき、物件によっては間取り変更やバリアフリー化までリノベーションもできる。また、退職までに住宅ローンを完済できれば、老後の住居費の負担が軽くなり、老後の資産計画も立てやすくなる。しかし、持ち家は維持管理や修繕などのメンテナンスを自分で行わなければならない。修繕や改修は10年~15年前後で行うのが一般的だ。賃貸は、維持管理や修繕はオーナーが行うので、手間がかからずお金は賃料等に含まれる。また簡単に住み替えができない点は、転勤族や引っ越し好きな方にとってはデメリットだ。さらに高層ビルなどが建設されて日当たりや景観が悪くなった、騒音などのトラブルに巻き込まれたなどの場合はすぐに身動きできず健康にも影響を与えかねない。人生100年時代の視点で考えよう冒頭でも申し上げたとおり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。しかし、持ち家はリスクも大きい。その対処法として、「可変性(造りかえられるか)」と「換金性(売れるか、貸せるか)」があげられる。家族構成の変化やバリアフリー化が必要になった場合に備えて、間取りなど自由にリフォームできる物件であるか。急な転勤や転職などで不要になったときに、「売ったり」「貸したり」現金化しやすいか、という視点も交えて物件を選ぶことがポイントである。また、価値観の共有(使いやすい、個性的だけどセンスがよく人気など)、持ち家の良さを説明できると、イザというときに人生の足を引っ張る負動産ではなく富動産になりやすい。 持ち家のローン返済総額と賃貸の家賃総額は、住むエリアや物件、ローンの諸条件によって変わるため単純に比較するのは難しい。しかし、人生100年時代という視点でみると「賃貸か、持ち家か論争」は、住み続けるか、住み替えるか、に尽きる。住み続けるのであれば、持ち家ならリノベーションするなど、負動産とならないような対策が必要である。賃貸ならオーナーが改修などを定期的に行ってくれるかがポイントになるであろう。住まいは人生の拠点である。長い時間を過ごす大切な場所だからこそ、それぞれの良いところ悪いところをよく理解することが重要だ。その際には、「何年住む予定なのか」具体的な金額をシミュレーションし、よく検討してから決めることをおすすめしたい。賃貸・持ち家にかかわらず、ライフスタイルやライフステージにあう最適な家を選んでいただきたいものだ。
(7) 住宅性能
建物の構造、設備や内装、気密性や断熱性、セキュリティ、災害への備え、サービス面など、近年では持ち家と遜色ない賃貸物件もあるが、一般的には持ち家の方が優れていることが多い。住宅性能は、住み心地にも大きく影響する。
(8) 維持管理・修繕費などの費用
持ち家は、維持管理にかかる費用、大規模修繕などの修繕費を負担しなければならない。マンションの場合、毎月、修繕積立金や一時金の徴収が発生する可能性も。
賃貸は、毎月の家賃、共益費や管理費という名目で支払う以外は、維持管理の費用はオーナーや管理会社が負担する。修繕費も個人的に内装を変えたなどでなければ、自然故障は物件を所有するオーナーが負担するため基本的には不要である。
(9) リフォーム
持ち家であれば、壁紙の張り替え、間取りの変更、バリアフリー化など、自由にリフォームを行うことできる。ただし、マンションの場合は管理組合に申請し承認が必要。賃貸は基本的にリフォームできず、壁に釘やネジで穴を開ける際にも気を遣う。
(10) 住み替えや引っ越し
気軽に住み替えや引っ越しできる賃貸に対して、持ち家は簡単にはできない。
持ち家を売却したり、貸したりしなければ資金繰りが大変になる。売却には時間を要し、買い手が見つからない(つまり売れない)、売れても購入金額と大幅な差異が出たり、売却金額によっては住宅ローンの残債より低く、自己資金がなければ引き渡しできないといったリスクも考えられる。
賃貸であれば、家族が増えて家が狭くなった、子どもが独立して広すぎる、収入減・急な転勤などのライフスタイルに応じて、住み替え・引っ越しが持ち家より容易に実現できる。
(11) 住まいの確保・安心感
持ち家であれば、社会的信用のほか、将来にわたって住む場所があるという安心感を得ることができる。賃貸はオーナーの意向や保証会社の審査によって賃貸契約を継続できない場合がある。また、高齢になるほど借りられる物件が限定され借りにくくなる傾向がある。
(12) 資産形成
持ち家はローンを完済すると自分の資産として残り、いざというときには売却したり貸したりして資金源になる。なかには資産価値が大幅に下がることもあるが、買ったときより高く売れて得することも。また将来、子どもに財産として残すこともできる。
老後は、自宅を売却した資金を老人ホームの費用に充てたり、不動産を担保にお金を借り入れ、亡くなった後に売却金で借入金を返済するリバースモーゲージを活用したり、リースバックという運営会社に売却後もそのまま住み続けられるサービスを活用するなど選択肢が広がる。
いっぽう賃貸は「負動産」リスクはないものの、どれだけ家賃を支払い続けても自分の資産にはならない。
最後に、賃貸と持ち家についてメリットとデメリットをまとめよう。
「賃貸」のメリット
・住み替えがいつでも気軽にできる
・初期費用が持ち家よりもかからない
・職場によっては家賃補助を活用できる
・収入に合わせて住居費(家賃)を調整できる
・維持管理や修繕などメンテナンスが不要
・相続トラブルに巻き込まれない
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「賃貸」のデメリット・物件の選択肢が限られる・家賃を支払い続けなければいけない・いくら家賃を払っても資産にならない・賃貸借契約の更新時に更新料がかかる・設備や内装などグレードが持ち家より低い場合が多い・リフォームなどを自由にできない・高齢者は賃貸契約や更新を断られる可能性がある賃貸の最大のメリットは、何と言っても気軽に住み替えや引っ越しができること。転勤や転職、騒音などのトラブルに巻き込まれたときにも対応しやすい。また、収入に合わせて住居費(家賃)を調整することもできる。持ち家の場合は、年収が下がっても住宅ローンの総額が変わるわけではない。毎月の返済額など返済方法を変更する場合も手続きが煩雑である。賃貸は多額のローンを抱えるという心理的不安がない一方で、ずっと家賃を支払い続ける必要がある。またいくら家賃を払っても自分の物にならないため、人生100年時代という長い視点で見た場合、一生住める家はあるのかという不安が残る。さらに高齢になると、生活費のほかに医療費・介護費などの出費がかさむ。にもかかわらず、定年後の主な収入は年金となるため、年金だけで足りない場合は、バイトなどの再就職や貯蓄を切り崩して生活していくことに。平均寿命が延びることで住居費の負担が生活苦につながる可能性があるのだ。また、高齢になるほど賃貸物件の選択肢が減り、特に独居の高齢者は極めて借りにくいのが現状である。高齢でなくても貸主から建物の取壊しなどの正当な事由で更新を拒まれた場合、次の住まいはすぐに見つかるか、保証会社の審査や身元保証人の確保など、その都度手続きが必要であり、安定や安心は得られない傾向がある。一方、持ち家のメリットとデメリットは?「持ち家」のメリット・賃貸よりもファミリー層向けの物件が豊富・設備や内装などのグレードが賃貸より高い・リフォームやリノベーションが自分好みにできる・住宅ローン控除などの優遇制度を利用できる・万が一のとき団体信用生命保険で住宅ローンがゼロになる・ローン完済すれば老後の住居費用の負担が減る・資産を持つことができ、親族に残すこともできるPhoto by iStock 「持ち家」のデメリット・簡単に住み替えができない・買い替えや売却活動は労力を伴う・売買の諸費用がかかる・維持管理や修繕などメンテナンスに手間とお金がかかる・マンションの場合、毎月管理費や修繕積立金がかかる・固定資産税などの税金がかかる・万が一住宅に欠陥があった場合、損害賠償などの対応が必要・地震、ゲリラ豪雨など災害被害にあった場合も対処しなければならない・相続トラブルになる可能性がある賃貸は単身向け物件が多いが、持ち家は単身者からファミリー層向けまで物件の選択肢が豊富である。キッチン、浴室などの設備、内装などのグレードも賃貸よりも高いことが多い。自分好みにリフォームでき、物件によっては間取り変更やバリアフリー化までリノベーションもできる。また、退職までに住宅ローンを完済できれば、老後の住居費の負担が軽くなり、老後の資産計画も立てやすくなる。しかし、持ち家は維持管理や修繕などのメンテナンスを自分で行わなければならない。修繕や改修は10年~15年前後で行うのが一般的だ。賃貸は、維持管理や修繕はオーナーが行うので、手間がかからずお金は賃料等に含まれる。また簡単に住み替えができない点は、転勤族や引っ越し好きな方にとってはデメリットだ。さらに高層ビルなどが建設されて日当たりや景観が悪くなった、騒音などのトラブルに巻き込まれたなどの場合はすぐに身動きできず健康にも影響を与えかねない。人生100年時代の視点で考えよう冒頭でも申し上げたとおり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。しかし、持ち家はリスクも大きい。その対処法として、「可変性(造りかえられるか)」と「換金性(売れるか、貸せるか)」があげられる。家族構成の変化やバリアフリー化が必要になった場合に備えて、間取りなど自由にリフォームできる物件であるか。急な転勤や転職などで不要になったときに、「売ったり」「貸したり」現金化しやすいか、という視点も交えて物件を選ぶことがポイントである。また、価値観の共有(使いやすい、個性的だけどセンスがよく人気など)、持ち家の良さを説明できると、イザというときに人生の足を引っ張る負動産ではなく富動産になりやすい。 持ち家のローン返済総額と賃貸の家賃総額は、住むエリアや物件、ローンの諸条件によって変わるため単純に比較するのは難しい。しかし、人生100年時代という視点でみると「賃貸か、持ち家か論争」は、住み続けるか、住み替えるか、に尽きる。住み続けるのであれば、持ち家ならリノベーションするなど、負動産とならないような対策が必要である。賃貸ならオーナーが改修などを定期的に行ってくれるかがポイントになるであろう。住まいは人生の拠点である。長い時間を過ごす大切な場所だからこそ、それぞれの良いところ悪いところをよく理解することが重要だ。その際には、「何年住む予定なのか」具体的な金額をシミュレーションし、よく検討してから決めることをおすすめしたい。賃貸・持ち家にかかわらず、ライフスタイルやライフステージにあう最適な家を選んでいただきたいものだ。
「賃貸」のデメリット
・物件の選択肢が限られる
・家賃を支払い続けなければいけない
・いくら家賃を払っても資産にならない
・賃貸借契約の更新時に更新料がかかる
・設備や内装などグレードが持ち家より低い場合が多い
・リフォームなどを自由にできない
・高齢者は賃貸契約や更新を断られる可能性がある
賃貸の最大のメリットは、何と言っても気軽に住み替えや引っ越しができること。転勤や転職、騒音などのトラブルに巻き込まれたときにも対応しやすい。また、収入に合わせて住居費(家賃)を調整することもできる。
持ち家の場合は、年収が下がっても住宅ローンの総額が変わるわけではない。毎月の返済額など返済方法を変更する場合も手続きが煩雑である。
賃貸は多額のローンを抱えるという心理的不安がない一方で、ずっと家賃を支払い続ける必要がある。またいくら家賃を払っても自分の物にならないため、人生100年時代という長い視点で見た場合、一生住める家はあるのかという不安が残る。
さらに高齢になると、生活費のほかに医療費・介護費などの出費がかさむ。にもかかわらず、定年後の主な収入は年金となるため、年金だけで足りない場合は、バイトなどの再就職や貯蓄を切り崩して生活していくことに。平均寿命が延びることで住居費の負担が生活苦につながる可能性があるのだ。
また、高齢になるほど賃貸物件の選択肢が減り、特に独居の高齢者は極めて借りにくいのが現状である。
高齢でなくても貸主から建物の取壊しなどの正当な事由で更新を拒まれた場合、次の住まいはすぐに見つかるか、保証会社の審査や身元保証人の確保など、その都度手続きが必要であり、安定や安心は得られない傾向がある。
「持ち家」のメリット
・賃貸よりもファミリー層向けの物件が豊富
・設備や内装などのグレードが賃貸より高い
・リフォームやリノベーションが自分好みにできる
・住宅ローン控除などの優遇制度を利用できる
・万が一のとき団体信用生命保険で住宅ローンがゼロになる
・ローン完済すれば老後の住居費用の負担が減る
・資産を持つことができ、親族に残すこともできる
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「持ち家」のデメリット・簡単に住み替えができない・買い替えや売却活動は労力を伴う・売買の諸費用がかかる・維持管理や修繕などメンテナンスに手間とお金がかかる・マンションの場合、毎月管理費や修繕積立金がかかる・固定資産税などの税金がかかる・万が一住宅に欠陥があった場合、損害賠償などの対応が必要・地震、ゲリラ豪雨など災害被害にあった場合も対処しなければならない・相続トラブルになる可能性がある賃貸は単身向け物件が多いが、持ち家は単身者からファミリー層向けまで物件の選択肢が豊富である。キッチン、浴室などの設備、内装などのグレードも賃貸よりも高いことが多い。自分好みにリフォームでき、物件によっては間取り変更やバリアフリー化までリノベーションもできる。また、退職までに住宅ローンを完済できれば、老後の住居費の負担が軽くなり、老後の資産計画も立てやすくなる。しかし、持ち家は維持管理や修繕などのメンテナンスを自分で行わなければならない。修繕や改修は10年~15年前後で行うのが一般的だ。賃貸は、維持管理や修繕はオーナーが行うので、手間がかからずお金は賃料等に含まれる。また簡単に住み替えができない点は、転勤族や引っ越し好きな方にとってはデメリットだ。さらに高層ビルなどが建設されて日当たりや景観が悪くなった、騒音などのトラブルに巻き込まれたなどの場合はすぐに身動きできず健康にも影響を与えかねない。人生100年時代の視点で考えよう冒頭でも申し上げたとおり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。しかし、持ち家はリスクも大きい。その対処法として、「可変性(造りかえられるか)」と「換金性(売れるか、貸せるか)」があげられる。家族構成の変化やバリアフリー化が必要になった場合に備えて、間取りなど自由にリフォームできる物件であるか。急な転勤や転職などで不要になったときに、「売ったり」「貸したり」現金化しやすいか、という視点も交えて物件を選ぶことがポイントである。また、価値観の共有(使いやすい、個性的だけどセンスがよく人気など)、持ち家の良さを説明できると、イザというときに人生の足を引っ張る負動産ではなく富動産になりやすい。 持ち家のローン返済総額と賃貸の家賃総額は、住むエリアや物件、ローンの諸条件によって変わるため単純に比較するのは難しい。しかし、人生100年時代という視点でみると「賃貸か、持ち家か論争」は、住み続けるか、住み替えるか、に尽きる。住み続けるのであれば、持ち家ならリノベーションするなど、負動産とならないような対策が必要である。賃貸ならオーナーが改修などを定期的に行ってくれるかがポイントになるであろう。住まいは人生の拠点である。長い時間を過ごす大切な場所だからこそ、それぞれの良いところ悪いところをよく理解することが重要だ。その際には、「何年住む予定なのか」具体的な金額をシミュレーションし、よく検討してから決めることをおすすめしたい。賃貸・持ち家にかかわらず、ライフスタイルやライフステージにあう最適な家を選んでいただきたいものだ。
「持ち家」のデメリット
・簡単に住み替えができない
・買い替えや売却活動は労力を伴う
・売買の諸費用がかかる
・維持管理や修繕などメンテナンスに手間とお金がかかる
・マンションの場合、毎月管理費や修繕積立金がかかる
・固定資産税などの税金がかかる
・万が一住宅に欠陥があった場合、損害賠償などの対応が必要
・地震、ゲリラ豪雨など災害被害にあった場合も対処しなければならない
・相続トラブルになる可能性がある
賃貸は単身向け物件が多いが、持ち家は単身者からファミリー層向けまで物件の選択肢が豊富である。キッチン、浴室などの設備、内装などのグレードも賃貸よりも高いことが多い。自分好みにリフォームでき、物件によっては間取り変更やバリアフリー化までリノベーションもできる。
また、退職までに住宅ローンを完済できれば、老後の住居費の負担が軽くなり、老後の資産計画も立てやすくなる。
しかし、持ち家は維持管理や修繕などのメンテナンスを自分で行わなければならない。修繕や改修は10年~15年前後で行うのが一般的だ。賃貸は、維持管理や修繕はオーナーが行うので、手間がかからずお金は賃料等に含まれる。
また簡単に住み替えができない点は、転勤族や引っ越し好きな方にとってはデメリットだ。さらに高層ビルなどが建設されて日当たりや景観が悪くなった、騒音などのトラブルに巻き込まれたなどの場合はすぐに身動きできず健康にも影響を与えかねない。
冒頭でも申し上げたとおり、同じ場所に現況でずっと住むなら(住めるなら)一般的には賃貸より持ち家の方がお得である。しかし、持ち家はリスクも大きい。その対処法として、「可変性(造りかえられるか)」と「換金性(売れるか、貸せるか)」があげられる。
家族構成の変化やバリアフリー化が必要になった場合に備えて、間取りなど自由にリフォームできる物件であるか。急な転勤や転職などで不要になったときに、「売ったり」「貸したり」現金化しやすいか、という視点も交えて物件を選ぶことがポイントである。
また、価値観の共有(使いやすい、個性的だけどセンスがよく人気など)、持ち家の良さを説明できると、イザというときに人生の足を引っ張る負動産ではなく富動産になりやすい。
持ち家のローン返済総額と賃貸の家賃総額は、住むエリアや物件、ローンの諸条件によって変わるため単純に比較するのは難しい。しかし、人生100年時代という視点でみると「賃貸か、持ち家か論争」は、住み続けるか、住み替えるか、に尽きる。住み続けるのであれば、持ち家ならリノベーションするなど、負動産とならないような対策が必要である。賃貸ならオーナーが改修などを定期的に行ってくれるかがポイントになるであろう。住まいは人生の拠点である。長い時間を過ごす大切な場所だからこそ、それぞれの良いところ悪いところをよく理解することが重要だ。その際には、「何年住む予定なのか」具体的な金額をシミュレーションし、よく検討してから決めることをおすすめしたい。賃貸・持ち家にかかわらず、ライフスタイルやライフステージにあう最適な家を選んでいただきたいものだ。
持ち家のローン返済総額と賃貸の家賃総額は、住むエリアや物件、ローンの諸条件によって変わるため単純に比較するのは難しい。しかし、人生100年時代という視点でみると「賃貸か、持ち家か論争」は、住み続けるか、住み替えるか、に尽きる。
住み続けるのであれば、持ち家ならリノベーションするなど、負動産とならないような対策が必要である。賃貸ならオーナーが改修などを定期的に行ってくれるかがポイントになるであろう。
住まいは人生の拠点である。長い時間を過ごす大切な場所だからこそ、それぞれの良いところ悪いところをよく理解することが重要だ。その際には、「何年住む予定なのか」具体的な金額をシミュレーションし、よく検討してから決めることをおすすめしたい。
賃貸・持ち家にかかわらず、ライフスタイルやライフステージにあう最適な家を選んでいただきたいものだ。